2007年7月〜9月(全10話)。
『橘 真琴』(江角マキコ)は、おむすび会社を経営するワンマン女性社長。
大勢の社員を抱え、やり手の真琴はニューヨークに支店を出そうと、もっか奮闘中である。
もちろん、仕事ばかりではなく、合間をみつけては友人たちとフラダンス教室に通ってみたり、リフレッシュ休暇をとっては旅行してみたり ……
そうして40歳になった真琴は、さらにプライベートを充実させようと計画していた。
それが《結婚》である。
お相手は『森福三四郎』(沢村一樹)といって、真琴より3歳若い商社マン。
森福家は、当主『森福大三郎』(伊東四朗)と妻『千代子』(野際陽子)、離婚して出戻りの三四郎の姉『小百合』(浅田美代子)、その娘『みちる』(片瀬那奈)が住んでいる。
森福家の希望としては、「お嫁さんには、息子と結婚して敷地内にある《離れ》に住んでくれたら …… 」なのである。
真琴も実際、その《離れ》を見てみるとノリ気になってきた。
(うん、案外いいかも …… そんなに都内から離れていないし。オマケに近くには海岸があって休みの日には『三四郎』さんと散歩できるしね …… )
あんまり物事を深く考えない真琴は、O.Kした。
だが、この判断は即、後悔する事になる。
姑の『千代子』(野際陽子)は、超お節介な性格で、いちいち真琴のする事なす事に介入してくるのだ。(仕事のことでも)
しかも《日本の心》、《日本の伝統》を引き合いに出してきては、また、それが正論で、真琴は毎回粉砕されっぱなし。
「おのれ〜!千代子めぇ〜!🔥」
いつしか趣味で始めたフラダンスは真琴のストレス解消法になり、
「あの《バカ嫁》が〜!💢」
それに応えるように千代子も趣味の三味線で応戦する。
同居する家族はそんな二人に呆れながら、今日も森福家の夜は平和にふけていくのであった ……
江角マキコ主演の《地獄の沙汰もヨメ次第》を久しぶりに観て大笑いした。(U-NEXTでやっていた)
放映当時も観ていたが、やっぱ江角マキコ、演技上手いわ。(そう思うの私だけか?)
《離れ》を洋風に改造リフォームしようと計画するも、千代子に先回りされて畳部屋や神棚を設置されてしまう真琴。
「生まれてくる子供は畳で育つのが一番なんです!」(by千代子)
オマケに森福家には、昔ながらの《女心得》なんてのが神棚に飾られている。
「あなたのそのひねくれた根性、滝行をして精神を鍛えなおしてきなさい!」(なんちゅー姑じゃ)
こんなのも断ればいいのに、この真琴も「千代子に負けてたまるかぁー!」の意地で山奥まで勇んでいく始末。
でも、実際行ってみると凍りつくくらい水は冷たすぎて ……
(誰も見ていないし、このくらいでいいだろう …… )と、顔と髪の毛をチョチョイと濡らして「ハイ!滝行おしまい!」とズルしようとする真琴。
だが、そうは問屋がおろさない。
またもや先回りした千代子が待ち構えていた。
「あなたの滝行を見届けにきました。さぁ、どうぞ。」(暇な姑)
「ヒィィィーーッ!冷たぁーーい!」
「ハイ!その場で、森福家の《女心得》を復唱しなさい!」
「お義母様ぁぁーーー!(このクソ千代子めぇーー!)」(by真琴)
万事がこんな風である。(ああ、可笑しい)
放映当時は山口智子と野際陽子が演じた『ダブル・キッチン(1993)』の焼き直しみたいに言われていた本作だが、私は江角マキコの方が好き。(どちらにも伊東四朗も出ている)
だいたいにおいて《コメディー》が出来る女優さんを、私は大いにかっているのだ。
これは偏見でもなく、男と違って女性がコメディーを演じるというのは、とても高いハードル。
如何せん、女性には男と違って「人に笑われたくない!バカにされたくない!」なんて気持ちが大きくて、どうしても最後の最後、《羞恥心》を捨てて、それを乗り越えられないものなのである。
だからコメディーが出来る女優さんを私は尊敬します。
そうした江角マキコの特異な資質を最初から見抜いていたのが、あの樹木希林である。
おっとりした風貌に反して演技には非常に厳しく一切妥協を許さなかった樹木希林。(いくら有名でも、西城秀樹にしても郷ひろみにしてもコテンパンにやられたそうな。郷ひろみに至っては「あんた、演技の引き出しが少なすぎる!」と、ケチョンケチョン)
共演した女優にも、その厳しさは容赦なく、若手女優なんか我慢できずに泣き出す者もいたという。
ただ、江角マキコだけは、デビュー作で共演した時も(『輝け隣太郎』)、そんな樹木希林のシゴキに全く音を上げる事がなかったそうな。(後年、樹木希林自身が、そう言って江角マキコを褒めたたえていた)
この『地獄の沙汰もヨメ次第』は、そんな女優、江角マキコの到達点みたいな気がする。
当然、オススメしとく。(最後まで面白いよ)