1969年 イタリア、スペイン合作。
♪ヘイ!アミーゴ!、チェ!サバータ!♪
夕暮れ迫るドハティの町に、一人の流れ者『サバタ』(リー・ヴァン・クリーフ)がやって来た。
浮浪者『カリンチャ』(ペドロ・サンチェス)は、昔、軍隊にいたが今じゃ一杯の酒を求めて、町をさ迷う只の酔っ払い。
今日も道端で、ウダウダひとり言のように文句を言ってると、目の前に、眼光鋭い、まるで鷹のような目をもった男が通りかかった。(出たー!)
その男、『サバタ』は、不適な笑みをみせると、銀貨を指で弾き、カリンチャの手のひらに落としてくれた。
「ありがてぇ~!あんた誰なんだ?俺はあんたに一生ついていくぜぇ~!」
そのまま酒場に入っていくサバタを追いかけていくカリンチャ。
その頃、同じ時刻に、町の銀行が襲われた。
警備の者たちを簡単に殺して、荷馬車に金庫を載せると、強盗集団は立ち去った。
そんな酒場にも銀行が襲われたニュースが、すぐさま知れわたる。
人々は大騒ぎ。
「アレレ……あのお方が入ねぇぞ?」
いつの間にか消えていたサバタは、馬を走らせて強盗集団を追いかけていた。
崖の上から強盗団の荷馬車を見つけたサバタ。
「おい!それを置いて、とっとと消えな!」
銃を構えるサバタに、強盗団たちは笑い転げている。
「あんな遠い距離から、こんなところまで狙えるもんか!」
サバタの忠告を無視して、無理矢理、馬車を走らせようとすると、サバタの正確な射撃が、あっという間に強盗団たちを一人一人狙い撃ちした。
鷹のような目は、次々と獲物たちを仕留めていく。
そうして、ドハティの町に帰ってきたサバタ。
荷馬車の金庫の上には、殺した強盗団の死体を山積みに重ねている。
呆気に取られる町の人々たち。
保安官たちが、サバタに「いくら欲しいか?」言い値で賞金の金額を聞いてきた。
「5000だ!」
取り返した金庫の額は10万ドル。サバタの要求は簡単にとおった。
「あんたも欲がねぇな~、俺だったらもっと吹っ掛けてやるぜ!」そばでカリンチャが、またもやブツクサ言ってるが、
「安全な金だ」と、平然とチェアーに腰かけて揺らしているサバタなのだった。
サバタの活躍で、ドハティの町を揺るがす事件は、一見片付いたようにみえた。
だが、本当の巨悪は別にいて…………。
『怒りの荒野』を観て、すっかり、リー・ヴァン・クリーフの大フアンになってしまった私。
こうなれば、リー・ヴァン・クリーフについて調べなければと思い、色々主演作を探してみる。
そうして、この『西部悪人伝』(原題:サバタ)に行き着いたのだった。
この『サバタ』、評判が良かったのか?シリーズ化されていて、3本の『サバタ・シリーズ』が作られている。
2作目だけが、主演のサバタ役を、何故か?ユル・ブリンナーが演じているが(この交代が評判悪かった?)3作目では、リー・ヴァン・クリーフのサバタ役が、またもや復活しているという変な展開。
ユル・ブリンナーが苦手なので、あんまり2作目を観たいとは思わないが、そのうち3作目は観てみたい気がする。
そう思わせるくらい、この1作目『西部悪人伝』が痛快で面白かったのだ。
ニヒルでカッコいい、『サバタ』(リー・ヴァン・クリーフ)はもちろんだが、サバタの仲間になる面々たちも、それぞれ特技があって面白い。
単なる浮浪者かと思っていたカリンチャは、ナイフ投げの達人。(てっきり只の3枚目だと思っていたのに)
いつも屋根の上にいる『ネコ』(ニック・ジョーダン)なんて男は、無口なのだが、カリンチャに誘われてサバタの仲間入り。(何を考えてるのやらサッパリ分からんが………そのくらい全く喋らない)
通称『ネコ』なんて言われているので、その身軽さは凄まじく、シーソーを利用して何メートルもの高さまでも、簡単に飛び上がり、屋根の上に跳び移ったり、崖の上に着地したりと自由自在。
まるでサーカスの曲芸師か、体操選手並の身体能力をみせる。(でも変な髪形)
この3人がトリオになって、まるで必殺仕事人の如く、大活躍する。
他にも、いつも酒場でバンジョーをかき鳴らして演奏している1匹狼の『バンジョー』(まんまじゃねぇか(笑))もいたりする。
こよなく、バンジョーを愛するバンジョー(ややこしい)は、ことあるごとに、ジャカ、ジャカ!と、バンジョーを演奏したりするので、はた迷惑な男。
しまいには、「うるせぇーぞ!」とサバタに一喝されてしまう始末である。(まぁ、武器もバンジョーに仕込まれた銃なのだが)
そして隠れた敵は、『ステンゲル』という、いかにも悪党らしいキザ野郎。
中世の貴族のような変なパーマをかけていて、三白眼。
言うこと、なす事、もったいぶっていて、嫌味でキザったらしい奴。
こんな顔の俳優をどこで見つけてきたのか、その見た目だけで、インパクト大である。
こんな風変わりな連中が撃ち合い、騙し合い、画面一杯に駆けずり回るのだから、つまらないはずがない。
そして、主役のリー・ヴァン・クリーフが、画面の中央にピストルを持って立つシルエットは、それだけでも、見ていて惚れ惚れするほどである。
全ての事件が解決して、馬に乗り、去ろうとするサバタに、カリンチャが遠くから問いかける。
「サバタ、お前さん、いったい何者なんだ!?」
それに振り向いてサバタ、
「正義の味方よ!」と一言。
映画はENDマークとなる。
ん~、カッコいいねぇ~!痺れるねぇ~!
リー・ヴァン・クリーフ、あんた男の中の男だねぇ~!(前回の棒演技のランドルフ・スコットを観た後では、殊更きわだって見えてしまう)
もちろん星☆☆☆☆☆。
グダグダ理屈なしの、勧善懲悪な映画もたまには良いものです。