2020年1月28日火曜日

映画 「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」

2017年 アメリカ。





今、『アイ,トーニャ』を観終わったところ。


特に、「この映画をどうしても観たい!」というわけではなかったのだが、最近、女優『マーゴット・ロビー』の存在を知って、彼女の主演する映画を1度は観ておきたかったのだ。



近作では、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが共演する『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも出演している彼女。


『ワンス・アポン……』でも彼女は実在の女性『シャロン・テート』を演じている。



その『ワンス・アポン……』で共演したレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットと一緒に、アメリカのトーク番組に出演している彼女。



その和やかそうなリラックスしているトーク番組で、彼女が口にした言葉が、なぜか?私を妙に惹き付けたのだ。



「私、今まで『スター・ウォーズ』を1度も観た事がないの。ハハハッ!」


ディカプリオもブラピも、ビックリして口アングリ。


「この話をすると本気で怒る人がいるのよ。私が観てないと言うと、それに本当にブチ切れる人がいて、それが可笑しくって………だから、今だに観てないのよ。」



アメリカ人にとっては『スター・ウォーズ』は《 誰もが1度は観る映画 》であり、《 公開すれば必ず話題になる映画 》。

日本人の我々からすれば、「別に、人それぞれ、好き好きがあるし、観ていない人もいるだろうさ……」と何気にスルーされるような言葉だろうが、アメリカでは、そうもいかない。



もはや『スター・ウォーズ』は、アメリカでは聖典扱いなのだ。



そんなアメリカ人にとっては、当たり前ともいうべき常識を、まるで根底から覆すような、これは、そんな発言なのである。


あっけらかんと話すマーゴットに合わすように、ディカプリオもブラピも会話は『今まで観た事がない映画』の話になっていき………


ブラピまでもが、今度は、「ぼくは『風と共に去りぬ』を観た事がない」と言い出した。


それに同調するようにマーゴットが、「私も観たことない」と言う。


「ウソでしょー!」と、またまたビックリするディカプリオが、たまらなく可笑しいのだ。





これを観て、天の邪鬼な私は、俄然、このマーゴット・ロビーという女優に興味をもってしまった次第なのである。


あっけらかんとしていて、飾り気がなくて、サッパリしている彼女の性格。


なんか好きだなぁ~。


そんな彼女の主演作を、さかのぼって色々探してみると、この『アイ,トーニャ』にぶち当たったのだった。



あのフィギュア・スケートで有名だったトーニャ・ハーディングの自伝的映画である。



もはや、あの事件から4半世紀も経ったのかと思うと、時の流れの速さと、自分自身の年齢を妙に意識してしまう。

当時は、日本のワイドショーやマスコミでも、この事件は、連日、取り上げられていたっけ。



華やかなスケート界に、突然起きた襲撃事件。



アメリカのオリンピック候補でライバル同志のトーニャ・ハーディングとナンシー・ケリガン。

二人の期待されているフィギュア・スケーター。



その片方、ナンシー・ケリガンが、何者かに、突然襲われて、スケート選手の命ともいうべき足を殴打される。


ケリガンは試合に出られなくなり、警察の捜査が進むと、その事件に関与していたのが、ライバルのハーディングの夫だった事が判明するのだ。


「ハーディングが、自分の夫に頼みこんで、ライバルのケリガンを故意に襲撃させたのか?!」


この疑惑は、マスコミの関心を大いに引き寄せて、ハーディングの名は、瞬く間に世界中に知れ渡る事になったのだった。




そんな疑惑の中、ケリガンの怪我も無事に治り、オリンピックの大舞台で、世界中が見守る中、あの事件がまたもや起こる。


ハーディングが次々、演技を失敗して、泣き出し、突然演技を中断したのだ。


すると審査員の前に行って、足を放り出したハーディング。


「スケート靴の紐が切れてしまって、これ以上演技が出来ない!もう一度チャンスを下さい!」と泣きながら訴えたのだ。



こんな事は前代未聞。


ハーディングの無理難題の要望に、それ以前のケリガンの事件で、すっかりケリガンに同情して味方していた観客たちからは、ヤジやブーイングの嵐が集中。



それでも特例として、演技のやり直しをするもハーディングは、結局、精彩を欠いて不出来な結果になる。


悲劇のヒロイン、ケリガンは見事、銀メダルを授賞したのだった。




そして、その後も、マスコミは追い回し続けて、やがてドロドロの裁判劇にまで発展していくのである。



このトーニャ・ハーディングを、あの『マーゴット・ロビー』が演じていたのか………。





この手の映画には、さほど期待していなかったが、ハーディングの知名度だけで観る事にした自分。(多分、マジメ~な感じか、ハーディングを悲劇のヒロインに仕立てあげてる映画なんだろうなぁ~と勝手に予想していた)



でも、意外な事に蓋をあけてみれば面白かった。



何が面白かったって、出てくる人物たちが、皆、《 ポンコツ 》なのだ。



ポンコツ過ぎるくらいポンコツ。


下品、下劣を絵にかいたようなハーディングの母親(まるでカマキリのような顔である。でも根っからのポンコツ人間)


ハーディングの夫のジェフ(DV夫)も、ハーディングの襲撃に関わったジェフの友人ショーン(ネジが揺るんだ誇大妄想狂)も……出てくる人、皆がポンコツな登場人物ばかり。




そして、そんなマーゴット演じるハーディングもポンコツ人間。

気品の欠片もなく、スポーツ選手なのにタバコは、どこでもスパスパ!(いいのか?)

DV夫と喧嘩しては、何度もよりを戻す繰り返し。



こんなハーディングなのだが、おかしな事に、観ていて、全然、悲壮感なんて感じないのだ。


途中、途中で、逆に笑いがこみ上げてくるくらいだった。



あの『ボヘミアン・ラプソディ』よりも断然、、こちらの方が面白かったほどである。

この映画がアカデミー賞取ればよかったのに………。(母親役は助演女優賞とってますけど)


そのくらい素晴らしいポンコツ人間を描いた映画である。(変な誉め言葉であるが(笑))



マーゴット・ロビーにも、とても感心してしまった。


ただ、あっけらかんとした性格だけじゃなく、確かな演技を備えている女優さんだわ、うん!



星☆☆☆☆。

超オススメでございます。