2020年2月3日月曜日

ドラマ 「赤い激突」

『赤い激突』1978年6月~12月。






バレエ一家の悲劇の物語である。


このドラマも『赤いシリーズ』の流れで観ていたのだが、子供心にとても怖かった印象が……。



主演は、『赤いシリーズ』といえばこの人といわれている宇津井健なのだが、この宇津井健が、なんてったって 怖い〜



この頃になると、宇津井健の芝居も最高潮にヒート・アップしていた。


瞳孔を開いて、汗をにじませて、台詞を言う度に、首を小刻みにふるわせながら、ワナワナ演技。


それも、めいいっぱい力を入れて、熱い芝居をするので、たった一時間のドラマでも、観ているこちら側もクッタクタ。



同じように力を入れて、りきむように観ていたんだと思う。




こんな宇津井健は、主人公の『大谷高(たかし)』。


元バレリーナで創設者の『大谷松子』(赤木春恵)が運営する大谷バレエスクールで、松子の娘、『大谷春子』(松尾嘉代)と結婚して婿養子となり、それなりに幸せな家庭を築いていた。(とても赤木春恵が、元バレリーナには見えないのだが……)



大谷夫妻には3人の娘たちがいて、

長女が、『さくら』(坂口良子)、

次女が、『夏子』(秋野暢子)、

三女が、『百合』(森下愛子)の三姉妹である。



三姉妹は子供の頃から、バレエに励み、共に憧れのプリマを目指していた。



三姉妹には別に、兄の『澄夫』(国広富之)もいるが、こちらは弁護士を目指していて、只今猛勉強中。




こんな一見、幸せそうな理想の家族。




だが、どこの家にも厄介者というのか、もて余し者がいて……。



それが春子の兄で、大谷家の恥さらしである長男の『一郎』(前田吟)なのだ。(もうひとり、春子には次男の兄がいるのだが、こちらは立派な脳外科医のお医者様の『次郎』(石立鉄男))



この一郎が最低のクズ野郎で、自分の父親の妾を殺したり(あきらかに父親もクズ野郎で一郎も、完全にその血をひいている)、強姦してみたりと、やりたい放題。




そんな一郎だが、どこをどう逃げ回っていたのか……無能な警察は結局、逮捕できずに25年も経ち……


一郎の犯罪も、とうとう時効の日をむかえたのだった。




一郎は時効になると知ると、大っぴらに、厚かましく、突然この大谷家に現れた。



「死んだオヤジの財産をもらう権利が俺にもあるはずだ!金を出せー!」(この、現在とは想像つかないくらい、憎たらしい前田吟の極悪顔よ)



恥知らずの一郎は暴れだし、一家はそれを押さえつけようとするのだが、一郎が払いのけた手は、春子を押しのけ、広いレッスン場の鏡めがけて、ガシャーン!


砕け散った鏡の欠片が地面に落ちて、頭から血を流して、倒れこむ春子。



春子ぉおーーー!


高(宇津井健)の絶叫が、レッスン場のホールに響き渡る。(ワナワナ)



すぐさま、次男の次郎のいる病院に救急搬送される春子。

「危険な状態だ!すぐにオペにかかる!」



手術室のランプが点り、待ち合いの廊下では高が、もういてもたってもいられない。


やがて高の足はバレエのリズムをきざみだした。(えっ?何でやねん?!)


そしてクルクル回り続ける高。(???)


病院の廊下で、高く手を振り上げてジャンプした高。(病院内では静かにしましょうね(笑))




そんな高の祈りの踊りが、神様に届いたのか?、春子は何とか一命をとりとめたのだった。



だが安堵したのも束の間、もう一度再手術をしなければならなくなった春子。


「このままでは死んでしまう。だが、再手術をすれば助かっても植物状態になってしまうかも………」


次郎の提案に、高は、「は、春子の命を、命を救ってくれぇーーー!」と、ただ、ひたすら懇願した。



そうして手術の結果、無情にも春子は人工呼吸器をつけられて植物状態。(この目を開いたままの松尾嘉代さんの姿が、子供心に、とても怖かった)


24時間、病院の特別室で、ただ呼吸し、生き続けているだけの春子。


高は、そんな春子でも「生きていてさえくれれば……」と思うのだが、他の者たちが、そう全員思うはずもなく……。


「こんな残酷な……ただ息をしているだけなんて……もう、安らかに眠らせてあげたい」と安楽死を希望する者もいれば、


金の亡者、一郎のように、

「このまま、莫大な治療費がかかれば大谷家の財産が、どんどん減っていく。何とかせねば……」と春子の死を願う者もいる。(もとはといえば、お前のせいだろー!)



人々の色々な思惑が渦巻きはじめた頃、ある夜……


春子の病室に近づく黒い影。


春子の命をつなぐ人工呼吸器のスイッチが、何者かの手によってきられた。



そして、結果、春子は亡くなった。



「春子ぉぉぉーーー!」(またもや宇津井健のワナワナ演技の絶叫よ)



いったい誰が春子を殺したのだろうか?






こんな感じの『赤い激突』だったはずである。
(長くなってスミマセン。何せ、当時10歳の頃の記憶だけを頼りに、思い出しながら書いているもので)


今でこそ、善人役がさまになっている前田吟だが、私世代には、この役の印象があまりにも強くて、当時大嫌いでした。


あまりにも極悪で非情で、人間味の欠片さえない、こんな役。(よくも、まぁ、こんな役を引き受けたもんだよ)



この『赤い激突』、後半は、「誰が春子を殺したのか?」の謎で進んでいくのだが……

このドラマが大映ドラマだからなのか、最終回で明かされる真犯人には、ガクッ!と肩透かしを喰らった気がした。



いきなり登場した、「あのひと」が真犯人だと言われてもねぇ~。(観たことない人には、何の事やらサッパリ分からないだろうが、この一点だけは、これから観る機会がある人の為にふせておこうと思う)




ただ、それまでのドラマをグイグイ引っ張っていく熱量は、今のノホホ~ンとしたドラマとは桁違い。


個性豊かな出演者たちもだが、それにも勝る、宇津井健の過剰すぎる演技は、充分見応えありである。


直立不動で、声を震わせて、ワナワナと、精一杯、力をこめて言う台詞の一言一言。


忘れようったって忘れられない、トラウマのような、これも子供時代の思い出なのである。


星☆☆☆☆。


観るときには、宇津井健に憑依して、力いっぱいにご覧あれ!(笑)