その昔、こちらの映画も、何度も繰り返し、日曜洋画劇場で放映されていたものだ。
監督は、『007 ゴールド・フィンガー』でお馴染みのガイ・ハミルトン。
タイトルが、『レモ / 第1の挑戦』だけあって、シリーズ化する予定だったのだろうが……残念。これ一本で終わってしまった。
こんなに面白いんだけどなぁ~。
普通の中年警官『マキン』(フレッド・ウォード)は、夜間の勤務中、港にいたチンピラたちのいざこざ(どうでもいい)に巻き込まれてしまう。
それでも、チンピラたちを成敗し、ヘトヘトになりながらもパトカーに戻るマキン。
かじりかけの夜食のバーガーを手に取ったとき、パトカーに、いきなり衝撃が襲った。
後ろから、大型トラックが押してきたのだ。
(何だ?!何が起こったんだ?!)
マキンのパトカーは、そのまま海へ押し出され、ブクブクと沈んでいった……。
そして、ハタッ!と目が覚めたマキン。
いったい何日が過ぎたのか………マキンは病院のベットの上に寝かされていた。
起き上がり、そばの鏡を見ると、そこに映るのは、見たこともない別人の顔。
「何だこれは?これは俺の顔じゃない……」(いいじゃないか、前よりハンサムになってるんだから)
その時、戸口のドアから男が、颯爽と入ってきた。
「顔だけじゃない。指紋も変えてあるし、君は、完全に生まれ変わったんだ!」
その男、マクレリー(J・A・プレストン)は淡々と言い放った。
「マキンは死んだ。君は今日から『レモ・ウイリアムズ』と名乗り、我々の組織の為に働いてもらおう」
あまりの状況の変化についていけないレモ。
それでも、そんな事はお構いなしに、マクレリーは、レモが退院すると、強引に(銃を押し付けながら)、組織の場所に連れていった。
そこは小さなオフィス。
ポツンと一人の老紳士『スミス』(ウィルフォード・プリムリー)がいるだけだった。
(これが組織?)
「いったい何人いるんです?ここの組織は?」
レモが聞くと、スミスは、しれ~として、「君を入れて、我々3人だけだが」と言うのだ。
(どんだけ、低予算の組織なのだ!)
こんな小規模の組織だが、大統領の直属で、法律で裁けない悪を替わって成敗する組織らしい。(ほんとかよ)
その暗殺者として『レモ=マキン』が選ばれたのだった。(まぁ、選考基準は、親類や家族がいないってだけだが…)
(ええい!こうなりゃ、ヤケクソよ!やったるわい!)、と思ったか、どうか分からないが、レモは、取りあえず引き受けた。
「さて…君に最初の任務だが……」
「ここだ。」
夜半、マクレリーの車に乗せられたレモは、あるアパートの前で降ろされた。
「ここにいる人物を殺してくるんだ。俺は車で待っている。」
マクレリーは、レモに銃を渡すと、さっさと行け!と、ばかりに、手を振って合図をした。
マクレリーを振り返り、振り返り、レモはアパートに入っていった。(トホホ…やっぱり気が進まないなぁ~)
(なんだ、年寄りか。どうせ英語も分からないだろう……)
その年寄りを無視して、先の部屋の階段に進んでいくレモ。
そんなレモに、ドアのそばの年寄りが、
「どこへいく?」と声をかけた。(もちろん英語で)
(なんだ、言葉が分かるのかよ。)
「じいさんには関係ない!」レモは、そう言い捨てると、奥の部屋のドアに手をかけたが、老人はさらに続けて、こう、声をかけた。
「奥には誰もいやせん。このアパートには、わし一人だが」
(何?すると殺しのターゲットは、目の前の、このジジィなのか?)レモは、一瞬、躊躇したが、すぐに腹を決めた。
こんなヨボヨボのじいさん、片付けるなんて訳ない。楽勝な仕事だ。
「悪いが、じいさん死んでもらうぜ」
レモは銃を構えると、老人に向けて発砲した。
それをスルリとかわす老人。
2発目、3発目も、弾丸がスローモーションのように見えるのか、なんなくかわしていく老人。
やがて弾を撃ち尽くしたレモに、間合いをつめると、老人はレモの腕を、軽くひねり、力も入れないで投げ倒した。
何が起きたのか分からないレモだったが、それでも、老人に向かって体当たりしようとする。
それを、またもやスルリとかわされ、壁に激突。
まるで赤子のように扱われるレモ。
ドタバタ一人相撲で、(ゼイゼイ、ハァハァ)息がきれて、最後にはバッタリ、その場に倒れこんだレモ。
そこへ、しばらくして、マクレリーが現れた。
「どうですか?彼は?」
老人はこう言ったのだった。
「まるでノロマだ、反射神経が、まるでなっとらん!」
老人の名は『チュン』(ジョエル・グレイ)。
ここから、師範代チュンの下でレモの修行の日々がはじまるのだが……。
『ベストキッド』やジャッキー・チェンの『酔拳』なんて、修行ものの好きな方はニヤリとするだろう。
アパートの屋上で、幅の狭い縁を走らされたり、(下を見れば一貫の終わり)
長い高さの棒の上を、順番に、ピョンピョン、飛び移りながら、昇っていく修行などなど。
回る観覧車に掴まりながら、昇り避けるなんて危険な事も。(CGもない時代ですぞ)
最後には、修復中で、頭上まで足場を組んだ『自由の女神』での修行なんてのもある。(高所恐怖症の方には、どれもこれも鳥肌ものである)
こんな、過酷な修行を続けるうちに、レモの身体能力も、ドンドン上がっていき、ずば抜けて成長していく。(一歩間違えれば死んでるのに、このレモも運がいいというか、相当タフだよ)
でも、チェン老人が教える『シナンジュ』という武術、現実には存在しません。
まったく架空の武術なのである。(だろうと思ったよ。こんな修行、見たことも聞いたこともないわ (笑) )
そして、アメリカで、のさばっているという巨悪へと向かっていくレモなのでした。
この『レモ』には原作が一応ある。
『デストロイヤー(殺人機械)シリーズ』という小説で、なんと150冊近くの長寿シリーズ。
だから、続けようと思えばシリーズは続くはずだった、が、残念!この映画はヒットしなかったのだ。
何でなんだろう?こんなに面白いのに……と、当時は思ったものだが、数十年ぶりに観て、その謎も解けた気がする。
音楽が、チョーダサいのだ!
監督も、演出も、脚本も、俳優たちも良いのに、バックで流れる音楽がダサすぎる!
まるで『特攻野郎Aチーム』を崩したような音楽で、それが、この映画に全然マッチしていない。
音楽だけを入れかえたら、多分、上質なエンターテイメントとしてヒットして、シリーズ化も夢じゃなかったと思うのである。
だから、残念でならない。
映画のできばえは、音楽を引いて、星☆☆☆☆の4つ星とさせていただきます。
それでも観る価値あり。
バカバカしい修行の数々も、これぞ80年代!って感じの雰囲気。(修行の成果で、固まってないコンクリートや水面を走れるようになるって! もう、どんな修行よ!(笑) )
どうぞ、御一見を!