1956年 アメリカ。
遥々、ニューヨークからメキシコまで、チャーター機でやってきた『ケイティ・コナーズ』(ジェーン・グリア)。
降り立った町は、アカプルコの漁村の近くだった。
(こんなところに……あの『マイク・ラティマー』がいるのかしら……?)
ニューヨークの『サイト誌』で女性記者をしているケイティは、上司の命令で、有名な冒険小説家ラティマーを探しにやってきたのだ。
それに、ケイティ自身がラティマーの小説の愛読者だったのも、それを後押しした。
寂れたホテルにチェックインすると、ケイティは、ホテルマンに聞いた。
「ここにラティマーさんはいらっしゃるかしら?」
「ええ、住んでますよ。この時間なら釣りに行ってるはずです。」
波止場に行くと、大きなカジキマグロを釣り上げて、作家とは思えないほど日焼けして、薄汚れた格好の『ラティマー』(リチャード・ウィドマーク)が、ご機嫌で帰ってきた。
それをケイティは、そっと写真におさめた。(盗撮だ)
道すがら、すれ違うケイティの姿を見たラティマーは、およそ場違いなケイティに驚いた様子だったが、そのままホテルへと帰っていった。
そして、ホテルでの夕食時間。
異国のスペイン語に四苦八苦して、料理の注文しているケイティに、ラティマーが、向こうから近づいてきて流暢なスペイン語で助け船をだしてきた。
「やぁ、あなたのような方が、どうしてこんな所へ?」
テーブルに、ラティマーの著書を置いているのを見つけると、
「この本は最悪だ」と自身の本を酷評した。
「そうかしら?素晴らしいわ。あたくしは好きです」
ラティマーの経歴や小説を本人を前にして絶賛するケイティ。
そこへ、「ラティマーさん、伝言です。明日の朝も釣りに行きますか?」
「あなたがラティマーさん?」空々しく驚くふりをするケイティ。
「あたくしをからかって、さぞ楽しかったでしょうね?」
「何を言ってるんだ、俺の事を最初から知っていたくせに」(ケイティの芝居もバレバレ。)
明日も釣りに行くために船を出す事を、ホテルマンに言うラティマー。
「あなたも、明日、俺と釣りに行くんだ!」
「あたくしが?!」
強引なラティマーは、ケイティを海に引っ張っていった。
何もかも、ラティマーのペースに振り回されるケイティ。
だが、そんな子供のようにはしゃぐラティマーに、いつしかケイティは惹かれていく……。
ラティマーは、前妻が親友と不倫して裏切られたショックを、ずっと引きずっていたのだ。
筆を進ませようにも、全く小説を完成することができない。
そんな苦悩するラティマーの様子を見て、ケイティは、ここを離れる決心をする。
(あたしには出来ない……上司の命令とはいえ、これ以上、マイクに小説を書かせるよう無理強いする事は……)
そして、旅立ちの時。
「どうしても行くのか?なぜなんだ?!」
ラティマーもケイティを気に入りはじめ、離れがたい気持ちなのか……
「俺がメキシコ・シティまで送っていく」と自ら名乗り出てくれた。
チャーター機に乗り込む二人。
二人の飛行機は、上空に浮かびあがり、燦々と降り注ぐ太陽をうけて、順調に進んでいた。
真下には鬱蒼した密林のジャングルが見えて、それは、どこまでも続いている。
その時!突然、操縦席の計器が狂いはじめた。(原因はケイティの手帳の磁石である)
「マイク、あそこ!!」ケイティが指差す場所は、ちょうど密林が途切れていて、何とかチャーター機が不時着出来そうだ。
「つかまってろ!」
飛行機は何とか着地し、スリップしながらも雑木林に突っ込んで、そして止まった。
気を失っていたのか……
しばらくしてケイティは目が覚めた。隣では頭をぶつけたマイクが、まだ失神している。
(ここはどこなの………?、でも何とか助かったのね………)
安堵するケイティ。
だが、ここからがマイクとケイティ、二人の地獄のはじまりだった……。
『六番目の男』に続くリチャード・ウィドマークの映画である。
この1956年には、『六番目の男』、『太陽に向かって走れ』、『襲われた幌馬車』と3本立て続けに主演しているリチャード・ウィドマーク。
その2本目を今回、偶然観る事が叶った。
これはハラハラ、ドキドキの逃亡ミステリーとしては、隠れた名作であり、大傑作である。
二人が降り立った密林には、ナチの残党が、こっそり隠れ住んでいたのだ。
口封じで殺されそうになっちゃう二人は、すんでのところで脱出。
密林の広大なジャングルの中を逃げ回りながら、右往左往するのである。
果たして二人は無事に脱出して、生還できるのか?………
とにかくリチャード・ウィドマークが超カッコイイねぇ~!
何なんだろう……この当時のリチャード・ウィドマークの野生的で精悍な様子は。
男から見ても魅力的だし、それが映画を観る人の気持ちを、グイグイ引っ張っていく。
今回の相手役ジェーン・グリアさんも、美しいことよ!
この時代の女優さんの《気品さ》は、別格。
現代で、このほどの《気品さ》や《気高さ》を身につけている女優さんを、最近は全く目にしなくなった。
このジャングルの撮影は、肉体的にも精神的にも相当大変だったみたいで(高熱にみまわれたり)、この映画以降は完全に休業状態に入ってしまったらしいが。(そりゃ、そうだろうな……水浸しや泥まみれ、埃まみれで、並の女優なら、とっとと逃げ出すよ。こんな上品な女優さんがよく立派に務めあげたよ。)
それでも、その苦労のかいがあって、スタジオじゃない、実際の樹海のような密林でのロケは、も~、迫力満点である。
この映画は偶然、ネットでお見かけして観る事が叶ったのだが、出来れば画像の良い、DVDかBlu-rayでじっくり観てみたいものだ。(メーカー様お願いします)
星☆☆☆☆☆である。
埋もれた傑作は、まだまだ、あるのであ~る。
※後日、なんと!DVD化されました。
クリアーな画面は超嬉しい!
ありがとうございま~す!