2021年11月11日木曜日

映画 「マスク・オブ・ゾロ」

 1995年  アメリカ。




『ディエゴ・デ・ラ・ベガ』(アンソニー・ホプキンス)は、美しい妻『エスペランサ』と産まれたばかりの娘『エレナ』の3人で幸せな暮らしを営んでいたが、彼にはもう一つの顔があった。


スペインによる植民地支配で苦しむメキシコの市民たち。


それを陰ながら救いたい!


黒いマスクとマントに身を包んで悪漢たちを成敗する。そう!彼こそは正義の味方ゾロなのである。



「おのれぇ~!ゾロめ〜!!」

そんなゾロの活躍に苦虫を噛み潰しているのが、カリフォルニア総督で、悪の大ボス『ドン・ラファエル・モンテロ』(スチュアート・ウィルソン)。


農民を囮にしてゾロにひと泡吹かせよう策を練るも、ゾロを助けた幼いホアキン&アレハンドロ兄弟の邪魔だてで、今回も大失敗する。(「チクショー!」by ラファエル)



「ありがとう…」

ゾロはそんな兄弟に感謝の気持ちをこめて、自身のメダルを贈った。



そうして、その夜、ゾロのマスクをとって愛しい妻子の元へ帰ったディエゴ。



だが、なんと!ラファエルとその部下たちが、その後をつけていたのだ。


「お前がゾロだったのかぁ~!」

憎きゾロの正体がディエゴだったのもショックだったが、ひそかに横恋慕していたエスペランサを妻にしているのにも、Wショックのラファエル。


もう、腸が煮えくり返るようで、憎さは数千倍である。


ラファエルの部下が、ディエゴに銃口を向けた。


それを咄嗟に庇って、身代わりに撃たれた妻エスペランサ。


「エスペランサァァーーーーッ!」


エスペランサは亡くなり、ディエゴは呆然。

敵であるラファエルも(ガ~ン!)大ショックである。


だが、ラファエルはすぐに気持ちを立て直すと、「エスペランサの残した娘だけでも……」と幼いエレナを奪い去った。(人さらい)


「その男は牢獄にぶちこんでおけ!」

部下に命じてディエゴを投獄させると、自身は、エレナを連れてカリフォルニアへと引き揚げていくラファエル。



こうして正義の味方《ゾロ》は町から消え去り、暗い牢獄生活。


愛しい妻は殺されて、娘までもさらわれてしまったディエゴの心は空っぽ。


長い20年の年月が過ぎてゆく………………




だが、ある日、牢獄で過ごすディエゴの耳にとんでもない噂が入ってきた。


「カリフォルニア総督ラファエル様がお帰りになるらしいぞ!」


それまで空っぽだったディエゴの心に、メラメラと灯りはじめる復讐の炎🔥。


「奴と刺し違えてもいい……」


ディエゴは脱獄し、帰還したラファエルの姿をとらえる……だが、その隣には若くて美しい娘の姿が。


「エレナ?……あれは私の娘エレナなのか?」



美しく成長した『エレナ』(キャサリン・セタ・ジョーンズ)は、何も知らされず育てられて、完全にラファエルを父親だと思いこんでいたのだった。


エレナの出現に、すっかり出鼻をくじかれたディエゴは、すんでのところで復讐を思いとどまった。



一方、その昔、ゾロからメダルを貰ったホアキン&アレハンドロ兄弟も成人へと成長していた。


軍の圧政に苦しむ時代ゆえ、兄弟は盗賊稼業に勤しむ毎日だったが。


だが、金品強奪に成功したのも束の間、冷徹な軍隊長『ラブ大尉』に、兄ホアキンの方は殺されてしまう。


「チクショー!」

ホアキンがゾロから貰ったメダルを自分の首にかけて、弟『アレハンドロ』(アントニオ・バンデラス)は復讐を誓う。



そんなアレハンドロに、ディエゴは町の酒場で偶然出会ってしまう。


「その首のメダル……もしかして、昔、私を助けた兄弟の片割れか?」


「あんたが《ゾロ》?!」

兄を殺されて、やけ酒をあおりながら復讐話をするアレハンドロに、ディエゴは同情しながらも、(まぁ、今のコイツが乗り込んでいっても返り討ち合うのが、せいぜいだろう……)と思うのだが、ディエゴにはもう一つの考えが浮かんできた。


(だが、私がこの青年を鍛え上げれば、もしかして……)


「ついて来い!」


ディエゴはアレハンドロを伴うと、ある秘密の隠れ家へとやってきた。


「何なんだ?ここは?!もしかしてゾロの隠れ家なのか?!」


キョロキョロするアレハンドロに、剣をさし向けるディエゴ。


「今から、私がお前を鍛え上げてやる!!」



そう、剣術も武術も、私の全てを叩き込んでやる!


それにしても、この身なりも相当にヒドイ……紳士としてのマナーも1から教えてやらねば……トホホ……


こうして《初代ゾロ》ディエゴが、《2代目ゾロ》アレハンドロを特訓する日々が始まるのだった………。




またもや、長々と書いてみた『マスク・オブ・ゾロ』の序章。(読んでくれる人いるのか?)


でも、ここまでは、どうしても丁寧に書きたかったので、どうかご容赦を。



この『マスク・オブ・ゾロ』、当時『デスペラード』で勢いづいていたアントニオ・バンデラスや、『羊たちの沈黙』で賞を総なめしたアンソニー・ホプキンスなどの出演で、観る前から期待値はおおいに上昇していた。(ヒロインのキャサリン・セタ・ジョーンズも綺麗だし)



オマケに監督は『007 ゴールデンアイ』を撮ったマーティン・キャンベルですもん。


アクション部分も「大丈夫だろう!」と期待は膨らむばかり。



で、当時、観た感想だけど……やっぱり面白かった。


「良く出来てるなぁ~」と、期待を裏切らない仕上がり具合に感心した記憶がある。



もちろん、出演者や監督も良いんだけど、この『マスク・オブ・ゾロ』、脚本がとにかく素晴らしいのだ。(脚本には3人の人物が関わっているらしいが)


冒頭に書いたモノを読んでみても分かるように、それぞれの登場人物たちの過去や背景、行動の動機なんてのが、「これでもか!」ってくらい、初めて観る人にも親切丁寧で分かりやすく描かれている。


敵役のラファエルにしても、その複雑な心情などが観ていて分かるのだから、相当に練りに練られた脚本だったんだろう。



だから、こういう映画は、何度でも繰り返し観るごとに発見があるし、長い年月にも耐えられるのだ。



初見では主役である『アレハンドロ』(アントニオ・バンデラス)の気持ちで観るのもいいだろうし、次に観る時は『ディエゴ』(アンソニー・ホプキンス)の想いに寄り添って観るのも良し。


女性なら、数奇な運命に振り回される『エレナ』(キャサリン・セタ・ジョーンズ)に感情移入だってできる。


悪党『ラファエル』(スチュアート・ウィルソン)の気持ちで観るなら、その叶わぬ恋に同情したり、本当の父親でもないのに、エレナを育てながら芽生えてくる父性に、複雑な気持ちを垣間見ることもできるだろう。



《ゾロ》の闘いをはさみながらも、これは良質な《人間ドラマ》なのである。



そんな中でも、面白いと思う部分は、やっぱり『アレハンドロ』が徐々に成長して、変わっていくところ。


粗野で汚い身なりをして、マナーも剣術も何も知らない無作法な男が、ディエゴを指南役にして、変わっていく様(さま)は痛快である。



そうして、エレナの前に現れたアレハンドロは、もう立派な紳士のイケメンさん。




《ゾロ》の強さを手に入れて、ついでに恋人もゲットしてしまうアレハンドロの姿に、男ならきっと憧れてしまうはずである。(この頃のバンデラス、カッコ良かったなぁ~)



続編の『レジェンド・オブ・ゾロ』も面白かったし、これ以降《ゾロ映画》が作られなくなったのも、やっぱりコレが最高峰の《ゾロ映画》だと、誰もが認めているからなのかもしれない。



星は、もちろん☆☆☆☆☆。


やっぱり男でも《変身》するのって楽しいよね。