1957年 アメリカ、イギリス合作。
ー 南フランスは海のそばに建つ別荘。
17歳の『セシル』(ジーン・セバーグ)は、父親『レイモンド』(デヴィッド・ニーヴン)と、その愛人『エルザ』(ミレーヌ・ドモンジョ)の3人で夏のバカンスを楽しんでいた。
水着に着替えて、目の前の海で自由に泳ぎまわるセシルやレイモンド。
仲良し父娘は、挨拶がわりに頬っぺたにチュッ!、額にもチュッ!、口にもチュッ、チュッ!年中キスばかりしている。(始終キスしている不思議な父娘に衝撃し、この場面はよく覚えている)
「エルザは、まだ寝ているの?起こしにいきましょうよ!」
仲良し父娘は、イタズラっ気たっぷりに、エルザの部屋に忍び足。
二人はエルザの部屋に入ると、いきなりカーテンを開けて、燦々とした日光をあててエルザを起こした。
「もぉー!やめてよ!」まどろむエルザは、昨日の海での日光浴で日焼けのあとが、ヒリヒリするらしい。
しばらくすると、日光浴をしているセシルとレイモンドのもとへエルザが降りてきた。
ヒリヒリする体を全身毛布にくるんで、降りてくる姿に、父娘はケタケタ笑いあった。
「ほんとうに可笑しな女だ」レイモンドが笑いながら言う。
セシルもエルザが好きだった。
プレイボーイで独身貴族のレイモンドは、次々と、違う女性をとっかえひっかえ連れてきたが、エルザの奔放さと飾らない性格は好きだし、セシルとも気があっていた。
セシルは、海で一人の青年とも知り合った。
青年は法律を学ぶ大学生の『フィリップ』(ジェフリー・ホーン)。
会ったその日から、二人は恋におち意気投合。
浜辺で熱いキスをかわした。
愛する人たちに囲まれて、毎日がイキイキして楽しくてならないセシル。
(ずっと……こんな日が続けばいいのに………)
だが、ある日、レイモンドの元へ1通の手紙がきた。
「アンヌからだ、アンヌが来るらしい!」
レイモンドが、ずっと前にばらまいて忘れていた招待状に、アンヌからの返事がきたのだ。
アンヌ……死んだ母の友人だった人、子供の頃にあったきり。セシルもおぼろ気な記憶しかない。
そして、アンヌがやってきた。
意気揚々として。
「まぁ~セシル、こんなに大きくなって!」
『アンヌ』(デボラ・カー)は、笑いながら近づいてきた。
セシルも笑顔でニッコリ答えたのだった。
だが、セシルもレイモンドも、このアンヌの本性をまるで分かっていない。
だが、セシルもレイモンドも、このアンヌの本性をまるで分かっていない。
この後、親子は身をもって、それを知る事となるのである………
こんな恐ろしい書き方をしたのには、理由がある。
この『アンヌ』(デボラ・カー)、美人で賢いのだが、
「人を自分の思い通りにしたい!」
という、ある意味、独裁的な性格なのだ。
早速、遊び人レイモンドには、
「年頃の娘の前で、愛人といちゃつくなんて…」と咎める。
そうして、立派な父親になるように諭しはじめるのだ。(いきなり他人の家にやって来て説教かよ、イヤな女)
馬鹿なレイモンドは、今まで付き合ってきた女たちと違うアンナに惹き寄せられていく。(もの珍しさで)
エルザには(バイバイ!)サヨナラを告げて、あっさりアンナに乗り換えたレイモンド。
こんな風に、頭カラッポのレイモンドなんて、赤子の手をひねるようなものなのだ。
簡単に手なづけてしまったのである。
だが、ここで終わらないのが、『アンヌ』の本当の恐ろしさ。
本領を発揮するのはこれからである。
今度はセシルにターゲットを変えて、いちいち干渉しはじめてくる。
「今は勉強が大事よ」
「あの大学生とは、しばらく会わないほうがいいわね」
親でもないのに、まだレイモンドと結婚していないのに、セシルのする事、なす事に、いちいち口出ししてくるアンナ。
まるで寮の舎監か、刑務所の看守である。(こりゃたまらん、息がつまるわ)
「あの女、大嫌い!」
いつしかセシルは、アンヌを憎みはじめ、父親とアンヌを別れさせようと策を練りはじめるのだ。
若いセシルにとっては、自由を縛りつけ、世間一般の常識という型に、無理矢理、押し込めようとするアンヌは、《敵》であり《侵略者》なのである。
そうしてセシルも反撃に出だした。
「もう1度帰ってきて!父も私もあなたが大好きなのよ」
セシルは別れたエルザの元へやってきて、父親との復縁を猛烈にけしかけはじめる。(エルザの方も、元々が軽〜いノリの性格なので「ヨッシャー!」と、たちまち乗り気になってしまう)
そうして、エルザとレイモンドがキスしているところに、あのアンナが偶然、それを目撃する瞬間がやってきたのだ。
ガビーン!
アンナ、大ショック!!(ザマーミロ)
気が動転したアンナは、車に乗り込むと猛スピードを出して、一目散に別荘から去っていった。(去る間際もアンナはセシルに八つ当たりの言葉を吐いて出ていく。)
だが、しばらくすると………鳴る電話。
アンナの運転する車が崖下に転落してしまったのだった。(アンナ絶命)
(私が彼女を傷つけたから、こうなってしまった?………)
セシルとレイモンドの心に《罪悪感》の重い刻印を焼き付けて、こうしてアンナは亡くなっただった。
そうして1年後………
元の気ままな生活に戻った親子だったが、まだ、その《罪悪感》が、どっしりと、のしかかったまんまである。
「悲しみよこんにちは……」
鏡をみながら、セシルはつくり笑いの顔をしながらも、とめどなく流れてくる涙に、今宵もむせび泣くのであった……。
数年ぶりに観返してみた『悲しみよこんにちは』。(この邦題は最高に良い)
やっぱり、デボラ・カーは、ヤナ感じだった (笑)。
こんな風に、人の生活にズカズカ乗り込んできて、「あ〜しろ!こ〜しろ!」言わずにはおれない人が、現実世界でもたまにいるが、お近づきにはなりなくないのは、誰しもが思うはずである。
そういう人は、目の前のその人を愛しているわけではないのだ。
自分が思い描く《理想の姿》を見てるだけ、それを追い求めているだけ。
型が合わなくて、ハマらないジグソーパズルに、強引に違うピースを、ねじ込もうとしてるだけなのである。
だから、こんな人は、誰からも嫌われるか、疎んじられてしまう。
こんなアンナの死に《罪悪感》を感じるレイモンドとセシルは、根は善良な人間なんだろう。
私なら、さっさと気持ちを切り替えて忘れてしまうが。
それか、時々思い出しても、「昔、こんなイヤな感じの人がいてね……」なんて前置きで、人に話して聞かせたりもするのだが。
まぁ、長い人生、様々な人間もいるってこと。
少女を大人の女性へと変えた、にがい真夏の出来事でございました。
星☆☆☆