「年頃になっても、あんまり浮ついたり、チャラチャラした恰好をすんなよ!」by 高倉健。
当時13歳でデビューしたばかりの薬師丸ひろ子が主演の高倉健が言われた言葉である。
この言葉は、少女だった薬師丸ひろ子の心の奥底にグサリと刺さり、かなり印象に残っていたようだ。(と、本人が語ってる)
高倉健といえば、《超》がつくほどのクソ真面目な性格で有名である。
映画でも撮影は基本、一発の1テイクだけ。(他の共演者たちはNGでも出せば冷や汗ものだったろう)
休憩時間でも座ることなく、ずっと立っていたりする。(大御所がこれなら、若手の俳優たちはかなり気を使っただろうな)
「自分、不器用ですから … 」と自嘲気味に語る高倉健。
かといって、人に対する気遣いは半端なくて、広い芸能界でも高倉健の悪口を言う人を今まで見たこともなかった。
…… でも、(こんな人の懐に入って仲良くなるなんてのは、かなり難儀だろうなぁ~)なんて、私なんか思ってしまう。
そんな敷居の高そうなハードルでも軽々超えてしまうのが薬師丸ひろ子なのだ。
それに、この言葉、一見ドきつそうな言い回しにも思えるが、明らかに高倉健にとって薬師丸ひろ子が特別な存在だったのが分かる言葉である。
見方を変えれば、身内か、まるで実の娘の行く末を心配しているようにも聴こえてくるのだ。
こういう気難しい人でも、氷解させて虜にさせてしまうのが、不思議な薬師丸ひろ子の魅力なのかもね。(まれにこういう人もいるよなぁ〜)
映画『野性の証明』では擬似親子を演じている二人。(薬師丸ひろ子が殺されてしまうので、映画の方は、なんとも後味の悪いような出来だけど … )
主題歌には町田義人さんの歌う『戦士の休息』が使われている。(これがけっこうな名曲!)
やがて2014年に高倉健が亡くなると、2016年に薬師丸ひろ子は『cinema songs』なるカバー・アルバムを発表した。
その中の一つに、あの名曲『戦士の休息』が収められている。
そうして、2018年のコンサートからは、曲目の中に毎年、この『戦士の休息』が組み込まれるようになった。
フル・オーケストラのアレンジにのせた薬師丸ひろ子の歌声は、オリジナルを上回るような出来で、初めて観た人などは、その表現力に圧巻させられると思う。
荘厳な雰囲気を漂わせていて、観客たちを異質な別世界へと誘(いざな)ってくれる。
前述に書いたことを踏まえて、改めて聴くと、まるで、敬愛する高倉健への《鎮魂歌(レクイエム)》のようにも聴こえてくるのだ。
久しぶりに歌を聴いて感動してしまった!
これこそが《本物の歌手》の歌である。
余計なお世話かもしれないが、ここに記しておく。(オススメ)