2020年2月28日金曜日

映画 「七人の無頼漢」

1956年 アメリカ。



大雨が降りつける森の中、大きな岩蔭の下に、雨宿りの場所を見つけた男二人組は、焚き火をしながら、優雅にコーヒーなんぞを飲みながら、ユックリとくつろいでいた。



旅の途中なのだろうか……そばには繋がれた馬が二頭いる。


そんな二人の元へ、雨に濡れた男が、フラリとやって来た。


「雨宿りさせてくれないか?」


咄嗟に現れた見知らぬ旅人に、身構える二人組。


「馬もなくて、この雨の中、歩いてきたのか?」

「旅の途中で盗られた」


シレ~として旅人は、そう言うと、男たちにコーヒーを要求してきた。


コーヒーを飲ませながらも男たちは警戒している。


「どこから来たんだ?」

男の一人が訊ねると、旅人の男は「シルバー・スプリングス」とだけ答えた。


男二人の顔つきが、途端に変わる。


「確か……殺しがあったとか?犯人は見つかったのか?」

「あぁ、目の前にいる二人だけはな」


そう言うと旅人は、男二人に向けて素早く引き金を引いた。


雨の中に響き渡る銃声………。






翌朝、旅人の男、『ストライド』(ランドルフ・スコット)は殺した男たちの馬を引いていた。


元保安官のストライドは妻を殺されて、大金まで奪われていたのだ。

そうして、その妻を無惨に殺したのは、七人の無頼漢たちだった。


(絶対にこの仇はとる!)

復讐を誓ったストライドは、こうして旅を続けていく………。






リー・マーヴィン見たさに、借りた『七人の無頼漢』だが、この時は、まだまだ主役なんてものでもなく、それを引き立てるような悪役。

ストライドが旅先で出会う、大金を狙う『マスターズ』を演じている。




でも!、でも!、やがて主役として君臨して輝き始める、その片鱗は充分に伺える。




もう、リー・マーヴィンがうつるだけで、目はそれを追わずにはいられないのだ。


ストライドは一味を追う途中で、幌馬車で旅するジョン・グリーアと妻アニーの夫婦と知り合い、それに、やがて合流するのが『マスターズ』(リー・マーヴィン)とクリントという男たちなのだが………


この『マスターズ』(リー・マーヴィン)、こともあろうに、そのアニーを口説きはじめるのだ。(アララ)



「あんたによく似た女を見た事がある………昔………。そんなに青い瞳じゃなかったが……」なんて、気障なセリフも、サラリと言ってのけるマスターズ。


ストライドもアニーも、怪訝な顔でマスターズを見かえすのだが…………それにしても『マスターズ』(リー・マーヴィン)の溢れ漏れる男の色気よ。


表情、声、仕草、こんなのになびかない女なんて逆にいるのか?なんて疑いたくなるほどである。(単に自分がマーヴィンびいきなのもあるだろうけど)


案の定、この後は、ストライドの怒りにふれて、翌朝マスターズはおいてけぼりにされてしまう。


憤慨した彼は、この後、ストライドの敵になるべくして、残りの一味たちの元へと、はしるんだけどね。

まぁ、主役を引き立てる悪役だし、こんな展開もしょうがないか。



でも、こんな悪役でも、画面に映れば、男の色気ムンムンで、やがてのスター性を見せつけまくるリー・マーヴィンなのである。






一方、主役ストライドを演じているランドルフ・スコットはというと…………




とてつもなく棒演技!


ビックリした!あまりの演技のヘタクソさに!



ランドルフ・スコットの映画自体は初めて観たが、色々な噂と名前だけは知っていた。それにしても………。





西部劇専門のスターで、あの有名なケーリー・グラントと仲の良かったランドルフ・スコット。


二人は12年間、一緒に住んで共同生活をしていたほどである。


「二人はゲイじゃないのか?」なんてオフレコが、当然ついてまわったほど、終始ベタベタで、一緒のスナップ写真が、今も数多く残っております。



そんな二人の仲を「本当にゲイなんじゃねぇの?」なんて、直接からかった俳優のチョビー・チェイスは、ケーリー・グラントの怒りにふれて提訴までされたらしいけど。(また、余計な一言を……)


でもケーリー・グラントも5回結婚していて、娘まで授かっているし、ランドルフ・スコットも生涯2度結婚しているし、ほんとのところはどうなんでしょう。


今となっては分かりませんけどね。



そんな噂がたつほど、ケーリー・グラントにしてもランドルフ・スコットにしても若い時は、超ハンサム。

ランドルフ・スコットも整った顔をしている。


でも、演技の方は………ゴニョ、ゴニョ………。



顔の良さだけで、戦前は西部劇のスターとして、もてはやされたかもしれないけど、戦後、歳を重ねていけば、それだけではすまなくなってくる。



動き、表情、声の出し方……自分を観客たちに惹き付けるような演技の工夫。


それらは一朝一夕では身に付くものでもないし、長年の積み重ねや内面から滲み出てくるものじゃないだろうか。




案外、本人も西部劇専門にやっていて、他のジャンルには手を出さなかったところをみると、自分の演技の限界を自覚していたのかもしれない。(こんな風に書くと、あの世からでもケーリー・グラントが現れて激昂するかもしれないけど(笑))



人は良さそうな、見るからに善人そうなランドルフ・スコットなんですけどね。





でも時代が進み、観客たちの目が肥えてくると、そればかりではすまなくなってしまい………。



その後、1962年『昼下がりの決斗』を最後に引退した。(最後の映画も大赤字をだしてしまったらしい)



ランドルフ・スコットとリー・マーヴィン。


この映画で二人を比べてみると、その差は、あまりにも歴然としていて、ランドルフ・スコットが気の毒に思えてしまうほどだ。



この映画が完成して、ラッシュを観た時、本人も思ったんじゃなかろうか。


(あぁ、俺の時代も終わった………)なと……。


顔だけ良くてもスターとしては生き残れない。

厳しい世界でございます。

星☆☆☆。