1995年 アメリカ。
「悪いな、『若いの』、他をあたってくれ」
「俺は『若いの』じゃない!ちゃんとした名前がある!『イージー・ローリンズ』だ!俺には仕事が必要なんだ!」
必死の訴えもむなしく、仕事を突然、首になった『イージー』(デンゼル・ワシントン)。
時は、1948年。
まだまだ人種差別がはびこる時代で、黒人がまっとうに職を得て暮らしていくには、厳しい時代。
そんな時代にイージーは、やっと庭付きの、こじんまりとした一軒屋を買ったばかり。
(家さえあれば何とかなる。そしてここは、俺の大切な『城』だ……)
だが、ローンを組んでいて、支払い日は、日に日に迫ってくる。
(明日から無職。どうすればいいんだ……イヤだ!あの家を絶対に手放したくない!)
そんなイージーが、ふてくされてやって来る所といえば、昔からの知り合いで、元ボクサー、『ジョッピー』のbar。
昼間から、求人広告を見ながらbarの窓際に陣取って、ブツブツ言っているイージー。
そこへ見知らぬ男が、フラリとやって来て、カウンター越しにジョッピーと話をしはじめた。
しばらくすると、ジョッピーが、イージーを手招きして、こちらに来い!と合図した。
(何ごと?)と思うイージー。
男は、「仕事を探してるんだって?」と聞いてきた。
男の名は『オルブライト』(トム・サイズモア)。
大富豪カーターの婚約者で失踪した女性『ダフネ』(ジェニファー・ビールス)を探しだしてほしい、と言うのだ。
探偵でも何でもないイージーは、躊躇するが、家のローンの為、(ええい!)背に腹は変えられぬ。
「分かりました」
こうして素人探偵になったイージー。
難解な調査がはじまるのだが……。
デンゼル・ワシントンが若いです。
若いし、まだまだ、この時は男前で超カッコイイ。
やっぱり、同じ黒人で、この映画に出演しているドン・チードルには、申し訳ないが、この時代のデンゼル・ワシントンは、人種関係なく惚れ惚れするくらいカッコイイのだ。
主役しか当たらない、特別なライトが、このデンゼル・ワシントンを中心に置いて、光らせてくれている。
デビューして、間もない頃、黒人俳優としての先駆者『シドニー・ポワチエ』(黒人俳優として初のアカデミー賞主演男優賞を受賞した)の教えを、しっかり胸に刻んだデンゼル・ワシントン。
「いいか?何でもかんでもやってくる役に安易にとびつくな!君のキャリアは最初の3、4本で決まる。待つ事だ。待てばその内に、君が信用できる役が、きっと向こうからやって来るはずだ」
シドニー・ポワチエは、常に変動していく映画界の荒波の中で、黒人俳優として苦労して、苦労して、長年生き残ってきた人。
そんな中で才能があっても、夢破れて消えていった俳優たちを、何人も見送ってきたのだろう。
「この若者は光る才能を持っている。決して、この俳優を潰してはいけない!ちゃんと導いてやらなければ……」
そんな若手のデンゼルを気遣うような愛情溢れるシドニー・ポワチエの教えである。
その教えを、ちゃんと守ったデンゼル・ワシントン。
着々とキャリアを積んでいき、主演映画も増えてきた頃の、この映画である。(後に、黒人としてシドニー・ポワチエに次いで二人目、デンゼル・ワシントンも見事、アカデミー賞主演男優賞を受賞する)
監督はカール・フランクリン。
デンゼルとは『タイム・リミット』という映画でもタッグを組んでいて、中々どちらも面白い映画である。
何気に良い感じの雰囲気というか空気感を生み出すのが、お上手な監督さんなのだ。
この映画、『青いドレスの女』でも、それが上手くいっていて、謎解きやストーリーはたいした事なくても、それに、だいぶ救われているような感じである。
『タイム・リミット』では灼熱の暑さや湿地帯の空気を、
この『青いドレスの女』では1940年代の住宅街や街並みに流れる渇いた空気を感じられたりするのだ。
どちらも『傑作』とはいえないけど『佳作』として、「まぁ、面白いよ」と気軽にオススメできるかも。
後、あの『フラッシュダンス』のジェニファー・ビールスを久々に観れる。
「懐かしい~」我々世代には、中々、感慨深いものである。
でも、この映画では、突然現れては、終盤また、どこかへと去っていく彼女。
現実でも、この映画以降、とんと姿を見かけなくなったが、彼女の事だから、またヒョッコリと、どこかの映画で我々の前に現れるやもしれない。
星☆☆☆。