1981年 アメリカ。
『フランク』(ジェームズ・カーン)は、中古車販売業を営んでいるが、裏の顔は金庫破りをしている大泥棒。
仲間の『バリー』(ジェームズ・ベルーシ)、『グロスマン』(ネイサン・デイビス)と綿密な計画をたてると、仕事に向かった。
そして、今日も分厚い金庫を、バーナーやドリルを使って、簡単にこじ開けると、無事に仕事を終えた。
金庫の中身は莫大な価値のダイヤモンド。
次の日、喫茶店で落ち合った仲介人『ギャグス』は、盗み出したその原物を見て、「こりゃ、凄い代物だ……」と、感嘆する。
「この価値は56万ドル、俺はその内の18万5000ドルを頂く」
交渉するフランクに、仲介人は、「なぁ、一度、ダイヤの売り主と会わないか?、オタクらの腕をかっているんだが……」と誘うが、フランクは、ほとんど聞いてない。
フランクの目は、喫茶店の奥にいるウェイトレスの『ジェシー』(チューズデイ・ウェルド)を追っているのだ。
後日、ダイヤの分け前を受け取る約束をすると、早々と別れる。
実は内心、こんな生活にも、ホトホト嫌気がさしていたフランク。
ジェシーと結婚して、普通の穏やかな生活を夢見ているのだ。
今の今まで、そんな穏やかな暮らしには、全く縁がなかった人生。
20歳の時に、刑務所に入り刑期は11年くらった。
その刑務所で知り合った大泥棒『オクラ』(ウイリー・ネルソン)にフランクは盗みのイロハを一から教わったのだ。
義理堅いフランクは、出所して、今の暮らしを送るようになってからも、チョクチョク、オクラに会いに面会に行っていた。
……そして、今日も。
しばらくは、惚れた女ジェシーの事やシャバの暮らしを愉快に話すフランク。
だが、オクラの顔は暗い。
「頼みがある、フランク。ここを出たいんだ!」
「後、たった10ヶ月で釈放じゃないか?」
「わしは狭心症で後、10ヶ月も持たないらしい。ここで死にたくない……」
オクラの面会が終わると、フランクは考えはじめた。
オクラを早期に出所させるには『金』がいる。
惚れた女ジェシーと結婚して幸せに暮らすためにも『金』がいる。
次の仕事が最後の大勝負だ!
その夜、仲介人が紹介した犯罪組織の大ボス、『レオ』(ロバート・プロスキー)と会ったフランクは、ダイヤモンドを売り渡した分け前の代金を受け取った。
そのまま立ち去ろうとするフランクに、レオが声をかける。
「どうだ?わしの為に働いてみないか?」と持ちかけたのだ。
「なぜ?、あんたの為に働かなきゃならん。俺は一人だ」
「わしが全てを手配するし、わしらが組めば大金が転がりこむのは確実だからだ」
迷うフランクに、レオの提示する条件は、厚待遇なものばかり。
その説得は、悪魔のように、そして不気味なほどに優しい。
そんなレオの説得にフランクも、とうとう、「また、電話する」と答えてしまうのだった………。
原題は『thief』(泥棒、盗人)。
ストレートすぎるタイトルに、日本では、こんなに長い邦題名である。(一時期、こんなハチャメチャな邦題名が暗躍していた時代がございました。)
この映画は、とんだ拾い物でした。
面白かった。
以前、このblogで挙げた、『キラー・エリート (1975年)』で、ジェームズ・カーンの株は、自分の中ではガタ落ちだったのが、この映画で、グーン!と、急上昇したくらいだ。
それにしても、ジェイソン・ステイサムの『バンク・ジョブ』といい、泥棒をする人間は、誰も彼もが、中古車販売業をしないといけないのかねぇ~(笑)。
こんな大ボス、レオの誘いにのるフランクだったが、案の定、こんな上手い話があるわけがなく………当然、騙される。(観ている人、皆がそう思うだろうな)
郊外の立派な家に、ジェシーと子供(ジェシーが子供が産めないので、レオが養子を連れてきた)との穏やかな生活。
仕事を成功させたフランク達にレオから、封筒に入れた成功報酬の現金が、ポン!と渡される。
数えるフランクは、たちまち怪訝な顔。
「83万ドルあるはずなのに、たった9万ドルしか入ってないぞ!」
そんなフランクの言葉に、レオは「残りは我々の共同経営のショッピングセンターへの投資だ」と言う。
「ふざけるな!」
最後の仕事と思っていたフランクに、レオは「また、6週間後に別の仕事がある」というだけだ。
レオはこれから先も、ずっと、永遠にフランクを利用するつもりだったのだ。(でしょうね。悪のボスなら、こんな腕利きの金庫破りを簡単に手放すわけがない)
交渉決裂。
あくまで逆らうフランク達には、当然、組織の『仕置き』が待っていた。
仲間のバリーが殺されて、フランクも組織の連中たちから壮絶なリンチに合う。(ボッコボコ)
倒れこんだ動けないフランクに、上目線でレオが言う。
「このクソ野郎が!お前には、車もあれば家も女房も子供もいる。守るべきものばかりだ。女房を黒人にレイプさせようか?俺が命じればなんだって出来るんだ!お前の首根っこは俺が押さえているんだから!」
何も二の句がつげないフランクに、レオは畳み込むように続ける。
「お前には死ぬまで『わし』の為に働いてもらう!分かったな?!」
ああ、恐ろしや、悪のボス、レオ様。(本当に憎らしい役がお上手なロバート・プロスキー)
上手い話には、必ず裏があるもの。
はてさて、『フランク』(ジェームズ・カーン)が、この後、どうでるのか……?!
監督のマイケル・マンは、この映画の後に『ラスト・オブ・モヒカン』、『ヒート』、『コラテラル』と次々ヒット作を放つ。
これはマイケル・マン監督の映画デビュー作。
初期の佳作として、星☆☆☆としておく。