1984~1994年。
激しく奏でるバイオリンの調べ、映し出されるベイカー・ストリートを走り抜ける馬車。
そんなオープニングで始まった『ホームズ』。
当時、何気に、(へ~え、こんなドラマが始まったのか…)と観ていたのだが………
ホームズ役者は、それまで数多く存在すれど、このホームズ役の『ジェレミー・ブレッド』は、独特すぎるくらい独特なインパクトだった。
なんせ、あの顔がスゴい!
白塗りしたんじゃないのか?くらいの青白い肌、目の周りと薄い唇は真っ赤。
高い鷲鼻など……こんな顔なら、ホームズよりも『吸血鬼ドラキュラ』の方がお似合いのような気がしていた。
そして、こんな顔だけでも超インパクトがあるのに、その動作も、まるで舞台のように大袈裟でオーバー。
身ぶり手振りが激しく、いきなり立ち止まったかと思ったら、クルリと振り向いたり。(ビックリする!)
唇に、自分の人差し指をあてる癖。(考える時)
歩くときも、歩幅は広く、おまけに競歩のように敏速な早歩き。
「さぁ、ワトソン君、急ぐのだ!」
スタスタと、勝手に先に行ってしまう『ホームズ』(ジェレミー・ブレッド)に、後から付いていく『ワトソン』(デヴィッド・バーク)も大変である(笑)。
「待ってくれよ!ホームズ!!」(ホームズ、そんな声も聞いちゃいません)
こんなエキセントリックなホームズの印象が、あんまりにも強すぎたので、他の登場人物たち(ワトソンやら、ハドソン夫人、レストレード警部、モリアーティー教授)などは、全て汎用に見えて、霞んでしまったくらいだった。
それらの役者たちなど、今でも思いだそうとしても、「どんな顔だったっけ?」ってな具合だ。
第1シリーズ、第2シリーズで、ワトソン役を演じていた『デヴィッド・バーク』が降板して、第3シリーズから『エドワード・ハードウィック』に変わっても、当初、気がつかなかったくらいである。(これ、本当なんです)
《デヴィッド・バークのワトソン》
《エドワード・ハードウィックのワトソン》
まぁ、でも、このくらい変わり者のホームズでも、ちょうどいいのかも。
原作者、コナン・ドイルが書いたホームズの物語も、ヘンテコな話が数多くあるから。
『まだらの紐』なんて、ズバリ、蛇を調教して姉妹を殺そうとする義父のお話。
姉は殺されたが、妹の方は駆けつけたホームズに追い払われて、抜け穴から戻ってきた蛇に、逆に咬まれて死んじゃう義父。(「ギャアアー!」の断末魔の叫び)
『這う男』なんて、大学の教授が、若い女に恋してしまって、なんとか婚約までこぎつけるんだけど………。
「このままでは、若い嫁を満足させてやれない………」
「このままでは、若い嫁を満足させてやれない………」
と悩んでしまって、元気にする薬(精力剤)を、こっそり隠れて購入。
それが、猿のエキスを調合したモノだったので、その副作用で、とうとう猿化した教授は、夜半、木に飛び移ったりする。
そうして、とうとう、
「ウッキー!」とか、叫びながら四つん這いで、そこらじゅう這いまわるのである。
「ウッキー!」とか、叫びながら四つん這いで、そこらじゅう這いまわるのである。
「もはや遅かったか………」謎を解いたホームズは、教授の婚約者や助手、それにワトソンたちと、それを静かに見守りながら傍観するのである。
原作を読んだ時も、充分、変な話だと思ったが、ドラマは大真面目に役者たちが演じているので、観てみると、
「何じゃこれ?ギャハハハッ!!!」の大爆笑モノである。
こんなヘンテコな話が、ホームズの事件簿には、山ほどあるのです。(中にはマジメ~な話もあるけど)
でも、このくらいヘンテコリンに振りきった話の方が、私は大好きである。
ホームズ役のジェレミー・ブレッドが、途中、鬼籍となり、この聖典は未完となってしまったが、41作の長・短編を映像化した、この『シャーロック・ホームズの冒険』は、一度は観る価値あり。
ホームズ初心者の入門編としては、このドラマは最適かもしれない。(バカ話もあるので、お気楽にね)