前作の『黄金銃を持つ男』の不振に、アメリカの映画配給会社で大株主のUA(ユナイテッド・アーテスツ)は、
「ロジャー・ムーアをすぐに降ろせ!」
と要求してきた。
プロデューサー、ブロッコリは頭を抱えた。
問題はそれだけじゃない。
それまで、一緒に共同プロデューサーとしてやってきたサルツマンが、勝手に持ち株をUAに売って、離脱してしまったのだ。
今や、巨大な株主となったUAの力は絶大だ。
必死に説得し、交渉を続けたブロッコリ。
次は「もう、失敗はできない!」とギリギリのところまで追いつめられていたのだ。
脚本を練りに練って、配役や演出、美術、アクションなどなど……細かいところまで徹底的に気を配った。
それに費やした期間3年……。
そうして、やっと完成した『私を愛したスパイ』なのである。(当然、小説とは全く違う内容となっております、ハイ!)
消えたイギリスとソ連の原子力潜水艦の行方を追うため、それぞれの国のスパイ、『007=ジェームス・ボンド』と『トリプルX=女スパイ、アマソワ少佐』が派遣された。
はじめは、一歩も譲らず、お互いに出し抜こうと競い会う二人。
だが、今回に限り、イギリスとソ連は、ともに協力しましょうって事になる。
(まぁ、国の命令とあれば従うしかないか~)
ボンドとアマソワは共同戦線をはりながら、共通の敵ストロンバーグに向かっていく事になる。
敵の襲撃に次々と遭う二人。
そんな中、徐々に、二人は惹かれあっていく。
だが、しばらくすると、アマソワの恋人だったスパイを殺したのが、ボンドだったという事実を知ってしまった。
怨みと任務、そして意識しはじめたジェームスへの想いで、葛藤するアマソワ。
「だが、取りあえずは任務が先だ!」
プロのスパイとしての意地がアマソワをつき動かした。
そして、
「この任務が終わったら、貴方を殺すわ……」
ジェームス・ボンドに、真っ向から宣戦布告するアマソワなのだった……。
って、こんな感じで進んでいく映画のストーリー。(でも、常に復讐心でメラメラって感じにはならないので、どうぞご安心を)
この映画は大ヒットした!
大ヒットして、前回の2倍以上の興業収入をたたき出して、あれだけうるさかったUAの口を黙らせたのだ。(やったぜ!)
ロジャー・ムーアのボンドも、敵だろうと密告者だろうと、あくまでも女性には優しくエスコート。
隙あらば一線までも、交えてしまう女好きのボンド。
そして戦いや逃走中でも、敵には会釈すらして、笑みを浮かべる余裕のボンド。
この映画で、決定的にロジャー・ムーアの演じるボンドの方向性が決まった気がするのである。
他の出演者たちも超魅力的だ。
●トリプルX=アマソワ少佐……バーバラ・バック。
全身からお色気が、溢れかえっているような女優。
大きな瞳と厚い唇、それに抜群のスタイル。
こんなに、全身から色気を発散させている人も珍しい。
この人が笑うと、尚更、イヤらしさが全開!
(カモ~ン、いらっしゃい坊や……)なんて幻聴まで聞こえてくるようだ。(自分だけか?)
セクシー女優も真っ青、すすんで白旗をあげるだろう。
エレガントなドレスや潜入服。
シャワーシーンなどなど…。
とにかくサービス満点。
●ストロンバーグ……クルト・ユルゲンス。
『眼には眼を』で紹介したユルゲンスが、ここでは、巨大な海底要塞を操る、冷酷なストロンバーグを演じている。
『眼には眼を』でも老けているなぁ~と感じたが、ここでは更に白髪化し、前頭部も、かなり後退した姿に。
ただ、揉み上げだけは、最後の意地とばかりに伸ばしている。(勝新太郎のように)
●ジョーズ……リチャード・キール。
そして、そして、この『ジョーズ』である!!
この映画での一番のインパクトは、この『ジョーズ』に他ならない!
こんな人物を、どうやって探しだしたんだろう?
2m18cmの超巨大な生物。(『生物』って表現が一番かも)
この巨体に、何でも噛み砕く鋭利な《鋼鉄の義歯》を装備していて、化け物なみの腕力と不死身の生命力で、ジェームス・ボンドに襲いかかる。
セリフは一切なし。(それが、また不気味さを増す)
でも雇い主のストロンバーグには、とっても従順。
従順すぎるジョーズは、何度でもボンドとアマソワを狙ってくる。
ボンドとアマソワが逃走するため、車に乗り込むと、追いついたジョーズは、あっという間に車を止めて車の天井を突き破ってニッコリ。(ゲゲェー!)
そして紙でも裂くように、車の外装をベリベリ剥いでいく。
車をバックさせて、ジョーズごと壁に激突させて、何とか逃げ去る二人。
でも『ジョーズ』は死なない。ピンピンしている。
(Oh!ジョーズよ!)
今度は、列車の旅をしているアマソワとボンドを襲う。
ボンドを、軽々、片手で持ち上げて、列車の天井に押し付けるジョーズ。(ジョーズに不可能はない)
ボンドの首にまわした手は、まるでボンドの顔すら包めるくらいの大きさなのだ。
何とか近くの電気スタンドを、ジョーズの口に突っ込み、ビリビリさせて、難を逃れたボンド。
ボンドの蹴りで、列車の窓から投げ出され、線路脇から転がり落ちるジョーズ。
でも『ジョーズ』は死なない。埃を払ってピンピンしている。
(Oh!No!ジョーズよ!)
こんなのが、何度か繰り返され、最後、海底要塞の沈没と共にジョーズも死んだかにみえた。
でも海面に浮上してきた『ジョーズ』は、またもや生きている。
ピンピンしている。
あ、『ジョーズ』が泳ぎだしたぞ!
『ジョーズ』よ、君はどこへ向かうのだ?!
あ~そうか、次の映画、『ムーンレイカー』に旅立つのですね。
サヨナラ、『ジョーズ』よ、また会う日まで、サヨ~ナラ~!
だいぶ、おふざけが過ぎたかな?
映画はもちろん、星☆☆☆☆☆です。
※読んでみると、『ジョーズ』に割く内容の大きい事。ボンドの潜水カーも魅力なのに、やはり自分の中では、『ジョーズ』なのだ。許してくだされ。