遊戯施設『オーシャン・ビュー・パーク』は、大勢の人で賑わっていた。
メリーゴーランド、射的、…あらゆる娯楽が人々を楽しませ、中でも、最大の呼び物は、ジェット・コースター。
営業は夜間までも続いていたが、人が途切れる事はない。
そんな中で、一人の作業員姿の男が、コースターの点検にあたっている。
ここに40年勤続している清掃の老人は、それを見かけたが、いつもの事で、不審にも思わなかった。
やがて、若い男女が乗り込み、興奮とスリルを求めてコースターは、レールの上をゆっくり上昇していく。
そして、頂上までいくと、一気に加速して下り走り出した。
「キャー!」
「ワァー!」興奮で嬉々とした叫び声をあげる乗客たち。
コースターが、右に左にうねりながら進んでいく。
そして、はるか先には、さっきの作業員が点検したレールが見えてくる。
そのレールの下に仕掛けられた『何か』が、いきなり爆発した。
レールは片方が、異様な形で、折れ曲がり、ひしゃげている。
そこへコースターが加速を続けながら迫ってくる。
そして曲がったレールに乗り上げるとコースターは、当然のように空中に投げ出され、人々が集まる広場に、勢いよく落下した。
「キャー!!キャー!!」
先程の興奮とは違う叫び声が、辺りを駆けめぐる。
投げ出された人々は、鮮血にそまり、バラバラになったコースターは、あたりを炎上させて、大惨事のありさま。
大勢の死人や怪我人、逃げまどう人々でパニック。
そう、まるで、あたりは一瞬で、地獄絵図と化したのだった。
それと同時刻、ローラー・コースターの検査官『ハリー』(ジョージ・シーガル)は禁煙治療に来ていた。
タバコを吸えば、強い電流が流れる仕組みの治療である。(痛みによる条件反射で禁煙とは……でも、これが当時としては最先端の治療なのだ)
まるで《パブロフの犬》のような気分になりかけていた頃、ハリーあてに電話がかかってきた。
(誰だ?こんな所まで…)
「すぐに『オーシャン・ビュー』に行ってくれ!大変な事になった!!」
「何事です?」
「ローラー・コースターが脱線事故を起こしたんだ!!」ダヴェンポートは、そう言うと電話をきった。
(そんな……3ヶ月前に検査したばかりだぞ…)
ハリーが、車をとばして、急いで現場にかけつけると、あたりは大勢の死傷者たちを担架で運んでいく救急車や警察で騒然としていたのだった……。
ジェット・コースターを絡めたパニック・サスペンス。
さぞや、ハラハラ、ドキドキさせてくれるのだ、と思いきや……
この後、爆弾騒ぎは、他の遊戯施設でも起きて、関係者たちを集めた席に犯人から、要求のテープが届く。
「爆破されたくなければ100万ドル払え!」と。
そこに居合わせたハリー。
強迫された関係者の前で、
「この犯人は一筋縄じゃいかない!」とか「頭がいい!」なんて褒めちぎるのだから、それを盗聴していた犯人が、気を良くして、「金の受け渡し人は『ハリー』にしてくれ!」と直々のご指名をうける。
そうして、FBIの監視下の下、指定された遊戯施設の中で、金を詰めこんだアタッシュケースを持ったハリーは、犯人の指示で、あちこち駆けずりまわる事になるのである。
こんな風に書くと、「さぞやハラハラした展開が待ち構えているんだ!」
なんて、おおいに期待してしまうのだが、……それが全然、そうならないのが、この映画の珍しいところ。
この映画の失敗は、脚本やら演出もそうだが、主演のジョージ・シーガルによるところが、一番大きいと思う。
この、ジョージ・シーガルという人が、どこまでも、根がスットボケ~というようなヒョウヒョウとした雰囲気を常に醸し出すのだ。
コメディーなら、この雰囲気も充分いいんでしょうけど、こんな緊張感を求められるサスペンスにはいかがなものか?
何気に、せっかく、この映画は名優たちがそろっているのに……。
犯人役、「ジョニーは戦場へ行った」のティモシー・ボトムズ。
だからこそ、この出来には、「う~ん、もうちょっと何とかなったんじゃないか」と残念でならない。
犯人にまんまと、やりこまれてアタッシュケースのお金を持ち去られた『ハリー』(ジョージ・シーガル)に、厳しい顔をしたFBI捜査官『ホイト』(リチャード・ウィドマーク)が言う。
「何、ニヤニヤしてんだ!!」、と。
(本当に観ているこっちも言いたい! 全然悪びれても反省もしていない顔つきなのだから、後ろから蹴りとばしてやりたい。リチャード・ウィドマークが、イライラする気持ちも分かるよ)
話の中に出てくるハリーの家庭事情も、まったく、いらないエピソードだった。
(離婚して、それぞれ新しいパートナーを見つけてるんだけど、一人娘と月に何度か会う協定をしている)
このハリーの前妻や娘なんかも、最後まで何の話にも絡んでこない、無駄な登場人物。
このハリーの前妻や娘なんかも、最後まで何の話にも絡んでこない、無駄な登場人物。
普通なら、映画のクライマックスに、追いつめられた犯人が、偶然、遊園地に現れたハリーの娘を人質にするんじゃないか?………くらいの事を考えると思うのだが、そんな事も、まるで起きない。
現場の遊園地から、「じゃあね!」と言って、さっさと帰っていく娘。(なんじゃ、そりゃ?!、拍子抜けである)
現場の遊園地から、「じゃあね!」と言って、さっさと帰っていく娘。(なんじゃ、そりゃ?!、拍子抜けである)
このジョージ・シーガルの髭も似合ってるのか?(なんだか最後まで喜劇役者に見えてしまった)
映画は星☆☆です。
※ただ、GW中、どこにも行けない人は、この映画を観れば、ジェット・コースターに乗っている雰囲気だけは味わえると思います。
この映画の役割って、まさにそれ!
遊園地の雰囲気に浸りたい方には、最適かもしれないかも、と少しのフォローをいれておきましょうかね。