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2019年12月22日日曜日

映画 「移動都市 / モータル・エンジン」

2018年 ニュージーランド、アメリカ合作。







たった数分、『60分戦争』で世界が滅び、それから数千年後………。


生き残った人々は、巨大な車輪の上に、これまた巨大な都市を構えながら生活している。


常に移動しながら進み続ける巨大移動都市『ロンドン』は、小さな移動都市を、見つけては補食し、エネルギーを奪う。


まさに弱肉強食の世界。



そんな世界に、赤いマフラーで顔を隠した少女がひとり。

憎悪の目をたぎらせながら現れた。


少女の名前は、『ヘスター・ショウ』(ヘラ・ヒルマー)。





この映画を観たのは、数ヵ月前。




パッケージを最初に見たときは、何だか、荒廃した世界に、クリスティーナ・リッチの『ペネロピ』が現れたような変な感じを受けた。(ビジュアルが、なんせソックリなんですもん)



まぁ、赤いマフラーをとれば、豚の鼻が現れるはずもなく、そこには無惨に切りつけられた深い傷痕があるのだが………。



この傷痕が問題で、主人公『ヘスター』の過去が、とにかく、ズ~ンとするほど重くて暗くて、チョー悲惨。(ビジュアルだけでも痛々しくてインパクトがありすぎるのに)





考古学者の母親『パンドラ』が見つけた過去の遺物。


それをめぐって、同じように考古学を研究していた男『サディアス・ヴァレンタイン』(ヒューゴ・ウィーヴィング)に母を殺されてしまう。


自身も顔を斬られる8歳のヘスター。


命からがら、逃げ延びたものの、行く当てもなく、さ迷い続けて行き倒れ。


そこへ通りかかった、これまた過去の遺物であり、人間と機械を融合したアンドロイドなるもの(?)『シュライク』に拾われる。(まるで皮膚部分のないターミネーターって感じ)


『シュライク』に育てられるヘスター。


だが、成長しながらも、もっていきようのない悲しみと怒りは増すばかり。


そんな時に、このシュライクが、

「俺と同じように機械の体になれば、こんな苦しみからは解放されるぞ!」と、ヘスターの前に等身大のアンドロイドの骨組みを置く。(このシーンも、またゾゾッ!と寒気がする)



だが、移動都市『ロンドン』が近くまで来ていた情報を知ったヘスターは、シュライクの元を去る。

そこにいる、母のかたき、『ヴァレンタイン』を葬り去るために。




「俺を裏切ったのかぁ~?!『ヘスター・ショウ』!殺してやるぅ~!」



シュライクは怒り、執拗にヘスターを追い回すのだ。(やっぱりターミネーターやんけ)






そんなヘスターに絡むのが、こちらの面々。




●『トム・ナッツワッシー』(ロバート・シーアン)……全てはコイツが元凶。


移動都市『ロンドン』で育ち、戦争以前の考古学やメカに興味を持っている。


それはいいが、間の抜けたコイツ、ヘスターの敵討ちを邪魔したりする。(自身もヴァレンタインに突き落とされて殺されようとするのに)

コイツが、いちいち、でしゃばってこなければ、事はさっさと済んだことなのに………。


人間狩りをする連中には、

「おおーい!助けてくれ!」と手を振って見つかるは、


泥水をすすりながら、賞味期限のパンを貪りながらも、なんとか生きようとするヘスター相手に、

「そんなの飲めないし、食べられないよー!」と言う始末。



こんな男、ヘスターも、とっとと、見捨てればいいのに、何なんでしょ?、いつしか情を持ち始めるのだから、人って分からない。





●『キャサリン・ヴァレンタイン』(レイラ・ジョージ)……極悪な父親サディアスの娘。



完全に温室育ちでノホホ~ンと暮らしてきた彼女。

そんな彼女もやっと父親の裏の顔に気づいて「何とかせねば!」と思うのだが………。




●『アナ・ファン』(ジへ)……韓国人?なのかな?



とにかく頼りになる姐さま。

反移動(静止)都市に所属していて、奴隷にして売られそうになっているヘスターたちを助け出す。

『ジェニー・ハニヴァー号』なる赤い飛行船を操り、大空を自在に駆け巡る。





まぁ、他にも登場人物はいるが、主要なのはこれくらいか。



『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンは制作だけに関わって、監督は無名の方がやっているらしいが………それにしても、どこかで見たような絵面が多い気がする。


移動都市なんて、『ハウルの動く城』に見えるし、空中都市やジェニー・ハニヴァー号なんて、『ラピュタ』を想像させる。


まるで宮崎駿の世界、そのもの。




その中で、ターミネーターもどきやら、ハードな戦争、愛憎劇がノンストップで描かれるのだから、見終わるとヘトヘト。


本当にクッタクタに疲れる。


あまりにも限られた時間の中に、なんやかんやを詰め込みすぎて、余裕や息をつく場面すらないのだ。(だって最初の方で刺されたヴァレンタインなんて、次の瞬間にはピンピンしてるし、足を怪我して歩けないほどのヘスターも、次の日はなんともないように、全速力で走り回るんですもん。オカシイでしょ?




なんだか、いろんなモノを足しすぎて、かけあわせすぎると、よどんだ色になる、といったところだろうか。


星☆☆☆である。


ただし、主演の『ヘスター』を演じたヘラ・ヒルマーにだけは、特別に何か「ビビッ!」としたものを感じた。


傷痕のない素顔の彼女の映画を、是非、観てみたいものだ。


もしかしたら、この後に、大化けしてブレイクするやもしれない。

そんな予感がする。