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2021年11月16日火曜日

人物 「アラン・スミシー」

 活動期間1968年〜2000年。





《活動期間》なんて、こんな書き方をするのも変な話かも。



だってアラン・スミシー』なんてのは、元々《この世には存在しない人物》なのだから。



それでも、長い映画の歴史の中で『アラン・スミシー』の名前はちゃんと残っている。


何本か、映画を監督した名前として。


『アラン・スミシー』は、その昔、映画界が勝手に創り上げた架空の監督名なのである。


こんなアラン・スミシーの名前を私が知ったのは、デニス・ホッパージョディ・フォスターが共演した映画『ハートに火をつけて(1991年)』を観た時だった。




偶然、殺しの現場を見てしまったジョディ・フォスターに殺し屋が差し向けられるのだが、その殺し屋デニス・ホッバーが彼女に一目惚れしてしまう、ちょっと変態チックなお話。


私、当時、コレを観たんだけど、まぁまぁ面白かった気がする。


でも、「誰だ?この『アラン・スミシー』って?」と聞いたこともない監督に「無名の監督か?」と思ったくらいだった。



結局、後年、この映画は、主演兼監督もしたデニス・ホッパーが、勝手に編集した映画制作会社に激怒してしまって、


「監督のクレジットから外してくれ!」


と、猛烈に激怒した為、架空の監督である『アラン・スミシー』をたてた経緯を知る事になるのだけど……




でも、時はビデオからDVDに移行する時代……


あらたにデニス・ホッパーが再編集して完成させた『バック・トラック(改名)』が世に出ると、瞬く間に、この『アラン・スミシー』の事も世間にバレバレになってしまう。



そうして驚くなかれ!

この映画、その後に更に《完全版》が出来ていたらしい。


『ハートに火をつけて(99分)』

『バック・トラック(108分)』

『バック・トラック』完全版(180分)』(ゲゲッ!3時間も!)。


こんな長〜い、変態殺し屋の恋愛サスペンスを、誰が観るねん!(笑) 



でも、映画界にしてみれば、『アラン・スミシー』は、昔から一部の映画関係者だけが知る、それこそ、タブー化されていた秘密。


こんなのを誰も彼もが知って、監督スミシーの名を見れば、

「あっ、この映画はなんかトラブルがあったんだな!」なんてのが容易に分かってしまう。


すると、この『アラン・スミシー』の偽名も段々と使い辛くなってくるのだ。



その後は、ご多分に漏れず、『アラン・スミシー』を茶化す輩(やから)まで現れはじめた。


とうとう、アラン・スミシーを題材にした『アラン・スミシー・フィルム』なんてタイトルで映画が作られてしまうのだ。(こういう馬鹿なウケ狙い。どこにでもいるよねぇ~)



そうして2000年。全米監督協会は『アラン・スミシー』使用を、完全に取りやめる事となったのでありました。




こんな色々な因縁のある『アラン・スミシー』映画は以下の通り。


★『夏の日にさよなら(1968)』主演、バート・レイノルズ。


★『ガンファイターの最後(1969)』主演、リチャード・ウィドマーク。


★『学生の死体(1981)』


★『ハリー奪還(1986)』


★『クライシス2050(1990)』(日本出資の駄作として悪評判)


★『ハートに火をつけて(1991)』


★『ヘルレイザー4(1996)』


★『アラン・スミシー・フィルム(1998)』


★『美しき家政婦  ウーマン・ウォンテッド(2000)』出演兼、実際の監督、キーファー・サザーランド。



まぁ、いろんなジャンルがあることよ。



その中で、私が、今、観てみたいのが『ガンファイターの最後』。


主演のリチャード・ウィドマークと監督のロバート・トッテンが対立して、結局監督が降板。


その後、あの有名なドン・シーゲル監督(ダーティハリーなど)が請け負うも、トッテンもシーゲルも、

「監督で名前が載るのは、絶対ヤダヤダ〜!」

とゴネて、アラン・スミシー名義になった、これまた、いわく付きの作品。



でも、何気にこの映画、評判が良いのだ。(ドン・シーゲルの力?)



愚作もあれば、良作もあるアラン・スミシー映画の数々。


ネタに、1度はご覧になってみるのもいいかもしれない。


※ところで、映画会社も、今はどんな架空の監督名を使っているんだろう?(まぁ、それがバレちゃしょうがないんだけどね (笑) )