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2020年3月11日水曜日

映画 「プラダを着た悪魔」

2006年 アメリカ。






ニューヨークに、そびえ立つ超高層ビルの最上階。

そこに、女性たちが憧れるファッション雑誌《 ランウェイ 》のオフィスがある。



田舎から出てきた『アンドレア・サックス』(アン・ハサウェイ)は、まるで、おのぼりさんのようにワクワクしながら、1階のホールから、エレベーターに乗り込んで最上階のボタンを押した。



そして、………


「あの~今日、面接予定のアンドレア・サックスですが………」


受付にいる第1アシスタントの『エミリー・チャールトン』(エミリー・ブラント)は、アンドレアの姿を頭から爪先まで、ジロジロ見ると、

「あなたが?いったい何の冗談かしら?」と無遠慮に言い放った。



そんな時、1本の電話が鳴り響き、エミリーの顔色が変わった。


「大変よ!今すぐ準備して!彼女が来るぅー!!」

エミリーの声にスタッフや周り中が、バタバタ大騒ぎ。


(いったい何が始まったの?………)アンドレアは、まるで分からずにポカ~ン顔。




そんな時に目の前のエレベーターが開き、一人の女性が降り立った。

その場の空気が一瞬で変わる。


まるで人を寄せ付けないようなオーラを纏(まと)った女性、『ミランダ・プリーストリー』(メリル・ストリープ)の登場に。




ミランダはツカツカと進み、オフィスの椅子に腰掛けた。

すると、アシスタントのエミリーは、直ぐ様とんで行き、次々と繰り出す的確なミランダの指示を、「ハイ!ハイ!」と固唾をのんで聞いている。




その光景をぼんやりと見ているアンドレアにミランダも、ようやっと気づいたようだ。


「誰よ?あの娘?」


「第2アシスタントとして、人事部が面接で寄越したんです。でも、あんな娘を連れてくるなんて………何を考えてるのやら。」


「いいわ、私が面接する」ミランダは、そう言うとエミリーを下がらせた。



アンドレアを一目見ると、「ファッションセンスもゼロ。《ランウェイ》も読んだことない。私を知ってる?知らない? それで、何でうちにきたの?」


「あの………ジャーナリスト志望だったんですけど、おたくの人事部に電話したら面接を進められて………でも採用されれば、きっとお役にたてます、私なら!」



「あっそ!じゃ、もういいわ。帰って。」

ミランダは、もう興味なしとばかりに、(あっちへ行け!)と、手で払いのける仕草。


(私、もしかして落ちたの?………)



ガッカリしてエレベーターを降りたアンドレアだったが、先程のエミリーが呼び止める声。



ゲゲッ!!まさかの『採用』!


「ヤッター!!」


喜んだアンドレアだったが、それもつかの間。

明日から始まる地獄の日々を、まだアンドレアは知らない………。






アン・ハサウェイ観たさに選んだ1本である。(すっかりフアンになっちゃいましたので。)


前回、顔がどうとか、こうとか書いていたのに、フアンになると、途端に、それも味のあるような、逆に大好きな顔に思えてくるのだから、自分でも訳がわからない。


どこまで調子の良い男なんでろうと思ってしまう。(エイ!この!自分の馬鹿野郎!!こんなところで許してくださいませ)




前回の『マイ・インターン』とは違い、アン・ハサウェイは、ここでは雇われる立場。


上司には、あのメリル・ストリープである。

似たような設定でも、配役が変われば雰囲気も、何もかもが全く違ってしまう。




前回の『マイ・インターン』のように「あ~、こんな会社で働きたいなぁ~」なんてものは、微塵もない。



ここで、求められるのは、仕事に対する《厳しさ》と《プロフェッショナルさ》だけだ。





雑誌の為に、モデルに着せる洋服選びの為に、ミランダがスタイリスト達を怒鳴っていると、アンドレアが思わず、「クスッ」と笑ってしまう。


すると、即座に反応したミランダが、血相を変える。

「何がおかしいの?」

「だって、そのベルトなんて、どれもこれも同じに見えるんですもの」(アチャー、余計な事を)



「あなたが着ているブルーのセーター、それはセルリアンよ!同じブルーでも違いはあるのよ。そんなセルリアンでも、私達がブームを築きあげて市場に流れ、長い年月をかけて、廃れていき、安っぽいカジュアル服として、一般のあなたたちが今、着ている。」


プロヘッショナルとして生きてきた、ミランダの言葉は重い。


「ファッションとは関係ないと思って着ている、あなたの服も、今、こうして選んでいる山の中から、私たちが選んだものなのよ!」



そんなミランダの言葉の重みなんて、分からないアンドレアは、家に帰れば、

「キーッ!何よ!あの女!ムカつくー!!」

会社の愚痴を恋人に叫ばずにはいられない。





でも本音は……(ミランダの言ってる事を少しでも理解したい!ミランダに寄り添い、追い付きたい!この世界で成功したい!)なのだ。



同僚の『ナイジェル』(スタンリー・トウッチ)にも叱咤されて、アンドレアは、やっと「自分を変えねば!」と、動きはじめる。



面白かった。



面白かったけど、この『ミランダ』と『アンドレア』の関係、あのドラマを、やっぱり思い出してしまった。





『ダメージ』の『パティ・ヒューズ』(グレン・クローズ)と『エレン・パーソンズ』(ローズ・バーン)に、すっごく似ている。




ミランダもパティも、仕事に厳しく、プライベートで離婚しようが、どうしようが、とにかく仕事第一主義。



仕事で成功する事が、人生の全てなのだ。



この広大なアメリカで成功するためには、女性は皆、ミランダか、パティ・ヒューズのようにならなければ生き残れないのだろうか。



だとすれば、女性がトップで居続ける為の闘いとは、何と殺伐としていて、非情なんだろう。




根が甘ちゃんの自分なんて、身の毛がよだって震え上がってしまう。





そして、グレン・クローズとメリル・ストリープは大の仲良し。

女優としての意識の高さも同じで、乗り越える事も困難なくらいな、刑務所の高い塀くらいなものだろうか。


このアン・ハサウェイは、その塀を乗り越える為に、今、やっとへばりついている感じかな?





でも、こんな風には、あまりなってほしくないなぁ~。



アン・ハサウェイには、いつまでも優雅でエレガントで、そしてにこやかに。

どこまでも、甘ちゃんの自分はそう願わずにはいられないのであ~る。

星☆☆☆☆。