2019年 アメリカ。
☆祝☆ブラッド・ピット、アカデミー賞助演男優賞、受賞おめでとうございます。
この『ワンス・アポン……』の受賞は納得かも。(それにしてもタイトルが長いなぁ~『むかし、むかしハリウッドで』でも良さそうなのに)
落ち目の映画スター、『リック・ダルトン』(レオナルド・ディカプリオ)のスタントマン、『クリフ』を演じているのがブラッド・ピットである。
かつては西部劇のスターだったリックも今じゃ、パッとしない。
テレビドラマの悪役を、単発でポツポツと続けるような仕事ばかり。
そんなリックを見捨てたりもせずに、従順なクリフは、何かと世話をしてくれている。
飲酒運転で免停になったリックの代わりに、運転までしてやって、映画プロデューサー『マーヴィン』(アル・パチーノ)との待ち合わせ場所まで連れていってくれる優しいクリフ。
「君の西部劇には感心しているんだ!どうだ?イタリアで西部劇をやらないか?!」
マーヴィンの提案にリックは、たちまち難色の顔。
ゲゲッ!イタリア映画だって?!
イタリア映画がどんなものなのか知っていて言ってるのか?、このオヤジ?……あんな最低の映画に、この俺様が?!(イタリア映画に失礼じゃねぇの?(笑)クリント・イーストウッドだって、売れる前はイタリア映画『夕陽のガンマン』から始めたんだから)
「このまま、悪役を続けるよりは、よっぽどいいと思うぞ!その悪役の仕事も1年後、2年後にはどうなっていくのやら……君は、次第に忘れ去られていく。イタリアに行って映画を撮るんだ、リック!!」
マーヴィンとの話し合いが終わると、リックとクリフは車を置いてある駐車場に出た。
すると、リックの顔がグシャグシャに歪み、突然、泣き出した(?)
「あの野郎、言いたい放題言いやがって~!」
プライドをズタズタにされたリック(レオナルド・ディカプリオ)はクリフ(ブラッド・ピット)の肩を借りて、まるで子供のように泣きはじめた。(アラアラ……)
それを「あ~、よしよし……」と慰めるクリフは、どこまで人間が出来ているのか、まるで聖母のように優しい。
もはや、スタントマンの域を越えて、まるでリックの母親かベビー・シッターのような役まわりのクリフである。
そんな二人のそばに、あの有名な監督『ロマン・ポランスキー』が引っ越してくる。
妻で女優の『シャロン・テート』(マーゴット・ロビー)を伴って………。
リックとクリフは創作だが、ロマン・ポランスキーやら、シャロン・テート、チャールズ・マンソン、ブルース・リー、スティーブ・マクイーンなどは、実在の人物。
虚構と現実の人物が混じりあって、何ともいえない、これはおとぎ話のような映画である。
もちろん、チャールズ・マンソンの事件は知っている。
生まれついての犯罪者マンソンは、ヒッピーたちを束ねてカルト集団を作り上げた。
家出少女たちにセックスを強いて、麻薬の力を借りては、狂信的な信者を増やしていったマンソン。
自らは手を汚す事なく、カルト集団のトップとして、殺人命令だけをくだす冷酷非道なマンソン。
そんな異常すぎる日常を送っていたマンソンだったが、正反対に、ごくごく普通の夢を持っていた。
それは『ミュージシャン』になる事。
でも、その夢を馬鹿にしたのが『テリー・メルチャー』という男。
ミュージシャンとしてメジャー・デビューするのが夢だったマンソンは、テリーを恨み続け、そして、ある日、
「テリーを殺せ!」と信者たちに命令する。
だが、テリーは、すでに引っ越した後で、たまたま、その後に越してきていたシャロン・テートと数名が、間違って、信者たちに惨殺されたのだった。(ドジで馬鹿な信者たちである)
《実際のシャロン・テート本人》
当時、ロマン・ポランスキーは撮影の為、留守だったので難を逃れたが、妻のシャロンは妊娠していて、お腹の子供もろとも殺される。
このショッキングな事件は、当時、アメリカ全土を震え上がらせ、マンソンの名は一躍有名になった。
実行犯はもとより、マンソンも逮捕されたが、マンソンは死刑にはならず2017年(最近)まで獄中暮らし。そうしてやっと亡くなった。
《実際のチャールズ・マンソン本人》
世間は、シャロンと子供を殺されたポランスキーに同情的だったが、この話には、さらに後日談があって、今度はポランスキーがとんでもない事を仕出かす。
13歳の少女への強姦事件。
ポランスキーは逮捕されるが、無実を訴えて、取りあえずは仮釈放になる。
だが………大胆にも、その最中に国外逃亡するのだ。
それ以降はアメリカに戻らず、現在に至る。(アメリカに戻れば、即、逮捕ですもんね。まるで最近のゴーン容疑者のような逃亡劇)
こんな凄惨で、残忍で、目まぐるしいほどの事件の数々。
映画の題材にならないわけがない。
マンソンやシャロン・テートの事件も、何度か映像化されています。
で、こんなロマン・ポランスキーやシャロン・テート、チャールズ・マンソンに、今度はクエンティン・タランティーノが挑む。
冒頭のリックとクリフのやり取りを見ても分かるように、凄惨とは、真逆なライト感覚の映画に仕上がっている。
平凡な人間なら、この題材を、「どれだけ残忍な映画にするか」ばかりを考えるはずだが、それだけにならないところが、タランティーノの優れた才能なのだ。(まぁ、火炎放射器をぶっぱなしたりするレオ様やら、ぶっ飛んだ場面もあるにはあるけどね)
ふて腐れて、子供っぽくて、俺様俺様してる『リック』(レオナルド・ディカプリオ)は可愛げがあって、何かと、そちらにばかり目がいきそうだが、飄々としてストイックなブラッド・ピットも中々である。
過剰にならずに、ごく自然に見える演技は、ディカプリオとの対比で、今回は好評価された。
この人、見た目のイケメン度合いばかりが先行されて、勘違いされがちだが、昔から演技派だと思っていたので、今回の受賞は、「やっと……」って感じである。
マーゴット・ロビーに関しては、今回の映画では、特に可もなく不可もなく。(トーニャ・ハーディングは面白かったけどね)
2時間40分は、さすがに長いなぁ~と思ったけど、あんまりダレル事なく観れたかも。
星☆☆☆☆である。
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットのコンビで観る価値、大いにあり。