1967年 イタリア。
主演はジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフ。
ある日、友人Mさん(69歳)が、電話をかけてきて、今、『怒りの荒野』を観てると言う。
何をかくそう、Mさん、この、ジュリアーノ・ジェンマの熱烈な大フアン。
で、自分に、
「是非、これを観ろ!観ろ!」とうるさく言ってくる。
自分は「ハイ、ハイ、分かりましたよ」と、取り合えず返事はする。
「これを観ずして西部劇なんてのは語れないぞ!」
視聴真っ只中で興奮気味のMさんは、押せ押せの熱量で、まるでやり手のセールスマンのようだ。
「ヘ~イ、分かりました」と安易な返事をして電話をきる私。
(でも、誰?『ジュリアーノ・ジェンマ』って?)ってな感じの自分。
アメリカ西部劇は、大体は観ていても、イタリア西部劇なんてのは、とんと観たことないし。
レオナルド・ディカプリオが、『ワンス・アポン………』でも、
「イタリア西部劇が、どんなに低質な映画なのか知ってるのか?」と、散々、馬鹿にしていたし。
(まぁ、どうせ、内容なんてないような映画なんでしょ……)なんて思いながら、話の種になればと、期待もせずに視聴を始めたわけだが…………。
面白いじゃないですか!!
この映画、もうオープニングから、西部劇とは思えないほど、小気味良い音楽と映像がオシャレ。
ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフの顔がスライドされて、右に左にいったり来たり。
画面が分割されて、ガンマンがピストルを抜く場面がモノクロになり、青やピンクや緑の鮮やかなバックに映えること。
オードリーの『シャレード』や007などの、そんな雰囲気を思い出させるような、オッシャレ~なオープニングで始まるのだ。
ストーリーは、至って簡単。
メキシコの小さな町で、売春婦の息子として蔑まされて生きてきた青年『スコット』(ジュリアーノ・ジェンマ)が、ふらりとやって来た、さすらいのガンマン、『タルビー』(リー・ヴァン・クリーフ)に指南されて、凄腕のガンマンになっていく成長物語だ。
タルビーがスコットに叩き込む『ガンマン10ヶ条』なんてものまである。
教訓の1、 決して他人にものを頼むな。
教訓の2、決して他人を信用するな。
教訓の3、 決して銃と標的の間に立つな。
教訓の4、 パンチは弾と同じだ。最初の一発で勝負が決まる。
教訓の5、 傷を負わせたら殺せ。見逃せば自分が殺される。
教訓の6、 危険な時ほどよく狙え。
教訓の7、 縄を解く前には武器を取り上げろ。
教訓の8、 相手には必要な弾しか渡すな。
教訓の9、 挑戦されたら逃げるな。全てを失う事になる。
教訓の10、 皆殺しにするまで止めるな。
何だか、よ~分からんようなタルビー先生の10ヶ条なのだが、これさえ出来れば、あなたも今日から『凄腕ガンマン』になれるらしい。(「教えてやるんだ、ありがたく思え!」と言いながら、スコットから金を巻き上げるタルビー先生は、ちょっとばかしセコイが)
従順なスコットは、タルビーの教えを守って、着々と強くなっていく。
だが、タルビーのガンマンとしての腕は尊敬しても、次第にタルビーの邪悪な本性を知っていく。
やがて、師匠と弟子の考え方はズレが生じていき、二人は、とうとう対決をむかえるのだが……。
Mさんには悪いが、ジュリアーノ・ジェンマには、別にフアンにも何にもならなかった。(何だか始終、口をポカ~ンと開けているジェンマが、最後までアホ面に見えてしまったのだ。ゴメンナサイ!(笑))
かわりに、カッコイイなぁ~と思ったのが、悪役のリー・ヴァン・クリーフ。
口髭の似合う、まるでダンディーを地でいくようなオジサマじゃないですか!
渋い!
立ち姿といい、銃を構える姿といい、何もかもがカッコイイのです。
この方、ゲーリー・クーパーの『真昼の決闘』にも出演していたのだが、観ているはずなのに、とんと覚えてない自分である。(機会があれば、見直してみようっと)
調べてみるとタランティーノも、この映画の熱烈な大フアンらしい。(あら、やっぱり、そうだったのか?!)
まぁ、何にせよ、Mさんありがとう。
イタリア西部劇、侮るなかれですね。
やはり、先人の教えはキチンと聞くものですね。(タルビーに教わるスコットのように)
星☆☆☆☆です。