2020年1月14日火曜日

映画 「リトル・ランボーズ」

2007年 イギリス、フランス合作。



時は1982年。


『ウィル・プラウドウッド』(ビル・ミルナー)はイギリスに住む11歳の少年。


父は、ウィルがまだ幼い頃に、庭の芝刈り中に動脈瘤破裂で亡くなり、それからは母親と年老いた祖母、それに幼い妹の四人暮らしだ。


母親は、父親の突然の死が相当ショックだったのか………救いの手を《 神 》に求めた。

家族が揃って入信した《 プリマス同胞教会 》は、戒律の厳しさで有名である。


テレビもダメなら音楽もダメ。

学校が休みの日には、家族揃って教会に出かければならない。



そんな戒律の厳しい生活で暮らしていると、学校でも、だんだん浮いた存在になってくるウィル。


友達も出来ずに、ひとりでノートに落書きをしては、空想の世界に浸るのが日課だ。


学校でも、ビデオ視聴の授業があると、

「あぁ、ウィル、君は宗教でテレビを観てはダメだったな? しばらく廊下に出ていなさい。」

と、先生にまで言われる始末。(ここまで厳しい宗教もどうなんだろう)



でも、そんな扱いにも、とうに慣れてしまっているのか……ウィルは、おとなしく廊下に出ていった。


廊下で座りながら、落書きしたノートをボンヤリ眺めていると、隣の教室からひとりの少年が廊下に出されてきた。

「リー・カーター、何て子なんだ!君は!廊下に立ってなさい!!」


『リー』(ウィル・ポールター)と呼ばれた少年は、いかにも悪ガキ風で、全然反省した様子もない。


ふくれっ面をしてみせると、同じように廊下にいるウィルに気がついたようだ。


リーはウィルに近づいて来ると、ボールを投げつけて、その隙にウィルのノートを、おもむろに取り上げた。


「何だ?これ?」

「返してよ!」


リーは、ノートに書かれたウィルの空想の落書きを見ると、しだいに感心してきて、「これお前が描いたのか?」と聞いてきた。


性格も境遇も全く違う二人。


これがウィルとリー、二人の少年の友情の始まりだった………。


前回、書いていたように、映画『抵抗』熱を冷ます(忘れる)ように、何気に選んだ、この映画だったのだけど、これも、またもや《 大当り 》だったかも。


面白いし、感心したし、感動した!


特に、このウィルとリーの子役たちが素晴らしくて、最後まで釘つけ。



やはり、イギリスやフランスなどの映画になると、この手の映画は、格別に群を抜いている感じがする。(アメリカ映画には申し訳ないけど(笑))



たま~に、押しつけがましい、「全世界が泣いた!感動した!」なんてうたっている映画を見かけると、天の邪鬼な自分は即、敬遠してしまう。(そんなのに限って全く期待ハズレだからだ)



ウィルを気に入ったリー少年は、強引にウィルを自宅に連れてくると、映画『ランボー』のビデオをセットして見せた。


テレビ画面には、あの、シルベスター・スタローンがランボーに扮して孤高に闘う勇姿が映し出される。


「何だ?!これは?!スゲー!格好いい!!『ランボー』最高!!」


まさにカルチャーショック。


それまで、全くテレビも映画も観た事のないウィル少年なのだから、全身に稲妻がはしったような衝撃なのだ。


卵から、突然、雛がかえったような感じ。


その瞬間から、頭の中は『ランボー!』、『ランボー!』で一杯で、

「僕は『ランボー』の息子だぁー!」と叫ぶ始末。


それを聞いたリー少年も「いいな、それ」って感じでノリノリ。


ちょうどリーは、自主製作で、映画を撮ろうと思っていたので、二人は《 ランボーの息子 》ってタイトルで映画を撮る事になるのだった。


ランボーの格好を真似て、走り回り、オモチャの銃を振り回しては、それを撮影する日々。(まぁ、ゴッコ遊びみたいなモノである)


時には、木からロープを垂らして、それに掴まり、ターザンの如く「ヤァー!」ってな感じで勇ましくも、湖にドボン!


病院に入院しているジイ様にランボーの扮装をさせては、「助けにきたぞ!ランボー!」なんて事も。(扮装させられているジイ様も分かってるのか、分かってないのか(笑))


なんか、こういうゴッコ遊びに夢中になっている二人を見ると、自分もタイム・スリップして、

「あぁ、こういう遊びやったなぁ~……」とか「あぁ、分かるなぁ~……」と、いちいち郷愁にひたってしまう。



こんなに二人が仲良くなったのも、理由があって、このリー少年の境遇も、また複雑なのだ。


父親もいなくて、母親は出ていって、暴君な兄貴に気を使いながら(11歳なのに、せっせと兄貴の世話や家事全般)の二人暮らし。


外では悪ぶっていても、埋められない寂しさを抱えているのだ。



こんなに仲良く自主製作の映画を撮りながら、遊んでいる二人に、やがて学校にやってきた交換留学生や、その取りまきたちが現れて、「俺らも映画に参加させろ!」と強引にやってくると、二人の間にも亀裂が……。


さぁ、どうなるのか?


笑わせて、最後にはホロリとさせて………。


これも、このまま埋もれさせてはいけないくらいの傑作である。

オススメ!

星☆☆☆☆☆。

※それにしても、シルベスター・スタローンは、こんな映画があるって事を知ってるのかなぁ~(笑)