1971年 イタリア。
ダリオ・アルジェントの《動物シリーズの三部作》の最終作。
デビュー作『歓びの毒牙』は、原題名は『水晶の羽を持つ鳥』。
第2作目『わたしは目撃者』の原題名は、『九尾の猫』。
そして、この『4匹の蝿(ハエ)』で動物シリーズの三部作となるのである。
まぁ、単にタイトルに動物の名前が入っているだけで深い意味はないなのだが。(それがアルジェント映画)
人気バンドのドラマー、『ロベルト』(マイケル・ブランドン)は、最近ずっと奇妙な視線を感じていた。
町を歩いていても、車に乗っていても…
ずっと後をつけられている。
ある日、車のフロントミラーにその姿が映った。
黒いスーツ姿に黒いサングラスをかけた、中年の男の姿が。
夜半、いつものようにバンドの練習を終えたロベルト。
ロベルトが、無人の劇場に逃げ込めば、案の定、男も後をつけてやって来た。
振り向き様、ロベルトは、いきなり男に詰め寄った。男はビックリしたようだ。
「おい!どういうつもりなんだ?!毎日毎日俺をつけまわしやがって!!」
ロベルトの激しい剣幕に男は、後ずさりしながら、「何の事だ?変な言いがかりはやめてもらいたい」と言いながら逃げようとする。
それをロベルトが掴むと、男は懐から突然ナイフを取り出した。
二人は揉み合いになり、取り上げようとしたナイフは、男の胸に偶然つき刺さってしまう。
叫び声をあげながら、崩れ落ちる男。
呆然としているロベルトに、その時、まぶしいばかりのライトが照らし出された。
(誰なんだ?…… )
まぶしいライトに目を細めながら、ロベルトは、それを、なんとか確認しようとするのだが …
ライトは突然消されて、劇場は再び暗闇に包まれた。
ロベルトは説明しがたい、この突然の出来事に困惑した。
そして、夢中でこの劇場から逃げるように走り出していた。
だが、それからは無言電話や殺された男のパスポートが送りつけられてきたり、写真が送られてきたりと、次々と妙な脅迫を受け続ける。
ある夜、人の気配を感じたロベルトは、ニーナと寝ている寝室をそっと抜け出した。
(誰かがいる …… )
暗闇の中、手探りで進むロベルトの背後から、突然、首にロープがかけられた。
もがくロベルトに、「今は殺さない …… だが、いつでも殺せるんだぞ」と、あの仮面(ハットリくん)の人物が囁く。
気を失ったロベルト。しばらくして目が覚めると不審な人物は消え失せていた。
妻のニーナにも、もう黙っておけない。
事情を説明して、例の写真やパスポートを見せようとするとなくなっている。
(奴が持ち去ったのか?)
「ロベルト、私怖いわ」震えるニーナを抱きしめながら、ロベルトが次にとった行動とは ………
ここまでは、どこにでも見かけるような普通のサスペンス映画。
だが、これがダリオ・アルジェントの映画だと、全然、予想だにしないトンチンカンな展開となっていくから不思議である。(それゆえマニアックなフアンは大喜びするのだが)
《神様》いわく「私立探偵を雇え!」と、あっさり助言。
《神様》の所から帰ってくると、家のそばを男が歩いている。
郵便配達人を不審な人物と勘違いして棍棒で殴りかかるロベルト。
配達人は「ヒェー!お助けをー!」と大絶叫する。(なんじゃ、この展開は?どんどん変になっていくロベルトに、前半の恐怖さえ薄らいでゆく)
その間に殺されていく、お話にはまるで何の関係もない女性たち。(このシーン必要なのか?)
ロベルトが訪ねたのはホモの中年探偵だった。(よりによって)
ごついオッサンにウインクされるロベルト(もう、ここまでくるとコメディーとしか思えない)
こんなコメディー展開の連続の中で、妻のニーナは恐怖を感じて家を出ていく。(アホな日常なのに、これもなぜ?)
でも、ロベルトの家には、ニーナと入れ替わりに美人の従姉、黒髪の『ダリア』(フランシーヌ・ラセット)が慰めにやって来てくれた。
「まずは、お風呂に入って!、リラックスできるから」(えっ?なんで?)
ダリアに言われるままに、素っ裸で浴槽につかるロベルト。
ダリアはそんなロベルトの肩を色気ムンムンで、マッサージしていく。
そんなダリアの胸元が気になりはじめるロベルトは、人差し指が伸びていき、その先端のスイッチをチョン!
「いやん!やめてよ、ロベルト!」でもダリアは嬉しそう。(嫌よ嫌よも好きよ内)
もう一度、スイッチをチョン!と押せば、もう完全にムラムラ・スイッチは点火状態。
映画はこの後もドンドン変な展開へとなだれ込んでいくのだが、これ以上は語るまい。(本当に初めて観た時は、あまりの予想を裏切り続ける展開に、唖然、呆然で、最後まで口あんぐり状態。観ていない人の為にも、これ以上のネタバレは止めておきましょう)
この映画をどう思うかって?
大好きですよ。
こんなヘンテコな映画、アルジェントじゃなきゃ撮れないでしょ!
サスペンス、コメディー、エロティック、変態、トンデモ科学捜査が混合していて、コレは映画史に残る傑作(いや、異色作)なんじゃないだろうか。
両手を挙げて、「恐れ入りました!」と私は降伏します。
星☆☆☆☆☆。
ヘンテコもここまで極めれば御立派なもんです。(なんて褒め方だ (笑) )