1972年 アメリカ。
頭から突き出た鋭い角を持ち、鋭利な牙をたくわえた、この顔。
顔だけ見れば充分に怖そうだが、全身像になれば、(アララ……)途端にオマヌケさんに見えてしまう (笑) 。
この、《ガーゴイルズ》とは何ぞや???
そもそも『ガーゴイルズ』とは悪魔の末裔らしいのだが、はるか遠い昔に、神との闘いに敗れて、暗い地底へと逃れて細々と生活していた種族らしい。
やがて、地上には神に創られた人間たちが繁栄を築き始める。
だが、ガーゴイルズも黙っていない。
600年に1度の孵化(ふか)のタイミングで仲間が一挙に増えた時、地上を侵略しようとする…………のだけど、産まれたばかりのガーゴイルズに、『戦術』なんて知恵があるはずも無く、人間たちに、ことごとく粉砕されてしまう。(お馬鹿さん?(笑) )
ああ、憐れ、ガーゴイルズよ。
生き残った何匹かは、またもや地底の穴ぐらへ帰って隠匿生活。
不気味なビジュアルのインパクトで、地上では、その伝説だけが細々と語り継がれていく。
「チクショー!今にみておれよ!今度こそ侵略してやるぅーーー!」(by ガーゴイルズ怒りの決意)
………そうして、またもや長い時は流れて………
地上では20世紀をむかえた頃、ある親子がニューメキシコの砂漠を何時間もかけて、車をとばしていた。
運転しているのは『マーサー・ポリー博士』(コーネル・ワイルド)で、隣に座るのはピチピチギャルの一人娘『ダイアナ』(ジェニファー・ソルト)である。
ポリー博士は、悪魔研究で有名な著名人。
離婚した妻と暮らしている娘が、久しぶりに訪ねてくると、その娘を連れて取材先へと向かっているのだ。
『悪魔に関する有力情報あり!』の手紙は、即座にポリーの好奇心を揺り動かしたようである。(こんな不気味な仕事じゃ離婚されてもしょうがないかも。それにしても若い娘がよく嫌がらないなぁ~)
そんな親子は、なんとか砂漠のド真ん中にある目的地『ウイリーおじさんの博物館』なるオンボロ小屋にたどり着いた。
「今まで誰にも見せた事がない……それをお見せしよう。その代わり、本が出版されればワシも権利を頂く」(がめついジジイ)
ウイリー老人は、二人を離れの納屋に連れていくと、厳重に中から鍵をする。
「陽が沈むと、この辺りは危ないんでね」
納屋の奥には天井から何かが吊られていて、布がかけられていた。
それを捲(めく)ると、そこに表れたのは……奇怪な角と翼がある《悪魔》のような骸骨標本。
「ハハ、素人が作ったにしては良く出来ているが………コレが見せたかったモノ? からかうのもいい加減にしてくれ!帰る!」
ポリー博士はプンプンしてドアに向かおうとする。
「待ってくれ!コレは本物なんだ!!この辺りには昔から妙な伝説があるんだ!」
ウイリー老人の懸命な叫びに、娘ダイアナも「話だけでも聞いてみれば?」と助太刀する。
ポリー博士も「ヤレヤレ……」と言いながら、なんとか思い直してとどまってくれた。
暗い納屋の中で、ダイアナが録音テープをセットすると、老人の口からは、ある言葉が流れ始めた。
「ナカテカチンコ………」
ププッ。
老人が英語で何度もその言葉を連呼する度に、日本人の私なんかは、勝手に脳内変換されてしまい、妙に笑ってしまう。
『ナカテカチンコ……ナカテカチンコ……』
決して卑猥な言葉ではないのでご勘弁を (笑) 。
コレ、この土地の先住民が悪魔につけた名前らしいのだ。
そんなウイリー老人が『ナカテカチンコ』を連呼していると突然納屋全体が揺れだし、悪魔の爪のようなモノが窓ガラスを打ち破って覗かせた。
「ギャアアアーーーーッ、ギャアアーーーーーッ!!」
納屋の外にまで広がるダイアナの絶叫。(こんな腹から声を出して力いっぱい叫ぶ大絶叫、久しぶりに聞いたわ (笑) )
柱は倒れて老人は下敷きになり、ランプの火はたちまち納屋全体に燃え広がる。
ポリー博士は、悪魔の骸骨標本の頭部だけを抱えて、娘ダイアナと命からがら納屋を脱出した。
それと同時に納屋は崩れ落ち、燃え盛る豪炎が包み込む。
二人は車に乗ると猛ダッシュで、暗闇の砂漠の道を走らせた。
だが、安心したのも束の間、走っている車の天井に、あの『ナカテカチンコ』が飛び移ってくる。
「ギャアアアーーーーッ、ギャアアアーーーーッ!!」(by ダイアナの絶叫芸)
ポリー博士は車を左右に振り回し、なんとか『ナカテカチンコ』を振り落とした。
そうして、しばらく車を走らせると、ようやっと見えてきたガソリンスタンドの灯り。
「車の修理を頼む!それと、この近くに泊まる所はあるかね?」
スタンドの従業員は無惨な車の状態に驚いたが、「隣りにモーテルがありますが……」と親切に教えてくれた。
親子はなんとか、未亡人が一人で経営しているモーテルの1室に落ち着いた。
二人は無事に『ナカテカチンコ』から逃げ延びる事ができたのか?
いや、いや、そう簡単に終わらないのが、世の常、人の常。
すっかり『ダイアナ』(ジェニファー・ソルト)の絶叫に聞き惚れてしまった💕悪魔は、ダイアナ目的で、どこまでも執拗に追いかけてくるのであった…………
こんなのが、『ガーゴイルズ』の序盤なのだけど、コレ、どうもテレビ映画として作られたみたいです。(『殺人ブルドーザー』といい、この時代、アメリカでも1時間半や2時間ドラマが大流行だったようだ)
日本でも放送された事があるようだが、多分1回きりだったのじゃないのかな?
それゆえ、知る人ぞ知るという幻の作品となっていたとか。(自分なんかこんなのがあった事さえ、最近まで全く知らなかった)
そんなのが近年、ひょっこりDVD化されるんだから、うかうかしてられませんよね。
『裸のジャングル』のコーネル・ワイルドの他の作品見たさで、たまたま、コレにぶち当たったんだけど、この『ガーゴイルズ』で、初めてジェニファー・ソルトの存在を知った次第である。
可愛いじゃないですか~💕
調べてみると、このお方、ブライアン・デ・パルマの『悪魔のシスター』なんて映画にも出ているらしい。(デ・パルマ映画が苦手なんで観てないけど、多分、ヒッチコック映画をドギつくしたようなホラー・サスペンスだろうと思う。『スーパーマン』のマーゴット・ギターも出ているとか)
この『ガーゴイルズ』でも、これだけの絶叫を見せてくれる彼女ですもん。きっと『悪魔のシスター』でも、腹から声を出す叫び芸があったりして。
そんな彼女、近年は女優をキッパリ辞めて、どうやら脚本家に転身なさったようである。(叫び疲れた? (笑) )
とにかく、そんなジェニファー・ソルトの絶叫に一瞬で惚れてしまった『ガーゴイルズ』の『ナカテカチンコ』さんは、とうとう拉致に成功する!
『ダイアナ』(ジェニファー)を抱えて、洞窟の洞穴へと連れ去ってしまうのである。
「娘がさらわれた!どうか、協力してくれ!!」
馬鹿な悪魔研究なんてのに、うつつを抜かしていたポリー博士も、やっと目が覚めたようだ。
地元警官二人に(頼りない)、不良のバイカーたちを助っ人に、ポリー博士はダイアナ奪還を目指す。(アレレ……ここに知った顔が。不良バイカーの中には、あの有名なスコット・グレン(羊たちの沈黙)がいるじゃないですか!)
さぁ、夜の渓谷を舞台にして、人間VSガーゴイルズ、最後の死闘がはじまってゆく………
………まぁ、死闘と言っても、なにぶん当時のテレビ映画(ドラマ)なんで、だいぶハードルを下げてご覧あれ。
それにしても、不気味な姿の『ガーゴイルズ』が、一生懸命勉強して英語を話しだすと、怖さなんて微塵も無くなってしまうのは、ちょっと面白いかも。(「人間に勝つ為には勉強しなくては!」と、努力するなんて、悪魔も必死である)
その後も勉強を続けて、自分が人間から『ナカテカチンコ』なんて呼ばれていて、日本語も習得したなら、彼はどう思っただろうか?
顔を真っ赤にして、また洞穴へと帰っていっただろうか?
イジワルだが、聞いてみたい質問でもある(笑)。
星☆☆☆。
※《補足》歳をとってロマンス・グレーになったコーネル・ワイルド。
それでも肉体だけはキチンと管理していて、ご立派でございました。(モーテルの未亡人も誘ってくるはずだわ (納得) )