1958年 アメリカ。
『スコティ』こと、『ジョン・ファーガソン刑事』(ジェームズ・スチュワート)は、同僚の刑事と一緒に犯人を追跡していた。
いつしか、二人の追跡はビルの上から上へと変わっていき、それでも夢中に追いかけるが……同僚は、あえなく転落。
真っ逆さまに、地面へと落ちていった。
辛うじて縁に捕まり、助かったスコティだったが、真下を見ると、その高さが、勢いよくスコティの目に襲いかかってくる。
《高所恐怖症》………。
こうして、スコティは刑事を辞めたのだった。
しばらくして、女友達『ミッジ』の働くオフィスを訪ねたスコティ。
「スコティ、大丈夫?」
ミッジの問いかけに、おどけて答えるスコティは、
「全然、大丈夫さ。高所恐怖症だって少しずつ慣らしていけばいいんだ」
高い本棚の本を取る為の、踏み台を見付けたスコティは、その踏み台(30cmくらい)に乗ると、
「こうやって慣らしていくんだ。上を見る!下を見る!上を見る!ってね」とやりだした。
だが、次の瞬間、下を見た時、踏み台の高さがズームされ、もの凄い勢いで、スコティの眼前に迫ってくる。
(こんな………わずか30cmの高さなのに………)
ガタガタ震えて、大汗をかき、そのまま失神。
崩れ落ちるスコティを、ミッジは、なんとか支えた。
「あぁ~スコティ、可哀想なスコティ……」
(俺はもうダメなのか………)
意気消沈してガックリ落ち込むスコティ。
そんなスコティの元へ、学生時代の友人『エルスター』が訪ねてくる。
「警察を辞めたんだって?実は君に相談があるんだ。妻のことで………」
どうも妻の『マデリン』の様子が、このところ、おかしくて調査してほしい、という依頼。
(何で俺が?……)と、思うスコティだったが、友人の頼みを無気に断る事もできず………。
渋々、『マデリン』(キム・ノヴァク)の尾行を開始したスコティ。
久しぶりに取り上げるヒッチコック作品である。
この作品は、以前、ここで紹介した『裏窓』の流れで、「同じジェームズ・スチュワート主演」というので観たのだけど…………ずいぶん怖い印象だった記憶がある。
怖いのは、冒頭で取り上げているような『高所恐怖症』の高さへの恐怖じゃない。
主演のジェームズ・スチュワートの、段々と変わっていく変貌ぶりに、ちょっとドン引きするくらい怖かったのだ。
この後、人妻『マデリン』(キム・ノヴァク)に恋してしまうスコティなのだが、友人の妻でもあるし、マデリン自体にも色々と問題ある。
先祖の亡霊?に憑依されているというのだ。(急にオカルト話)
そんなマデリンが自殺しないように見張りを続けるスコティ。
でも、突然、海に身を投げしたりするマデリンにハラハラする。
始終襲ってくる衝動的な自殺願望は、本当に先祖の霊の仕業なのか?
そして、とうとう、ある日、教会の高い塔の階段を一目散に駆け上がってしまうマデリン。
スコティは高所恐怖症ゆえ、追いかける事ができずに、階段の途中でガタガタ震えて(もう、無理!)案の定へたばってしまう。
(自分が高所恐怖症ゆえ、マデリンは死んでしまった…………)
高所恐怖症とマデリンの死でダブル・ショックのスコティ。
それからは、自分を責めて、街をさまよい続ける日々……。
そんなスコティの前に、死んだマデリンによく似た女性『ジュディ』(キム・ノヴァク……ひとり2役)が現れた。
髪の色も、髪型も、化粧やファッションさえ違うジュディの姿。
(でも、よく似ている………まるでマデリンが蘇ったんじゃないのか?)
そんなジュディの姿に、吸い寄せられるようにフラフラと近づいていくスコティ。(もう、この辺りから相当アブナイ奴!)
「何よ!あんた?!」
こんな感じで、マデリンに似たジュディをストーカーの如く付け回すスコティ。
やがて、自分から声をかけてジュディと付き合うまでこぎ着けると、スコティの、ジュディに対する要求は、どんどんエスカレートしていく。
死んだマデリンの事をジュディに告白すると、
「一生のお願いだ!マデリンの格好をしてみてくれないか?」
なんて変質的なお願いを堂々としちゃうのだ。(ゲゲッ!)
こんな風に変わっていく『スコティ』(ジェームズ・スチュワート)に寒気がしてしまう。
『裏窓』でも、覗き見をする役だったが、でも、それは(殺人犯かもしれない……)という大義名分があればこそ、なんとかギリギリ許されたのだけど。
どうも、これは、変態的というか、いささか度を越しているというか………
ジュディを付け回したり、死んだマデリンと同じ格好を無理矢理強要するなんて。(そりゃ、気持ちは分かるんだけど……普通は理性が勝って押し留めるだろうに)
もちろん、ジュディがマデリンにそっくりなのは、ある《 カラクリ 》があるのだけど。(それは、ここでは語るまい)
今から観ようという人の為に、伏せておこうと思う。
これを観た時、ある意味、同じヒッチコック作品の『サイコ』よりも怖いかもと思ってしまった。
私は怖かったです。(ジェームズ・スチュワートが。何度も言うがドン引きするほどに)
この怖さと、珍しい殺人トリックで、これをヒッチコックのベスト1に押す人もいるとか。(確かに、トンデモないトリックは面白いんだけど)
でも、執着し過ぎて、しつこすぎるのは、あんまり私の好みじゃないんで、とりあえず星☆☆☆にしておこうと思います。