2019年6月30日日曜日

映画 「007 ムーンレイカー」

1979年 イギリス。






ロジャー・ムーア=007の勢いは止まらない。



もう、オープニングから凄い。


自家用ジェットから、美女とイチャイチャしているボンドは、敵と共に、パラシュートなしで、高度何万メートルの上空に投げ出される。


空を泳ぐように追いついたボンドは、敵からパラシュートを奪い取り、何とか装着。(命がけのスタントである。CGなどない、実写の、このド迫力を観よ!)


その時、遥か上空のジェット機から、ニタリ顔で現れた『ジョーズ』。(出たぁー!!)


ダイブして、ボンドに追いつくと、上空で組んずほぐれずの闘い。


『ジョーズ』はボンドの足を掴み、捉えた。

口が大きく開き、鋼鉄の義歯を覗かせる。




その瞬間、ボンドのパラシュートが開いた。

ボンドは、間一髪、難を逃れ、『ジョーズ』の真上に浮かび上がった。



(よし!俺もパラシュートを開こう!)


『ジョーズ』が脇の紐を引っ張ると、「ブチッ!」(ゲゲェーッ!!)パラシュートは開かず、紐が千切れとんだ。


何とか鳥のように飛べないものかと、両腕をバタバタ、羽根のように振っている『ジョーズ』。(そりゃ、いくらなんでも無理だろ!)


『ジョーズ』はサーカスのテント小屋に、まっ逆さまに落ちていくのだった……。(でも、ジョーズは死なない。いつだって不死身の『ジョーズ』なのだから)





ここまでが、サービス満点のオープニング。


まったく本筋には関係がないのに、ここまで派手なオープニングを、やってくれる映画も珍しい。(これこそが007の魅力なのだ!)






今回の敵はサー・ドラックス(マイケル・ロンズデール)。


スペースシャトル『ムーンレイカー』を奪い、ドラックスが選んだ美男美女たちを乗せて、極秘に開発していた宇宙ステーションに逃げ込む。


そして、地球に残された人類を、全て抹殺する為に、大量の殺人ガスを撒き散らすという壮大な計画である。


この絵空事とも思える話は、数年後には、笑い話ではすまなくなる。

我々、日本人はオウムの地下鉄サリン事件を体験しているからだ。


ドラックスの思想、

「良い『種』だけを残して、増えすぎた人類を抹殺する」

なんてのは、あの教団の教祖の考え方に、あまりにも似すぎていて、今となっては、うすら寒ささえ感じてしまう。



そんなドラックスの配下として働いていた『ジョーズ』(リチャード・キール)。


今回、金髪おさげで眼鏡をかけたドリーという女性と、いい感じに恋におちた『ジョーズ』は、取りあえずは、宇宙ステーションに来ていたが、

ボンドの言葉、

「もちろん、それに該当しない『醜い者』は抹殺されるんだろう?」

という、ドラックスに投げかけられた言葉で、

「ハッ!」と気づくのだ。




自分と愛するドリーは、抹殺されるかもしれない………。




そんな事はさせてなるものか!!




『ジョーズ』の反乱がはじまった!


ボンドに味方して暴れまくり、そして見事、ボンドはドラックスを撃退し、宇宙に葬り去る。



そしてジョーズとドリーも無事に救助されたのだった。



悪役から改心し、最後まで死ぬ事もなく、ついに恋人を手に入れた『ジョーズ』。



後にも先にも、007の長い歴史の中で、こんな厚待遇で終わった悪役もいないだろう。


こんな『ジョーズ』の活躍に、007は興業収入もうなぎ登りになり、見事、1979年度、本国1位に返り咲いたのでありました。


星☆☆☆☆。

あ~そうそう、ボンドガールの事を書くの忘れていた。


このボンドガールで、CIAのスパイ、グッドヘッドを演じたロイス・チャイルズであるが、自分としては、あまり好みではない。



前年に、アガサ・クリスティーの『ナイル殺人事件』で演じた、鼻持ちならない傲慢な財産家、リネットのイメージが、あまりにも強くて、ちょっとボンドガールとしては、どうなのかなぁ~と思ってしまったのだ。

(このリネットが、誰彼ケンカをふっかける嫌われ者の役だったので)




ボンドガールを演じたタイミングが、少々悪かったとしか言い様がない。


おそまつ。(実は仲良しのお二人)