2006年 アメリカ。
ニューヨークに、そびえ立つ超高層ビルの最上階。
そこに、女性たちが憧れるファッション雑誌《 ランウェイ 》のオフィスがある。
田舎から出てきた『アンドレア・サックス』(アン・ハサウェイ)は、まるで、おのぼりさんのようにワクワクしながら、1階のホールから、エレベーターに乗り込んで最上階のボタンを押した。
そして、………
「あの~今日、面接予定のアンドレア・サックスですが………」
受付にいる第1アシスタントの『エミリー・チャールトン』(エミリー・ブラント)は、アンドレアの姿を頭から爪先まで、ジロジロ見ると、
「あなたが?いったい何の冗談かしら?」と無遠慮に言い放った。
そんな時、1本の電話が鳴り響き、エミリーの顔色が変わった。
「大変よ!今すぐ準備して!彼女が来るぅー!!」
エミリーの声にスタッフや周り中が、バタバタ大騒ぎ。
(いったい何が始まったの?………)アンドレアは、まるで分からずにポカ~ン顔。
そんな時に目の前のエレベーターが開き、一人の女性が降り立った。
その場の空気が一瞬で変わる。
まるで人を寄せ付けないようなオーラを纏(まと)った女性、『ミランダ・プリーストリー』(メリル・ストリープ)の登場に。
ミランダはツカツカと進み、オフィスの椅子に腰掛けた。
すると、アシスタントのエミリーは、直ぐ様とんで行き、次々と繰り出す的確なミランダの指示を、「ハイ!ハイ!」と固唾をのんで聞いている。
すると、アシスタントのエミリーは、直ぐ様とんで行き、次々と繰り出す的確なミランダの指示を、「ハイ!ハイ!」と固唾をのんで聞いている。
その光景をぼんやりと見ているアンドレアにミランダも、ようやっと気づいたようだ。
「誰よ?あの娘?」
「第2アシスタントとして、人事部が面接で寄越したんです。でも、あんな娘を連れてくるなんて………何を考えてるのやら。」
「いいわ、私が面接する」ミランダは、そう言うとエミリーを下がらせた。
アンドレアを一目見ると、「ファッションセンスもゼロ。《ランウェイ》も読んだことない。私を知ってる?知らない? それで、何でうちにきたの?」
「あの………ジャーナリスト志望だったんですけど、おたくの人事部に電話したら面接を進められて………でも採用されれば、きっとお役にたてます、私なら!」
「あっそ!じゃ、もういいわ。帰って。」
ミランダは、もう興味なしとばかりに、(あっちへ行け!)と、手で払いのける仕草。
(私、もしかして落ちたの?………)
ガッカリしてエレベーターを降りたアンドレアだったが、先程のエミリーが呼び止める声。
ゲゲッ!!まさかの『採用』!
ゲゲッ!!まさかの『採用』!
「ヤッター!!」
喜んだアンドレアだったが、それもつかの間。
明日から始まる地獄の日々を、まだアンドレアは知らない………。
アン・ハサウェイ観たさに選んだ1本である。(すっかりフアンになっちゃいましたので。)
前回、顔がどうとか、こうとか書いていたのに、フアンになると、途端に、それも味のあるような、逆に大好きな顔に思えてくるのだから、自分でも訳がわからない。
どこまで調子の良い男なんでろうと思ってしまう。(エイ!この!自分の馬鹿野郎!!こんなところで許してくださいませ)
前回の『マイ・インターン』とは違い、アン・ハサウェイは、ここでは雇われる立場。
上司には、あのメリル・ストリープである。
似たような設定でも、配役が変われば雰囲気も、何もかもが全く違ってしまう。
前回の『マイ・インターン』のように「あ~、こんな会社で働きたいなぁ~」なんてものは、微塵もない。
ここで、求められるのは、仕事に対する《厳しさ》と《プロフェッショナルさ》だけだ。
雑誌の為に、モデルに着せる洋服選びの為に、ミランダがスタイリスト達を怒鳴っていると、アンドレアが思わず、「クスッ」と笑ってしまう。
すると、即座に反応したミランダが、血相を変える。
「何がおかしいの?」
「だって、そのベルトなんて、どれもこれも同じに見えるんですもの」(アチャー、余計な事を)
「あなたが着ているブルーのセーター、それはセルリアンよ!同じブルーでも違いはあるのよ。そんなセルリアンでも、私達がブームを築きあげて市場に流れ、長い年月をかけて、廃れていき、安っぽいカジュアル服として、一般のあなたたちが今、着ている。」
プロヘッショナルとして生きてきた、ミランダの言葉は重い。
「ファッションとは関係ないと思って着ている、あなたの服も、今、こうして選んでいる山の中から、私たちが選んだものなのよ!」
そんなミランダの言葉の重みなんて、分からないアンドレアは、家に帰れば、
「キーッ!何よ!あの女!ムカつくー!!」
会社の愚痴を恋人に叫ばずにはいられない。
でも本音は……(ミランダの言ってる事を少しでも理解したい!ミランダに寄り添い、追い付きたい!この世界で成功したい!)なのだ。
同僚の『ナイジェル』(スタンリー・トウッチ)にも叱咤されて、アンドレアは、やっと「自分を変えねば!」と、動きはじめる。
面白かった。
面白かったけど、この『ミランダ』と『アンドレア』の関係、あのドラマを、やっぱり思い出してしまった。
『ダメージ』の『パティ・ヒューズ』(グレン・クローズ)と『エレン・パーソンズ』(ローズ・バーン)に、すっごく似ている。
ミランダもパティも、仕事に厳しく、プライベートで離婚しようが、どうしようが、とにかく仕事第一主義。
仕事で成功する事が、人生の全てなのだ。
この広大なアメリカで成功するためには、女性は皆、ミランダか、パティ・ヒューズのようにならなければ生き残れないのだろうか。
だとすれば、女性がトップで居続ける為の闘いとは、何と殺伐としていて、非情なんだろう。
根が甘ちゃんの自分なんて、身の毛がよだって震え上がってしまう。
そして、グレン・クローズとメリル・ストリープは大の仲良し。
女優としての意識の高さも同じで、乗り越える事も困難なくらいな、刑務所の高い塀くらいなものだろうか。
このアン・ハサウェイは、その塀を乗り越える為に、今、やっとへばりついている感じかな?
でも、こんな風には、あまりなってほしくないなぁ~。
アン・ハサウェイには、いつまでも優雅でエレガントで、そしてにこやかに。
どこまでも、甘ちゃんの自分はそう願わずにはいられないのであ~る。
星☆☆☆☆。