2019年4月14日日曜日

映画 「アルカディア」

2017年 アメリカ。






この映画自体、だいぶ前に観ていて、いざ、ここに書き出そうとしても、何から書いてよいのやら……映画と同じでつかみどころのない実態というか。



SFスリラーなんて単純なくくりにしてよいのか、ん~難しさを感じていて、ずっと後回しにしていた感がある。

それでも、時間が経てば経つほど、ムクムクと印象が、たまに甦ってきて、「あ~これは、ただ事ではない映画だったんだ」と思わせてくる。


そんな不思議な映画である。





10年前にカルト教団を脱け出した兄弟が、再び戻ってきた「アルカディア」で体験する、異様で不気味な非日常の物語。



ホラー的要素もたっぷりなのだが、でも、それだけならば、こんな風に余韻を残して、後々まで、惹き付けられはしないだろう。



色々考えてみた。


結局、自分を惹き付けたのは、主演のジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドの仲の良い兄弟関係なのだ、と思った。



弟アーロン・スミス(アーロン・ムーアヘッド)は、大人になってもどこか幼児性が抜けきれない、子供子供した大人。

子供時代を、現実から隔離されたカルト教団で過ごしていた事もあるが、買い物するためのお金で、教団から送られてきたテープを観るために、勝手にビデオカメラを買ってしまったりする。


兄の髪の毛をバリカンで切るときも、イタズラ心で、ズルンッ!と真ん中を刈り上げたりもする。




普通なら、そんな弟を怒鳴りつけるところだが……。



それでも腹をたてない兄のジャスティン・スミス(ジャスティン・ベンソン)。

弟の粗相を、「しょうがない奴だ」と、軽くサラーッと受け流し、笑うだけ。(なんて人間が、よくできているんだろう。短気な自分なら、とても我慢できないが)

清掃員をしながら、弟の面倒をみて、食費を使い果たした弟に腹もたてずに、カップ麺を、黙ってすする兄の悲哀よ。




そんな弟、里心から、「村に1度帰ってみたい!」と言い出した。

本当は気が進まない、兄のジャスティンだが、それで弟の気がすむならと、


「一晩だけだぞ」

と言い、二人は向かうことにするのだ。(なんて優しい兄貴なんだ)


車で向かいながら、ハシャギ唄う弟に、


「黙れ、お前の歌は聴きたくない」

なんて言いながらも、そんな弟の様子に兄も嬉しそうである。



村に向かう途中、道の曲がり角に、昔、子供の頃に作った記念碑があった。



記念碑の下には、母親と兄弟の似顔絵が額縁に入れられて、きちんと供えてある。


「母さん、ごめんな……あんまり来れなくて。あいつの事はちゃんと面倒みてるから……」

母親に、心配かけないように、ちゃんと報告する兄のジャスティン。(人間が出来すぎてる!)



村に着くと、温かく迎えられた兄弟は、2段ベッドのある部屋を与えられる。



夜、2段ベッドの上で、アーロンが下のジャスティンに話しかける。


「アンナは、きっと僕に気があるんだ」

「そうだな、きっとショタコンなんだろ。モノにしろよ、良い経験になる」


下でジャスティンが呟く。

「性交渉は…」

「寝ろ!」

「女との性交渉…」

「もう、寝ろ!」ジャスティン、ピシャリ!(おかしな兄弟だ)



空中から伸びているロープの綱引き?や死んだ人間が、何度も生き返りを繰り返す不思議な現象はあれど、やはり、この映画の魅力は、この兄弟につきるのだ。



ルイス・キャロルが書いた『不思議の国のアリス』に似ている。



仲の良い兄弟が、迷いこんだ『不思議な村アルカディア』。


弟想いのジャスティンは、アーロンを守りながら、無事に村を脱出できるのだろうか……。




主演の兄弟役を演じているジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドが、監督、脚本、撮影、制作まで行ってます。



実生活でも、本当に仲が良いのだろう。


こうして二人三脚で、これからも映画を作っていくのだろうか。



これ以前、2014年にも二人して、「モンスター 変身する美女」なんて映画を作っている。(こちらも、またマニアックそうなホラー、イカ人間のお話)


とにかく才能ある、仲の良い二人の映画は、しばらく我々を楽しませてくれるに違いない。


星☆☆☆☆