1975年 アメリカ。
その昔、『ルーツ』というドラマがあったのを知っているだろうか?
奴隷制度の時代に産まれた、黒人クンタ・キンテの波瀾万丈の物語。
イギリス人に誘拐され、奴隷として別の名前を与えられ虐げられながらも、決して誇りを忘れず、その不屈の精神は代替わりしても、子孫たちへ脈々と続いていく ……
本国アメリカで放送されるやいなや、衝撃的な内容は、たちまちセンセーションを巻き起こした。
そうして世界中で放送されると、どの国でも高視聴率をたたきだす。
かくいう自分も、このドラマは、リアルタイムで観ていた世代であり、あまりの白人たちの横暴さに、目をそむけたくなるくらいだった。
脱走を繰り返したクンタ・キンテが、これ以上、逃げ出さないように足の指を切断されるシーンなどは、テレビを観ていて「ギャアァーッ!!」っと叫ぶほどだった。(画面を通じても、痛さが伝わってくるとは、この事か …… )
この『ルーツ』が1977年の放送。
それより前に、この映画は『マンディンゴ』は、とっくに公開されている。
同じように黒人奴隷の問題を扱っていても、こちらは、もう『ルーツ』なんて比べ物にならないくらい酷い有り様である。
この映画に、ただ唖然とさせられる!😱
19世紀、ルイジアナ州にある広大な土地を所有する当主『マクスウェル』(ジェームズ・メイソン)。
マクスウェルは、その土地で黒人たちを奴隷として使って農園を営んでいた。
綿や農作物の為に、懸命に働く黒人たち。
男も女も黒人ならば白人様には絶対服従なのは当たり前。
使う方も使われる方も、それに疑念すら持たないのである。
だが、黒人たちの御奉仕は、これだけで終わらない。
夜になれば女たちは、マクスウェルのひとり息子である『ハモンド』(ペリー・キング)の 性処理係 を毎晩つとめなければならないのだ。
その為、お屋敷には、14歳以上で黒人の処女などは全くいなかったのだった。
こう書くと、女たちには、さぞや地獄の日々に思えるだろうが、このハモンドは見た目、超ハンサムさん✨
白人男に奉仕するのでも、黒人女たちはあまり抵抗なく身を捧げていたのである。
「あ~ん、ハモンド様、アハァ~ン♥️」(ようやるわ。それにしても毎晩女たちを満足させるハモンド様は絶倫王)
だがハモンドの性根は、やはり冷徹な父親マクスウェルの血を引いていて腐りきってる。
黒人など、同じ《人間》とは微塵も思っていないのだ。(ただの性欲の捌け口くらいの鬼畜感覚である)
もし仮に、女たちが妊娠してしまい、ハモンドの子供が産まれても、即座に売りに出される。
黒人ならば買ったり、売ったりすればいいだけなのだ。
そう、この屋敷は《 奴隷売買牧場 》でもあったのである。
ある日、黒人男『メム』が、こっそり本を読んでいた。
深夜、父親の寝室に入ってくるなり告げ口するハモンド。(本当にイヤな奴)
「パパ、あいつ、隠れて字を読んでいたよ!黒人のくせに字が読めるんだ!!」
それに父親マクスウェルが即反応する。
「な~にぃ~!」(ここはクールポコ調で)
「黒人ごときが生意気な!昔は目玉をくりぬいてやったくらいだが ……《折檻》してやるんだ! そうだ、尻叩きがいい!怪我をすると作業ができなくなるからな …… そのかわり、尻には唐辛子とレモン、それに塩をたっぷり刷り込んでやれ!ヒィー!ヒィー!言わせてやるんだ!!」(ジェームズ・メイソンよ、トホホ …… (笑))
「わかったよ、パパ」(この父親にして、この息子あり)
次の日、馬小屋で全裸にさせられたメム。
黒い素肌に縄が食い込むくらい、ギュウギュウに縛り上げられると、逆さ釣りにされて引き上げられた。
「ご主人様、お許しください!」
「いいか?黒人が、もう本なんて読むんじゃないぞ!」
別の黒人奴隷に命じて、角材で尻叩きをさせるハモンド。
「打て!!」
「バチーンッ!」の音とともに、何度も「ギャアァーッ!」の悲鳴。
こんなのは、この映画に限っては、まだ序の口。
この後も、こんなクズ・エピソードはジャンジャンと出てきます。
ある日、奴隷市場で《マンディンゴ》と呼ばれる筋骨粒々の体格の黒人『ミード』(ケン・ノートン)を競り落としたハモンド。
ハモンドは、黒人同士の拳闘をさせる為にミードを買ったのだ。
ミードはご主人様ハモンドの期待に応えて、どんな試合でも相手を打ち負かしてゆく。(負けた方の黒人は縛り首なのだ。もう黒人同士の殴り合いでも、命がけである)
そんなミードの勇姿を観て、我が手柄のように悦に入っているハモンド。
喜び喝采する白人たち。(書き出しながら、ドンドン胸糞が悪くなってきた)
↑(お〜、このババァ、勝手にドコ握っとんねん!(笑))
父親マクスウェルが突然こんなことを言い出した。
「わしは生きているうちに孫がみたいんじゃーーー!」
(ハモンドには、既に黒人女たちに産ませた子が何人もいるのにね)
でも、このブランチが《処女でない》事が分かると、途端にハモンドは手のひら返し。
猛烈に腹を立てて、放ったらかしにし始めたのだ。(本当に最低な奴である)
その代わりとして、自分の性欲の捌け口を、またもや黒人女『エレン』へ向けていくハモンド。(相手にされない妻ブランチはイライラを募らせてゆく)
そうして、とうとうエレンがハモンドの子供を身籠ってしまった。
これまで本妻のプライドを傷つけられてきたブランチの怒りが、ここへきて大爆発!(キィーッ!!)
「死ねぇ!この売女!!」
むごたらしくエレンを鞭打って流産させてしまうのだ。(このブランチも大概スゴい性格だ)
ブランチの怒りは、こんなものでは収まらず、ハモンドにも復讐を開始する。
でも、それがハモンドにバレてしまい、もはやドロ沼のクライマックス。
「俺の《奴隷》の分際で、俺の妻に手を出しやがってぇ~!」
ミードが白人妻ブランチを拒めるはずもないし、ミードは全然悪くない。
なのに、この理不尽な怒りの矛先は、黒人というだけで一斉にミードに向けられるのだ。
ハモンドは、ミードを殺そうと追いかけ回す。(かつて、ここまで傲慢な主人公がいただろうか)
(「どのツラ下げてそんなセリフが吐けるんだー!」と全世界でハモンドの今までの所業にツッコミたくなる)
セックスと人種差別が入り交じって、まさに魑魅魍魎の地獄絵図。
こんなトンデモ映画であるが、公開された1975年当時は予想外に大ヒットしたのだという。
でも、ヒットとは真逆で、悪評、酷評の嵐。(そりゃそうだろうよ)
主な感想はやっぱりこんな感じ。
「クズ映画」、「子供に見せられない最低映画」、「下品」などなど ……
クェンティン・タランティーノなどの著名人も「史上最悪の映画」として太鼓判?を推してくれております。
まるで否定出来ないわ〜
かくいう自分も、見終わった後、一瞬、クラクラするくらいであった。(これでも日本発売のDVDでは、SEXシーンと暴力シーンをだいぶ配慮してカットしているのだという。ノーカット版は、どれだけエグいのやら)
まぁ、とにかく史上稀な問題作なのは間違いない。
それにしても、ペリー・キングやジェームズ・メイソンは、この映画に出演して、その後、大丈夫だったのかしらん?
フィクションの境界線をこえて、全黒人たちの猛烈な怒りが彼らに向けられたのなら、命がけの出演だったんじゃなかったのか。
単に暴言や、石を投げられただけじゃ済まなかったかもしれない。(当時は殺害予告もあったかも)
この映画に出て、誰か得した者はいたのかねぇ〜?
と、問いかけておいて、私は、ここらで(スタコラ)逃げておきます(笑)