1963年 フランス。
有名女優『ミレーヌ・ドモンジョ』(実名)に電報が届いた。
「まぁ、大統領からの招待よ!」
喜ぶミレーヌは、使用人たち相手にシャンパンをあけて乾杯!
そんな浮かれ気分の中、メイドの『ジゼル』(ベルデ・グランバル)は、奥で壁のタイル張りをしている職人『リシャール』(フランク・フェルナンデル)が気になってしょうがない。
「彼にもシャンパンを持っていってあげなさい」
優しい女主人ミレーヌの言葉に、ジゼルは、喜び勇んでとんでいった。
「彼女、彼に惚れてるのよ……」
ミレーヌはお見通しとばかりに、他の者たちに、コソッと耳打ちした。
賢明に働くリシャールは、病気の母親の為に仕送りをしていると言う。
(何て優しいのかしら………)
だが、こんなリシャールの言葉は、真っ赤な嘘。
ミレーヌの所有する5000万フラン相当のハートのダイヤを、虎視眈々と狙っていたのだ。
それも、モデルで、恋人の『コリーヌ』(ダニー・サヴァル)に贈るためである。
そうして、タイル張りをしながら、ダイヤのありかを知ると、まんまとダイヤを盗み出したのだった。
しかし……
「ヤバイ!」
警察に追われて逃走中、楽器店にもぐりこんだリシャールは、盗んだダイヤをギターに隠した。
何とか難を逃れた感じで、ホッ!と一息。
アパートに帰りついたリシャールは、その事をコリーヌに話すと、
「わかったわ!じゃ私が、そのギターを買ってくればいいだけの話じゃない。そうすれば5000万フランのダイヤが私のモノに…ウシシ……」
コリーヌは、すぐに楽器店に駆けつけると、「●●のギターを売ってちょうだい!」と店主に注文した。
だが、………「あいにく、その手のギターは5本ありまして、全てが売れてしまいました」
ガーン!!
そんな~あたしのダイヤが~!!
ちょうど、その頃……リシャールのアパートには、あのジゼルが訪ねて来ていた。
「あなたがダイヤを盗んだのね?!何もかもお見通しよ!」
ミレーヌもジゼルも、犯人はリシャールだと、とっくに気づいていたのだ。
「馬鹿な事をした………」
リシャールに気があるジゼルは、それ以上責める事も出来ない。
ミレーヌも寛大で、「きっと魔がさしたのよ……」と許してくれた。
そうして、「こうなったら、大統領と会う約束の日までに、ダイヤを取り戻さなければ!」とあっさり改心。
リシャールとジゼルがアパートを出ようとすると、そこへ落ち込んで帰ってきたコリーヌと鉢合わせする。
「誰よ?この女?!」
「ダイヤを見つけてちゃんと返すのよ!」
「何ですって?!この裏切り者!!」コリーヌは寝返ったリシャールにカンカンだ。
二人が出ていくと、コリーヌは同じモデル仲間『ヴォニー』に連絡した。
「こっちが先に5本のギターを売った相手を探すのよ!協力してくれるわね?!いいわよね?!」
有無を云わせぬ迫力のコリーヌに、友人ヴォニーもタジタジ。(欲に目がくらんだとは、このことだ)
こうして、有名スターに売られた、ギター探しの旅がはじまる。
はて、さて、いったい、どのギターにダイヤはあるのか?
タイトルと、シルヴィー・ヴァルタンが出演しているとだけ知っていた『アイドルを探せ』。
観たい、観たいなぁ~と思っていて、この度、やっと観る事が叶いました。
長々と前置きのあらすじを書いたのは、多分、自分のようにタイトルは知っていても、話の内容までは知らない人がいるんじゃないか、と思ったため。(なんせ50年以上も前ですもん)
それにしても、よくも、まぁ、こんな映画を作り上げたものである。
当時のフランスの有名歌手たちが、勢揃い。
しかも、ポップス、ロック、シャンソンと、色々なジャンルの歌手たちが歌ってくれてるのだから、ストーリーよりも、その音楽を楽しむべき映画なのですよ、これは!
リシャールとジゼルが探す、一本目のギターは、『シルヴィー・ヴァルタン』の元へ。
★シルヴィー・ヴァルタン……
無知な私も知ってる、フランスのアイドル的存在で、今や大御所の大スター。
タイトルになっている『アイドルを探せ』を歌い上げるヴァルタンは、超可愛い。(まだ、この時10代)
前歯がスキッ歯なのだが、それも特徴的。
この映画の後も、ヴァルタンは大活躍。
大ヒット曲『あなたのとりこ』は、近年、日本でも、ドラマ『ウォーター・ボーイズ』の主題歌にもなってますし、皆さん聴いた事があるはずです。(カラッ!とした夏にピッタリの名曲)
日本人はシルヴィー・ヴァルタンが大好き。
ヴァルタンも日本が好きで、何度も来日してくれている。
もう、好きすぎて、なんてったって、あのウルトラマンに出てくる『バルタン星人』は、シルヴィー・ヴァルタンから命名したんですもん。
2013年に来日した時は、バルタン星人と共演したりしてくれているシルヴィー・ヴァルタン。(失礼な日本人が、どうもスミマセン)
こんなヴァルタンが私も大好きである。
他にも、
「僕の心を信じて」 /EDDiE MiTCHELL(エディ・ミッチェル)
「どうにもならない」 /SOPHiE(ソフィー)
「大したことじゃないさ」 /LES SURFS(レ・サーフス)
~もしも君が愛してくれたなら~ /JEAN=JACQUES DEBOUT(ジャン=ジャック・デブー)
「僕が捕まえた天使」 /FRANK ALLAMO(フランク・アラモ)
「御用心なさい」 / NANCY HOLLOWAY(ナンシー・ホロウェイ)
「幸せを探せ」 /JOHNNY HALLYDAY(ジョニー・アリディ………シルヴィー・ヴァルタンの元ダンナ様)
などなど……60年代のポップスがいっぱい。
そして、トリを飾るのが、あの『シャルル・アズナブール』である。(5本目のギターを買った有名人)
★シャルル・アズナブール………
フランスのシャンソン歌手として有名な人で、このシルヴィー・ヴァルタンが劇中で歌っている『アイドルを探せ』の作詞も手がけている多才な方。
ここでは、最後のトリとして、『想い出の瞳』 を朗々と、貫禄で歌い上げているアズナブール。
この人の曲では、『忘れじの面影』が超有名。(絶対、誰でも聴いた事があるはずです!)
歌手と一緒に俳優業も、これまた有名で、
フランソワ・トリュフォーの『ピアニストを撃て』や、ジュリアン・デュヴィヴィェの『フランス式十戒』にも出演している。
日本にも、何度も来日してくれていて、2018年には、日本政府から、春の叙勲で旭日小綬章なんてものまで、受章されている。
シャルル・アズナブールも日本人から愛された方でした。(残念ながら、この受章の半年後、お亡くなりになってしまったが。享年94歳)
そして、そして、あの、『機動戦士ガンダム』の『シャア・アズナブル』は、このシャルル・アズナブールから、インスパイアされて、つけられた名前なのである。(ちょっとしたトリビア)
この映画が公開された当時(日本では1964年)、どれだけの、日本のクリエーターたちが、影響を受けたのか計り知れない。(吉田まゆみの漫画で『アイドルを探せ』ってのもあるし)
日本人にとっては、まさに、エポック的な作品だったんじゃないだろうか?
観れて幸せ、聴けて幸せである。
今宵は名曲に酔いしれて。
星☆☆☆☆☆。