1977年~1985年。〈全25作〉
北大路欣也版や西郷輝彦版もあるが、ピンとこない。
やはり《明智小五郎》=《天知茂》なのだ。
「へ」の字の眉が二つ並び、その眉間の下に、クッキリと浮かび上がる横シワ(縦じゃない)が、この人の特徴。
そうして、鋭い三白眼が、こちら側を射ぬくように見つめてくる。
低音ボイスと相まって、知的、クールさを一層漂わせている。
昔の人って、何故?こんな雰囲気を自然に醸し出せるんだろう?
天知茂は54歳で亡くなった。
自分も50をとっくに過ぎたのに、ダンディーさや、クールさの欠片さえ身に付かないのは何故なんだ~!
育った時代の違いなのか?
それとも教養や博識の無さ?(それなら分からない事はない)
とにかく生きていらしたら、本人に会って、1度ご教授願いたかった。
話が、最初から脱線しっぱなしだが、この『江戸川乱歩の美女シリーズ』も夢中になって観てました。
天知茂の明智小五郎は勿論だが、助手の文代役のボーイッシュな五十嵐めぐみ、小林少年役の柏原貴。
3人のバランスも釣り合いがとれていて、とても良かった気がする。(第1作目だけ大和田獏大が小林少年を演じている。)
この3人のトリオは好評だったんだろうか? 19作まで続いた。
その後、文代と小林少年が変わってしまったのは、ちと残念。
これ以降では、高見知佳や藤吉久美子、小野田真之などが演じたが、なんだか、あまりパッとしなくて薄い印象だ。(やけに、高見知佳が天知茂に向かって《禁煙!》を強要してたのは覚えてるけど)
そして、忘れちゃならないのが、浪越警部役の荒井注。
明智の助けを借りに探偵事務所にやって来ては、とぼけた味をみせてくれる。
荒井注 …… ドリフの全盛期を支えた人。
ドリフターズ時代の荒井注を覚えているのも、自分の世代でギリギリかもしれない。
荒井注が脱退したおかげで、志村けんがドリフに入れたわけで、それがなければこの後、どんな風にお笑いの歴史が変わっていたのやら …… 。
とにかく荒井注は面白かった!
志村けんみたいに大袈裟に振る舞わなくても、何かボソッと「何だ、バカヤロー!」と毒ついたりするだけで、場内から爆笑が起きていた。
姿、形、身ぶり、口調、もう存在自体がオカシイのだ。
こんな人物をドリフを辞めたからといってテレビ界が干すはずがない。
美女シリーズにやって来た荒井注は、ニヒルな天知茂と対比して、ヒョウヒョウとした警部を喜んで演じていた。
登場は2作目からだったが、天知茂とのコンビで25作までを最後まで好演した。
そして、そして、美女シリーズといえば、井上梅次監督を語らないわけにはいかない。
この人が、この美女シリーズのほとんどの骨格をつくったと言ってもいい。
脚本には、明智が最後に謎解きを語るだけだったのを、「それだけじゃ、ツマラナイ」と変装を解くシーンをつけ加えて考えたのは、この人なのだ。
かつらをとり、揉み上げの毛をはずし、口髭をとる。
ゴムマスクをゆっくりと剥がしていけば、そこには明智の顔が …… 。
そして、変装の衣装を、一瞬で《パッ!》と取り去る。
ジャジャアーーーン!
一同唖然の中、颯爽と『明智小五郎』(天知茂)登場!!
井上梅次監督……「どうやったら視聴者を釘付けにできるか?、楽しませる事ができるか?」そればかりを考えた人だった。
必ず、番組中盤には視聴者を飽きさせないように、お色気シーンを入れてくれる。
女優たちの入浴シーンやヌードが、話の本筋に関係ないといえばそれまでだけど、偶然チャンネルを変えた視聴者(主に男性ね)は、「おおっ!」と、一瞬で飛びつき目が離せなくなる。
男どものスケベ心を満足させといて、同時にハラハラドキドキの謎に上手く導いて行くやり方は、やはり職人中の職人技。
これぞ、名監督といえるだろう。
この美女シリーズ、どれもこれも面白いのだが、私が印象に残っているのは以下の通り。
●第2作 「浴室の美女」……『魔術師』と呼ばれる西村晃(二代目水戸黄門さま)が、いくつも並べられた仮面と一緒に壁から顔をだす姿は、超不気味。鳥肌ものである。
●第9作 「赤いさそりの美女」……興奮すると顔面に、赤いさそりの痣が浮かび上がる女の悲劇。(どんな体質なんだ)
その痣を見て逃げ出す男もいれば、自分も同じように、自ら、顔にさそりの入れ墨をいれる男もいる。(人それぞれ)
●第10作 「大時計の美女」……謎の美女、結城しのぶが、とにかくお綺麗✨。
●第12作 「エマニエルの美女」……妖艶な夏樹陽子が、男をとっかえ、ひっかえ次から次に濃厚なベッドシーンを演じてくれる。
元フォーリーブスの若い江木俊夫との、お風呂場でのエロシーンは必見!
こんな女なれど、只のカマキリに怯えて、騒ぐ様子はちょっと滑稽。
明智を縛り上げてSMチックにいたぶるシーンもあったりして、サービス満点である。
●第17作 「天国と地獄の美女」…… 美女シリーズ最長の150分。
これはお正月特番として1月2日放送。(新年から、こんなのが放送されていたのだ。なんて良い時代だ)
叶和貴子が惜しげもなくヌードになったりして、こりゃ「新年早々、縁起の良いモノを拝ませてもらいましたー!」と大感謝。
伊東四朗が、夢のパノラマ島建設のために、そっくりな大富豪にすり変わるため、片目を失明させるシーンなどは背筋も凍るほど怖い。
おそらく、これが美女シリーズの集大成になるんじゃないだろうか。
と、まあ、こんな具合である。(他にも盛り沢山)
興味ある方は、どうぞご覧ください。
ただし中毒性あり。
1度この世界にハマったあなたは、きっと、もう逃れられないはずである。……フッ、フッ、フッ(笑)
星☆☆☆☆☆。
※昭和のエログロドラマ 、 やっぱり面白いよね。