1987年 イギリス。
レンタルビデオの時代に、あちこちでこれを見かけた人たちも多かったんじゃないかな?
監督は、ジョー・ダマト。
低予算でサクサク作られた映画は200以上だといわれている量産監督である。
そのジャンルもB級、C級を地でいくようなモノばかり。
とにかく本人が、「芸術性なんてクソくらえ!配給収入だけが大問題なんだ!!」の《金、金、金》の金儲け主義の人だったらしい。
ここまで、ハッキリ、キッパリ言われると、逆になんだか清々しい気もしてくるのだが……。
そんな膨大な作品の中でも、この映画はまだマシな方かも。
ひと言でいえば、この映画は《 女に嫐(なぶ)られる男》の、お話である。
『マイケル』(ジョシュア・マクドナルド)は、普通に恋人もいて、数日後には、その恋人との結婚もひかえている、ごくごく普通の男性。
そんなマイケルは、ある日、肉感的な女性『サラ』(ジェシカ・ムーア)と知り合う。
サラの魔性のような魅力に抗えないマイケルは、そのまま関係をもってしまい、ズルズルと………。
でも、このサラは普通の情事じゃ、全然満足できない女性なのだ。
ある夜、サラと二人、ホテルにやって来たマイケル。
普通にコトが運ぶと思いきや、マイケルは素っ裸にされて、腕を持ち上げられて部屋の柱に腕を縛られる。
(な…何が始まるんだ?)
不安なマイケルの前でユックリ全裸になるサラ。
サラは笑いながら、ジャムの瓶をもってマイケルの体に塗りたくり、それをベロンベロン。
いやらしく攻めてくるサラに、妙な快感で、身悶えするマイケル。
そうして柱に縛られたままグッタリ。
そんなサラは、さっさ着替えると、柱に素っ裸で縛られたままのマイケルを置いて、笑顔を向けると、ホテルのドアから、ひとり出ていった。
「オーイ!!待ってくれ!!この縄を解いてくれー!!」
放置プレイで、恥ずかしい姿のまま、後に残されるマイケル。
(チクチョー!あの女!!………)
サラへの怒りと恥ずかしさで、ジタバタするマイケルは、そのまま朝を迎えた。
ホテルの掃除婦がドアを開けて入ってくると、素っ裸で柱に縛られたマイケルの姿を見てビックリ。
(あ~、どうにでもなれ…………)
窓ガラスの朝陽に目を向けるマイケルなのだった。
そうして、
(今度会ったらどうしてくれようか……)
プンプン!怒りまくりのマイケルなのだが、いざ、サラを目の前にしたら、サラの色香に、途端にデレデレ。
サラのペースで引きずり回される、もう、どうしようもないマイケルなのである。
パーティーに誘われたマイケルは、ドレス姿のサラに、無理矢理トイレに連れていかれる。
「全部着替えるのよ!全部脱いでちょうだい!」
またもや、トイレの中で素っ裸にされるマイケル。(もう、イジメじゃん(笑))
そんなマイケルに女モノのパンティーやガーターベルト、ドレス、カツラが投げ込まれる。
「こ、これを着ろと?」
「そうよ!いうとおりにして!でないと、いつまでもそこで素っ裸よ」
トホホ……渋々、パンティーを穿いて、ガーターベルトを付けはじめるマイケル。
トイレから出てきた姿は、まるでドラッグ・クイーンのようだった。
代わりにサラは、マイケルのスーツを着こんでいて男装している。
サラは、そんなマイケルに化粧をほどこすと、「まぁ、綺麗だわ」と言い、女装したマイケルを引っ張っていった。
ジロジロと道行く人に見られて、まるで見世物のようにさらされるマイケル。
もう恥ずかしさでイッパイだ。
「もう、やめてくれ!」
マイケルの悲痛な叫びに、「フフッ」なんて笑みをたたえるサラ。
サラはマイケルをホテルの部屋に引っ張っていくと、ベットにマイケルを押し倒した。
そして、馬乗りになってくる。
「あなたは《女の子》、私が襲ってあげる」
マイケルの羞恥心は完全に崩壊し、全てがサラのなすがまま。
こうして、どんどんマイケルは倒錯した快楽に身を委ねていくのであった………。
遠いVHS時代の記憶を掘り返して、たしか、こんな内容だったと思う。(それにしても我ながら、よく覚えているわ)
なんせ、これを観たときは純な高校生くらいの時期。
倒錯した世界にクラクラして、思春期には、衝撃的だった。
こんだけ《恥ずかしさ》や《羞恥心》を、「これでもか!」ってな具合で、突かれて、揺さぶられるんですもの。
心をむき出しにされるような感じで、心に幾つも囲ってある防護壁なんて、もはや粉々。
もう『お好きにしてちょうだい』状態なマイケルの気持ちも分かる気がする。
まぁ、このマイケル役の『ジョシュア・マクドナルド』も男のくせに、サド心をくすぐるような、妙な色気があるけどね。
でも、この後、サラは身を引いて、マイケルは恋人の元へと戻っていくんだけど………余計なお世話だけど「上手くいくのかねぇ~」なんて思ったりして。
1度覚えた《 蜜の味 》は忘れられないような気もするのだが。
なんだか、妙にドキドキ興奮させられた1本で、これも思春期の思い出として、ここに取り上げさせていただく。(なお、日本ではDVDは発売されておりません)
星☆☆☆。