2007年 イギリス、フランス合作。
時は1982年。
『ウィル・プラウドウッド』(ビル・ミルナー)はイギリスに住む11歳の少年。
父は、ウィルがまだ幼い頃に、庭の芝刈り中に動脈瘤破裂で亡くなり、それからは母親と年老いた祖母、それに幼い妹の四人暮らしだ。
母親は、父親の突然の死が相当ショックだったのか………救いの手を《 神 》に求めた。
家族が揃って入信した《 プリマス同胞教会 》は、戒律の厳しさで有名である。
テレビもダメなら音楽もダメ。
学校が休みの日には、家族揃って教会に出かければならない。
そんな戒律の厳しい生活で暮らしていると、学校でも、だんだん浮いた存在になってくるウィル。
友達も出来ずに、ひとりでノートに落書きをしては、空想の世界に浸るのが日課だ。
学校でも、ビデオ視聴の授業があると、
「あぁ、ウィル、君は宗教でテレビを観てはダメだったな? しばらく廊下に出ていなさい。」
と、先生にまで言われる始末。(ここまで厳しい宗教もどうなんだろう)
でも、そんな扱いにも、とうに慣れてしまっているのか……ウィルは、おとなしく廊下に出ていった。
廊下で座りながら、落書きしたノートをボンヤリ眺めていると、隣の教室からひとりの少年が廊下に出されてきた。
「リー・カーター、何て子なんだ!君は!廊下に立ってなさい!!」
『リー』(ウィル・ポールター)と呼ばれた少年は、いかにも悪ガキ風で、全然反省した様子もない。
ふくれっ面をしてみせると、同じように廊下にいるウィルに気がついたようだ。
リーはウィルに近づいて来ると、ボールを投げつけて、その隙にウィルのノートを、おもむろに取り上げた。
「何だ?これ?」
「返してよ!」
リーは、ノートに書かれたウィルの空想の落書きを見ると、しだいに感心してきて、「これお前が描いたのか?」と聞いてきた。
性格も境遇も全く違う二人。
これがウィルとリー、二人の少年の友情の始まりだった………。
前回、書いていたように、映画『抵抗』熱を冷ます(忘れる)ように、何気に選んだ、この映画だったのだけど、これも、またもや《 大当り 》だったかも。
面白いし、感心したし、感動した!
特に、このウィルとリーの子役たちが素晴らしくて、最後まで釘つけ。
やはり、イギリスやフランスなどの映画になると、この手の映画は、格別に群を抜いている感じがする。(アメリカ映画には申し訳ないけど(笑))
たま~に、押しつけがましい、「全世界が泣いた!感動した!」なんてうたっている映画を見かけると、天の邪鬼な自分は即、敬遠してしまう。(そんなのに限って全く期待ハズレだからだ)
ウィルを気に入ったリー少年は、強引にウィルを自宅に連れてくると、映画『ランボー』のビデオをセットして見せた。
「何だ?!これは?!スゲー!格好いい!!『ランボー』最高!!」
まさにカルチャーショック。
それまで、全くテレビも映画も観た事のないウィル少年なのだから、全身に稲妻がはしったような衝撃なのだ。
卵から、突然、雛がかえったような感じ。
その瞬間から、頭の中は『ランボー!』、『ランボー!』で一杯で、
「僕は『ランボー』の息子だぁー!」と叫ぶ始末。
それを聞いたリー少年も「いいな、それ」って感じでノリノリ。
ちょうどリーは、自主製作で、映画を撮ろうと思っていたので、二人は《 ランボーの息子 》ってタイトルで映画を撮る事になるのだった。
ランボーの格好を真似て、走り回り、オモチャの銃を振り回しては、それを撮影する日々。(まぁ、ゴッコ遊びみたいなモノである)
時には、木からロープを垂らして、それに掴まり、ターザンの如く「ヤァー!」ってな感じで勇ましくも、湖にドボン!
病院に入院しているジイ様にランボーの扮装をさせては、「助けにきたぞ!ランボー!」なんて事も。(扮装させられているジイ様も分かってるのか、分かってないのか(笑))
なんか、こういうゴッコ遊びに夢中になっている二人を見ると、自分もタイム・スリップして、
「あぁ、こういう遊びやったなぁ~……」とか「あぁ、分かるなぁ~……」と、いちいち郷愁にひたってしまう。
こんなに二人が仲良くなったのも、理由があって、このリー少年の境遇も、また複雑なのだ。
父親もいなくて、母親は出ていって、暴君な兄貴に気を使いながら(11歳なのに、せっせと兄貴の世話や家事全般)の二人暮らし。
外では悪ぶっていても、埋められない寂しさを抱えているのだ。
こんなに仲良く自主製作の映画を撮りながら、遊んでいる二人に、やがて学校にやってきた交換留学生や、その取りまきたちが現れて、「俺らも映画に参加させろ!」と強引にやってくると、二人の間にも亀裂が……。
さぁ、どうなるのか?
笑わせて、最後にはホロリとさせて………。
これも、このまま埋もれさせてはいけないくらいの傑作である。
オススメ!
星☆☆☆☆☆。
※それにしても、シルベスター・スタローンは、こんな映画があるって事を知ってるのかなぁ~(笑)