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2024年9月18日水曜日

よもやま話 「薬師丸ひろ子の歌う《戦士の休息》」

 



「年頃になっても、あんまり浮ついたり、チャラチャラした恰好をすんなよ!」by 高倉健


当時13歳でデビューしたばかりの薬師丸ひろ子が主演の高倉健が言われた言葉である。

この言葉は、少女だった薬師丸ひろ子の心の奥底にグサリと刺さり、かなり印象に残っていたようだ。(と、本人が語ってる)


高倉健といえば、《超》がつくほどのクソ真面目な性格で有名である。


映画でも撮影は基本、一発の1テイクだけ。(他の共演者たちはNGでも出せば冷や汗ものだったろう)

休憩時間でも座ることなく、ずっと立っていたりする。(大御所がこれなら、若手の俳優たちはかなり気を使っただろうな)


「自分、不器用ですから … 」と自嘲気味に語る高倉健。


かといって、人に対する気遣いは半端なくて、広い芸能界でも高倉健の悪口を言う人を今まで見たこともなかった。


…… でも、(こんな人の懐に入って仲良くなるなんてのは、かなり難儀だろうなぁ~)なんて、私なんか思ってしまう。


そんな敷居の高そうなハードルでも軽々超えてしまうのが薬師丸ひろ子なのだ。


それに、この言葉、一見ドきつそうな言い回しにも思えるが、明らかに高倉健にとって薬師丸ひろ子が特別な存在だったのが分かる言葉である。


見方を変えれば、身内か、まるで実の娘の行く末を心配しているようにも聴こえてくるのだ。


こういう気難しい人でも、氷解させて虜にさせてしまうのが、不思議な薬師丸ひろ子の魅力なのかもね。(まれにこういう人もいるよなぁ〜)


映画『野性の証明』では擬似親子を演じている二人。(薬師丸ひろ子が殺されてしまうので、映画の方は、なんとも後味の悪いような出来だけど … )


主題歌には町田義人さんの歌う『戦士の休息』が使われている。(これがけっこうな名曲!)




やがて2014年に高倉健が亡くなると、2016年に薬師丸ひろ子は『cinema songs』なるカバー・アルバムを発表した。

その中の一つに、あの名曲『戦士の休息』が収められている。


そうして、2018年のコンサートからは、曲目の中に毎年、この『戦士の休息』が組み込まれるようになった。


フル・オーケストラのアレンジにのせた薬師丸ひろ子の歌声は、オリジナルを上回るような出来で、初めて観た人などは、その表現力に圧巻させられると思う。


荘厳な雰囲気を漂わせていて、観客たちを異質な別世界へと誘(いざな)ってくれる。


前述に書いたことを踏まえて、改めて聴くと、まるで、敬愛する高倉健への《鎮魂歌(レクイエム)》のようにも聴こえてくるのだ。


久しぶりに歌を聴いて感動してしまった!

これこそが《本物の歌手》の歌である。


余計なお世話かもしれないが、ここに記しておく。(オススメ)





2021年11月28日日曜日

映画 「里見八犬伝」

 1983年  日本。





私は昔から薬師丸ひろ子が好きである♥️



ハッキリ言って美人でもない丸顔や低い鼻を持つ彼女。

背も低いし、見た目は平均のアイドルよりも、だいぶ下回る。



つまり、どこにでもいるような女の子なのだ。



だが、ひとたび声を発せれば、独特なクリスタル・ヴォイスが超音波☄️となって、たちまち大勢を虜にする。


だから、薬師丸ひろ子の歌う曲は、どれもコレも名曲ばかりのラインナップがズラ〜リと並ぶ。(ひろ子の声質が、名作詞家や作曲家を引き寄せる効果もあるのだ)



こんな薬師丸ひろ子の歌は、好きな自分なのだけど……こと、芝居の方になると好き嫌いは両極端、真っ二つに分かれてしまう。


これは自分の趣向の問題が大きいのだけど、監督や共演者によっては敬遠するモノも、かなり多いのだ。



あの、「快感!」のフレーズでお馴染みの『セーラー服と機関銃』だって、そう。




歌の方、『セーラー服と機関銃』もヒットしていたし、「1度くらい本編の方も観ておこうか……」くらいの軽い気持ちで観始めたのだけど………


コレが、おっそろしく、つまらなかった。(自分には)


原作はユーモア・ミステリーの巨匠、赤川次郎なのに、「どこに赤川次郎のテンポの良い《ユーモア》があるの?」と言いたくなるほどだった。


監督が相米慎二。(この人の監督作で斉藤由貴の『雪の断章』も観たのだけど、これまた同じように駄作。つまんなかった)


とにかく、エンディングテーマが流れるまでは苦痛以外の何モノでもない。


女優の演技開眼に定評のある相米慎二監督で、薬師丸ひろ子も、斉藤由貴も、

「あの時、監督にしごかれた時間があったからこそ、こうして女優を続けてこられた」

なんて回顧するインタビューを見るけど、それとコレとは話は別。


観る側にとっては、無関係。


要は「面白いか!、面白くないか!」だけなのだ。(私はつまらなかった。ゆえに相米慎二の映画は、それ以後パスしている)




お次は、同じ赤川次郎原作の『探偵物語』。


コレを私、観ていないのだが面白いんだろうか?


共演者が、私の苦手な松田優作というだけで、今日に至るまで完全スルーしてきたのだ。(歌は勿論知ってるけどね。これまた名曲)



松田優作の何が苦手って、あの独特な《セリフまわし》。

ぶっきら棒に早口で「さっさとセリフを言い終わってしまおう!」っていう、あの喋り方。


ゆえに、いつもふてくされているようにとれて、昔から、この人のドラマや映画は苦手なのだ。(コレが「カッコいい!」って人もいるけど……今だに良さが分からん)


透明感あるクリスタル・ヴォイスの薬師丸ひろ子と、いつもの様にぶっきら棒な芝居をするだろう松田優作……想像しても不釣り合いな気がして、これまた当時観る気がしなかった。



そうして、この後に、この『里見八犬伝』がやってくる。


巨額の制作費を投じて、SF超大作時代劇を1983年の暮れにぶつけてきたのだった。


お話は簡単。


100年前、妖怪『玉梓(たまづさ)』の呪いや恨みで滅ぼされ続けてきた里見家。

その最後の生き残りである静姫は、因縁を断ち切るため、伝説である8人の《犬士》を集めて「打倒!妖怪たち!」を誓うのである。



もちろん、ヒロインの静姫役には薬師丸ひろ子


そして相手役には、当時、そのハンサム具合とキレのあるアクションで、世の女性たちを「キャアーー!キャアーー!」言わせていた真田広之




何気に芝居が上手い真田広之の登板に、(オオッ!この映画は面白くなりそうかも……)と期待を膨らましていたら、他の脇をかためる俳優たちも、これまた凄い面子が、ジャンジャン並びはじめてくる。


同じジャパン・アクション・クラブの志穂美悦子大葉健二(宇宙刑事ギャバン)。


そうして御大、千葉真一。(これだけ揃えれば、アクションに関しては「大丈夫!」だと、ほぼ太鼓判を押されたようなモノだ)




重鎮、寺田農や『必殺仕事人』でブレイクする前の京本政樹もいたりする。


オマケに、妖怪で悪の本元『玉梓(たまづさ)』には夏木マリが扮しているのだ。(若さを保つため血の池に浸かる玉梓にゾゾッ〜!)




原作と脚本は『男女七人夏物語』の鎌田敏夫さんで、監督は『仁義なき戦い』や時代劇アクションを知り抜いた深作欣二



これで面白くならないはずがないじゃないですか!


映画は当然、大、大、大ヒット!した!!(メガ・ヒット)


オマケに当時発売した高価なビデオさえも何万本も売れたという。(ビデオなんて当時は1万円以上の値段。それがバカ売れなんて角川事務所は、もうウハウハ状態。笑いが止まらなかったろう)



かくいう自分も、ここへきてやっと、薬師丸ひろ子の映画で「チョー面白かった!」と素直に思えたほどだった。(とにかく次から次への妖怪たちとの死闘は大迫力。魅せる!魅せる!)


『静姫』(薬師丸ひろ子)が、

星よ、導きたまえ!って矢を射るポーズ、流行ったなぁ~。



ただ…………


この映画に一つだけ難癖をつけるなら、薬師丸ひろ子に、着物が似合わないことに気づいてしまった。


もう、可哀想なくらいにチンチクリンなのである (笑)。


冒頭の弓を構えるひろ子を見ても分かるように、背の低さ、首や手の短さは、着物を着れば一目瞭然。


本当に酷な言い方をするなら、

ちょっと可愛らしい《バカボン》って感じなのだ(笑)。(着物って、誰でも着て似合うもんじゃないのだ、と知る)


それでも、このblogを書きながら、懐かしさゆえ、こっそり『里見八犬伝』を借りてきた私は、今から記憶保管に観賞する予定。


皆さまも、どうぞ、楽しんでご覧あそばせあれ。

星☆☆☆☆☆。


※《後記》やっぱり数十年ぶりに観ても面白さは変わらなかった! 


この映画は「傑作!」だと、改めて思った次第である。(薬師丸ひろ子の着物姿も、「コレはコレで良いのかも……」なんて寛大に思うようになったのも、自分が歳をとって充分にオッサンになった?からなのかな?(笑) )



2020年2月21日金曜日

映画 「Wの悲劇」

1984年 日本。






とお~い昔、夏樹静子原作の『Wの悲劇』を読んだはずなのだが ……


まるで覚えていない!内容を!



製薬会社を営む大富豪の邸宅で、愛憎渦巻く殺人事件が起きる、くらいのボンヤリしたような記憶だけだ。


代わりに印象深く覚えているのは、映画の方。


この映画『Wの悲劇』の方は、原作をそのまま映画化しているわけではなく、原作の『Wの悲劇』は、あくまでも劇中劇として取り扱っており、完全なオリジナル作品となっている。




劇団『海』が、演目として選んだ題材が、この小説『Wの悲劇』なのである。(マイナーなミステリー小説を選ぶとは ……… これにお客が集まるのかねぇ~)



そんな劇団『海』の若い研修生たちは、「これはチャンスだ!」とばかりに、良い役をもらえるよう闘志を燃やす。



その中のひとり、地味な『三田静香』(薬師丸ひろ子)も ……




「初めてだったのか?」

「ええ、だって男を知らないと人間として幅が広がらないというか、女優としても成長できないような気がして …… 」


そう言って静香は、ある夜、劇団の先輩俳優『五代』(三田村邦彦)と一夜を供にした。(なんて早まった事を!)



1度限りの後腐れのない関係 …… そして静香は決心する。


(これで前に進めるわ!そして、次こそは必ず大役をつかんでみせる!)




そんな静香が、野外公園のステージで練習していると、見知らぬ男が興味深げに話しかけてきた。


「君、お芝居やってるの?」


男は、『森口昭夫』(世良公則)といい、今は不動産の仕事をしているが、昔、芝居をしていた事もあり、熱心に練習している静香が気になった様子である。



それからも、公園で度々会った二人は次第に打ち解けて話すようになってきた。



やがてオーディションがあり、そして配役の発表日。



静香に与えられた役は、あまりセリフのない女中役(トホホ …… )とプロンプター(役者が台詞を忘れた時に裏方でフォローする役目)だった。


そばでは、ライバルとして、しのぎを削っていた同期の『菊地かおり』(高木美保)が、「ヤッター!」と大喜びしている。


『Wの悲劇』の念願だった主役、和辻摩子役を、とうとう手に入れたのだ。



その様子を見て、さらに落ち込む静香。





夜もふけて、静香の足は知らず知らず、あの野外公園のステージに来ていた。


そこで落ち込む静香を見かけた森口は、思わず「結婚しよう!」と言うのだが、静香は女優の道を捨てきれないでいる。


「君が女優として成功した時は、楽屋に花束を送ってやるよ」

森口なりの励ましに、苦笑いで応える静香なのだった。




そんな静香を劇団の大先輩で大女優の『羽鳥翔』(三田佳子)も慰めてくれる。(お小遣いまでくれちゃう気前のいい翔)



大坂公演の後、静香はお礼がてら翔の部屋を訪ねると …… そこには血相を変えて取り乱した翔の姿が。


「ど、どうしたんですか?翔さん?」

部屋の中では、不倫相手で長年のパトロン『堂原』(仲谷昇)が死んでいた。



行為中の《腹上死》だった。(中年同士で、どんだけ激しいの?(笑))



その死体を見て、静香も、さすがに絶句して後ずさりする。



死体のそばでは、翔が「どうしよう …… どうしよう」と言い続けているが、翔は静香の姿を見ると「助けて!助けてちょうだい!」と、いきなり泣きついてきた。


「助けるったって …… 私にどうしろと?」

「堂原があなたと一緒にいた事にしてちょうだい!」

「そんな ……… 」

「このお礼は必ずするわ!あなたの望みなら何でも叶えてあげる!主役が欲しいんでしょ?その望みを叶えてあげるわよ!!」



こんな中年男の身代わりを、私にしろと?


………でも、これで主役になれるのなら………



翔の悪魔のような囁きとモラルを天秤にかけて、揺らぐ静香だったが、すぐさま答えは出た。


「分かりました」静香は合意した ………




それからは警察の取り調べ、マスコミの記者会見など、全て仕事のように淡々とこなしていく静香。



その後には、最大級の褒美が待っている。



『Wの悲劇』の主役。

静香は、いきなり端役から、主役『和辻摩子』へジャンプアップ!

大抜擢されたのだった。




だが、この突然の主役変更に、納得できるはずもなく……… 劇団員たちは、当然ざわつきはじめた。


(どうして、あの子が?)

(何か汚い手でも使ったんでしょうよ …… )なんていう陰口もチラホラ。



代わりに突然、役を降ろされた菊地かおりは、納得できるはずもない。


「翔先生!」

「あなたじゃダメなのよ!摩子役、誰かに変わってもらわなくちゃ、私できないわ!」

かおりは憎悪をむき出しにして去っていった。




それでも、静香は動じる事はない。


(これが自分で選んだ道 …… どんな手段でも主役は私なんだから …… )



静香の舞台『Wの悲劇』の幕が開く ……





この後は、この映画、もう名セリフのオンパレード。



《名セリフ1》そんな汚いやり方で、役を手に入れた静香に激昂する森口に向かっては、


顔ぶたないで!私、女優なんだから!(顔は女優の命ですもんね)





《名セリフ2》『Wの悲劇』の幕開け前に、覚悟をきめたはずなのに、緊張でガクガクの静香に翔が言う言葉も印象深い。



女優!女優!女優!勝つか負けるかよ!(女優のお仕事も大変)




《名セリフ3》さあ、いざ本番、『Wの悲劇』の幕があがると、『摩子』(静香)のセリフが、


私、おじいさまを殺してしまった!おじいさまを刺し殺してしまった!!(この芝居のセリフ、これで掴みはO.K!)





《後、隠れた名セリフ4》別れを決意して去ろうとする静香に、後ろから昭夫が声をかけるのだが……


これが俺たちの千秋楽なのかよ?!


なんてのもある。(こんな臭いセリフも世良公則だから、カッコ良いんだけどね)





現実世界では、到底使わないような言葉が、ポン!ポン!飛び出してきて、まぁ楽しい事!


そして、こんなインパクトがあるセリフは、当時バラエティー番組なんかがあると、こぞって取り上げてマネしたものである。




それまで、薬師丸ひろ子の映画は何となく不得手だった。


でも、この映画に関しては大好きになってしまった。(もちろん名女優、三田佳子さんも)





そして、薬師丸ひろ子の歌の上手さも、この映画で改めて再確認したような気もした。




この映画の主題歌、『 WOMAN~(Wの悲劇より~) 』は、ハッキリ言って、超ムズカシイ難易度の高い曲で、誰でもが簡単に、一朝一夕(いっちょういっせき)で歌えるシロモノではないのだ。


ともすれば、暗く陰鬱そうな、このメロディーラインを、薬師丸ひろ子の伸びやかな声が、救い上げるように、みずみずしく歌いきっている。


作曲は、あの松任谷由実だが、作ったユーミンのダミ声でも、このカバーだけは絶対に不可能。



薬師丸ひろ子だからこそ、歌いこなせる楽曲なのである。




そして、あれから、数十年以上経った今でも、当時と同じキーで歌い上げている彼女の歌唱力は驚異的。


たまにテレビで観ても、スンナリ聞き惚れてしまうくらいだ。



DVDには(レンタルでも)、本編の映画の他にもメイキングや、何と、薬師丸本人の歌唱シーンもあって、超贅沢な気分を味わえる事請け合い。


是非、是非、観るべしである。

星☆☆☆☆☆。