町から町へ……。
ポンコツ車に乗りながら、旅する一人の中年男、そして美女2人。
女子プロレスラーのマネージメントを請け負う『ハリー』(ピーター・フォーク)。
『カリフォルニア・ドールズ』のコンビ名でタッグを組む、ブラウンヘアーの『アイリス』(ヴィッキー・フレデリック)とブロンドの『モリー』(ローレン・ランドン)。
3人の夢は大きく『世界チャンピオン』になってスターになる事だ!
今日もリングに上がると、日本女子レスラー相手に火花を散らす。
試合が終わった後、感心して観ていた日本人のプロモーターから名刺を渡されるハリー。
「あの子たちは日本に来たら、きっとスターになる!その時は連絡をどうぞ!」
ハリーは、二人を誉められルンルン気分。
ご機嫌で、今日の日雇いプロレスのギャラを貰いに、興行師のエディ・シスコ(バート・ヤング)の元を訪ねた。
用心棒に見守られながら、応接室では、エディが出張の美容師を呼んで髭剃り中だ。
「ギャラはそこにある」
目をつむりながら、気持ちよさそうに髭をあてられているエディは、ハリーの顔も見ずに呟いた。
ハリーが机の金を数えると20ドル足りない。
「タオル代を貰ったぜ、それを持って、とっとと出ていきな!」
エディが言う。
「あの子たちにとっては、20ドルは大金なんだ!ちゃんと払うものは払ってくれ!」
ハリーはカンカンだ。
だが、用心棒がハリーの前に立ち塞がった。悪党エディは続けて言う。
「俺はこの辺りの興行すべて、取り仕切ってるんだぜ!それで満足して、とっとと失せるんだな!」
ハリーは追い出された。
駐車場にハリーが行くと、ポンコツ車の前では、アイリスとモリーが待っていた。
「どうだった?ちゃんとギャラは貰えたの?ハリー?」
ハリーは二人の言葉に答えず、ポンコツ車からバットを取り出すと、辺りを見渡しながら、エディの車を探しだした。
そして、おもいっきりバットを振り上げると、エディの車をボッコボッコになるまで殴り続けた。
「何するのよ?!、ハリー!!」
アイリスとモリーが驚くが、ハリーは、今ので気が済んだのか、平然とした顔だ。
「乗れ!次の町に行くぞ!」
3人の旅は続く………。
ロバート・アルドリッチ監督の遺作。
それまで、ドロドロの愛憎劇「何がジェーンに起こったか?」とか、男の熱い戦い「北国の帝王」、「ロンゲスト・ヤード」を得意としてきたアルドリッチが、最後に選んで録ったのが、この「カリフォルニア・ドールズ」だったのに驚いた。
女子プロレスラーの世界とはいえ、ハートウォーミングな王道の青春映画とは……。
今では、すっかりプロレス人気も下降して廃れてしまったが、一時期は、日本でも熱狂的な人気で、試合という試合はゴールデンタイムで放送されていたものだ。(時代なのか……その証拠に、この映画でも日本人レスラー役で、ミミ萩原が出演していたりする。)
でも、私、この映画をプロレス映画とも、王道の青春映画とも考えず、別の事を考えながら観ておりました。
このハリー役のピーター・フォークは、役得だなぁ~、と思いながら……。
本当にモテること、モテること!(うらやまし~)
何でこんな中年がモテるの?
いったい秘密は何だろう?、と考えながら……。
旅先では、ゆきずりの女との一晩過ごしたり。
モーテルで、ハリー(ピーター・フォーク)の部屋をアイリスが訪ねると、バスルームからは、あっけらかんと金髪のお姉ちゃんが、素っ裸で出てくる始末。(「あ~ら、お邪魔さま」とからかいながら出ていくアイリス。)
でも、そんなアイリスの心は、とても複雑だ。
ハリーが、無理に決めてきた泥レスリングの試合に「嫌だ!嫌だ!」と言いながらも、相方のモリーと出演したりする。
泥にまみれながら、取っ組み合いをして、上に着ているものは破けて、裂けてしまう。
でも、試合が終わった後、モーテルに帰りつくと、さっきの恥っさらしの光景が頭の中から離れない。
アイリスはハリーに当たり散らす。
「お客は皆、笑っていたわ!なんでこんな仕事をさせるのよ!みんな、みんな、あんたのせいよ!!男としてもマネージャーとしても最低!あんたなんて男のクズよ!クズ!クズ!クズ!」
泣きながらハリーに拳をあげ続けるアイリスに、ハリーの1発の平手うち(バチンッ!)
そして、ポカ~ンとしているアイリスを「わかったから……わかったから…」と言いながら、アイリスをおもいっきり、優しく抱き寄せて、キスをする。
アイリスの癇癪は一気に崩壊し、一瞬でハリーへの愛しさに変わり、涙、涙にくれながら、ハリーにしがみつくと、
「ハリー、昔からあんたの事が好きだったのよ!」
っとなるわけなのだ。(これを役得と言わず何と言うのか)
この女性を、その気にさせる手練手管は、どこかの女ったらしか、ジゴロ並みの凄技ある。
だからこそ、アイリスやらモリーも、この冴えない中年ハリーに文句を言いながらも付いていくのだ、と勝手に合点してしまった。
プロレスよりも、こんなシーンに、何だか、いちいち感心しながら、「フム、フム、男として勉強になるなぁ~」と思いながら観てしまった。
興業師のエディが言うのも分かる気がする。
「お前、若い女、丸め込むのは得意だろ!」
「このスケコマシ野郎が!」とか(いちいち納得である)
なんだか、自分の映画の見方が、すごく片寄っているような気もするが、…………それでも、中年の星ハリー(ピーター・フォーク)に女性の扱い方の指南術を学ぶのなら、この映画は最適かもしれない、と思うのである。
星☆☆☆
(気がつけば変な映画評である。あまり参考にならないので、初めて観る方はニュートラルな気持ちで観てくださいね。)