活動期間1968年〜2000年。
《活動期間》なんて、こんな書き方をするのも変な話かも。
だって『アラン・スミシー』なんてのは、元々《この世には存在しない人物》なのだから。
それでも、長い映画の歴史の中で『アラン・スミシー』の名前はちゃんと残っている。
何本か、映画を監督した名前として。
『アラン・スミシー』は、その昔、映画界が勝手に創り上げた架空の監督名なのである。
こんなアラン・スミシーの名前を私が知ったのは、デニス・ホッパーとジョディ・フォスターが共演した映画『ハートに火をつけて(1991年)』を観た時だった。
偶然、殺しの現場を見てしまったジョディ・フォスターに殺し屋が差し向けられるのだが、その殺し屋デニス・ホッバーが彼女に一目惚れしてしまう、ちょっと変態チックなお話。
私、当時、コレを観たんだけど、まぁまぁ面白かった気がする。
でも、「誰だ?この『アラン・スミシー』って?」と聞いたこともない監督に「無名の監督か?」と思ったくらいだった。
結局、後年、この映画は、主演兼監督もしたデニス・ホッパーが、勝手に編集した映画制作会社に激怒してしまって、
「監督のクレジットから外してくれ!」
と、猛烈に激怒した為、架空の監督である『アラン・スミシー』をたてた経緯を知る事になるのだけど……
でも、時はビデオからDVDに移行する時代……
あらたにデニス・ホッパーが再編集して完成させた『バック・トラック(改名)』が世に出ると、瞬く間に、この『アラン・スミシー』の事も世間にバレバレになってしまう。
そうして驚くなかれ!
この映画、その後に更に《完全版》が出来ていたらしい。
『ハートに火をつけて(99分)』
『バック・トラック(108分)』
『バック・トラック』完全版(180分)』(ゲゲッ!3時間も!)。
こんな長〜い、変態殺し屋の恋愛サスペンスを、誰が観るねん!(笑)
でも、映画界にしてみれば、『アラン・スミシー』は、昔から一部の映画関係者だけが知る、それこそ、タブー化されていた秘密。
こんなのを誰も彼もが知って、監督スミシーの名を見れば、
「あっ、この映画はなんかトラブルがあったんだな!」なんてのが容易に分かってしまう。
すると、この『アラン・スミシー』の偽名も段々と使い辛くなってくるのだ。
その後は、ご多分に漏れず、『アラン・スミシー』を茶化す輩(やから)まで現れはじめた。
とうとう、アラン・スミシーを題材にした『アラン・スミシー・フィルム』なんてタイトルで映画が作られてしまうのだ。(こういう馬鹿なウケ狙い。どこにでもいるよねぇ~)
そうして2000年。全米監督協会は『アラン・スミシー』使用を、完全に取りやめる事となったのでありました。
こんな色々な因縁のある『アラン・スミシー』映画は以下の通り。
★『夏の日にさよなら(1968)』主演、バート・レイノルズ。
★『ガンファイターの最後(1969)』主演、リチャード・ウィドマーク。
★『学生の死体(1981)』
★『ハリー奪還(1986)』
★『クライシス2050(1990)』(日本出資の駄作として悪評判)
★『ハートに火をつけて(1991)』
★『ヘルレイザー4(1996)』
★『アラン・スミシー・フィルム(1998)』
★『美しき家政婦 ウーマン・ウォンテッド(2000)』出演兼、実際の監督、キーファー・サザーランド。
まぁ、いろんなジャンルがあることよ。
その中で、私が、今、観てみたいのが『ガンファイターの最後』。
主演のリチャード・ウィドマークと監督のロバート・トッテンが対立して、結局監督が降板。
その後、あの有名なドン・シーゲル監督(ダーティハリーなど)が請け負うも、トッテンもシーゲルも、
「監督で名前が載るのは、絶対ヤダヤダ〜!」
とゴネて、アラン・スミシー名義になった、これまた、いわく付きの作品。
でも、何気にこの映画、評判が良いのだ。(ドン・シーゲルの力?)
愚作もあれば、良作もあるアラン・スミシー映画の数々。
ネタに、1度はご覧になってみるのもいいかもしれない。
※ところで、映画会社も、今はどんな架空の監督名を使っているんだろう?(まぁ、それがバレちゃしょうがないんだけどね (笑) )