2018年 ニュージーランド、アメリカ合作。
たった数分、『60分戦争』で世界が滅び、それから数千年後………。
生き残った人々は、巨大な車輪の上に、これまた巨大な都市を構えながら生活している。
常に移動しながら進み続ける巨大移動都市『ロンドン』は、小さな移動都市を、見つけては補食し、エネルギーを奪う。
まさに弱肉強食の世界。
そんな世界に、赤いマフラーで顔を隠した少女がひとり。
憎悪の目をたぎらせながら現れた。
少女の名前は、『ヘスター・ショウ』(ヘラ・ヒルマー)。
この映画を観たのは、数ヵ月前。
パッケージを最初に見たときは、何だか、荒廃した世界に、クリスティーナ・リッチの『ペネロピ』が現れたような変な感じを受けた。(ビジュアルが、なんせソックリなんですもん)
まぁ、赤いマフラーをとれば、豚の鼻が現れるはずもなく、そこには無惨に切りつけられた深い傷痕があるのだが………。
この傷痕が問題で、主人公『ヘスター』の過去が、とにかく、ズ~ンとするほど重くて暗くて、チョー悲惨。(ビジュアルだけでも痛々しくてインパクトがありすぎるのに)
考古学者の母親『パンドラ』が見つけた過去の遺物。
それをめぐって、同じように考古学を研究していた男『サディアス・ヴァレンタイン』(ヒューゴ・ウィーヴィング)に母を殺されてしまう。
自身も顔を斬られる8歳のヘスター。
命からがら、逃げ延びたものの、行く当てもなく、さ迷い続けて行き倒れ。
そこへ通りかかった、これまた過去の遺物であり、人間と機械を融合したアンドロイドなるもの(?)『シュライク』に拾われる。(まるで皮膚部分のないターミネーターって感じ)
『シュライク』に育てられるヘスター。
だが、成長しながらも、もっていきようのない悲しみと怒りは増すばかり。
そんな時に、このシュライクが、
「俺と同じように機械の体になれば、こんな苦しみからは解放されるぞ!」と、ヘスターの前に等身大のアンドロイドの骨組みを置く。(このシーンも、またゾゾッ!と寒気がする)
だが、移動都市『ロンドン』が近くまで来ていた情報を知ったヘスターは、シュライクの元を去る。
そこにいる、母のかたき、『ヴァレンタイン』を葬り去るために。
「俺を裏切ったのかぁ~?!『ヘスター・ショウ』!殺してやるぅ~!」
シュライクは怒り、執拗にヘスターを追い回すのだ。(やっぱりターミネーターやんけ)
そんなヘスターに絡むのが、こちらの面々。
●『トム・ナッツワッシー』(ロバート・シーアン)……全てはコイツが元凶。
移動都市『ロンドン』で育ち、戦争以前の考古学やメカに興味を持っている。
それはいいが、間の抜けたコイツ、ヘスターの敵討ちを邪魔したりする。(自身もヴァレンタインに突き落とされて殺されようとするのに)
コイツが、いちいち、でしゃばってこなければ、事はさっさと済んだことなのに………。
人間狩りをする連中には、
「おおーい!助けてくれ!」と手を振って見つかるは、
泥水をすすりながら、賞味期限のパンを貪りながらも、なんとか生きようとするヘスター相手に、
「そんなの飲めないし、食べられないよー!」と言う始末。
こんな男、ヘスターも、とっとと、見捨てればいいのに、何なんでしょ?、いつしか情を持ち始めるのだから、人って分からない。
●『キャサリン・ヴァレンタイン』(レイラ・ジョージ)……極悪な父親サディアスの娘。
完全に温室育ちでノホホ~ンと暮らしてきた彼女。
そんな彼女もやっと父親の裏の顔に気づいて「何とかせねば!」と思うのだが………。
●『アナ・ファン』(ジへ)……韓国人?なのかな?
とにかく頼りになる姐さま。
反移動(静止)都市に所属していて、奴隷にして売られそうになっているヘスターたちを助け出す。
『ジェニー・ハニヴァー号』なる赤い飛行船を操り、大空を自在に駆け巡る。
まぁ、他にも登場人物はいるが、主要なのはこれくらいか。
『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンは制作だけに関わって、監督は無名の方がやっているらしいが………それにしても、どこかで見たような絵面が多い気がする。
移動都市なんて、『ハウルの動く城』に見えるし、空中都市やジェニー・ハニヴァー号なんて、『ラピュタ』を想像させる。
まるで宮崎駿の世界、そのもの。
その中で、ターミネーターもどきやら、ハードな戦争、愛憎劇がノンストップで描かれるのだから、見終わるとヘトヘト。
本当にクッタクタに疲れる。
あまりにも限られた時間の中に、なんやかんやを詰め込みすぎて、余裕や息をつく場面すらないのだ。(だって最初の方で刺されたヴァレンタインなんて、次の瞬間にはピンピンしてるし、足を怪我して歩けないほどのヘスターも、次の日はなんともないように、全速力で走り回るんですもん。オカシイでしょ?
なんだか、いろんなモノを足しすぎて、かけあわせすぎると、よどんだ色になる、といったところだろうか。
星☆☆☆である。
ただし、主演の『ヘスター』を演じたヘラ・ヒルマーにだけは、特別に何か「ビビッ!」としたものを感じた。
傷痕のない素顔の彼女の映画を、是非、観てみたいものだ。
もしかしたら、この後に、大化けしてブレイクするやもしれない。
そんな予感がする。