第二次世界対戦の真っ只中、1941年。
潜水艦《シー・タイガー号》は、まだ1度も参戦したこともないのに、いきなりフィリピン沖の港に停泊中、敵の日本軍の戦闘機の奇襲攻撃をうけてしまう。
煙まみれ、穴まみれの《シー・タイガー号》の有り様を見て、艦長の『シャーマン』(ケーリー・グラント)は、頭を抱える。
でも、すぐに立ち直るシャーマン。(だって楽天家のケーリー・グラントですもん(笑))
「必ず修理しますから、お願いします。2週間の猶予をください」と上官に懇願するシャーマン。
「よし、分かった」
上官もシャーマンの熱意に返事だけはしてくれた。
だが、軍から支援物資は、申請書をいくら出しても却下されたりして、なかなか届かない。
そんな時、ひとりの男が《シー・タイガー号》に移動してきた。
潜水艦軍務には、まるで場違いな身なりで現れた『ホールデン大尉』。(トニー・カーティス)
「君、海軍や空軍の経験は?」
「ありません!軍では企画係でパレードやパーティーの準備をしてました!」
パレードやパーティーって……
やれやれ、何でこんな男を上は寄越すんだ……
シャーマン艦長の心の嘆きが聞こえたのか、ホールデンが、いきなり言い出した。
「でも、自分なら、この潜水艦に必要な物資を、直ぐに調達してみせます!」
はぁ?
何を言い出すと思ったら……まぁ、いいだろう。
「よし!君を物資調達係に任命する!」
「はい!ありがとうございます!」
だが、ホールデンの物資調達は、まるで合法的なものじゃなかった。
シャーマンの部下をひきいて、軍の本部に、夜半忍びこんで、勝手に持ってくる。
ワイヤーから、銅線から、配管から、はたまたトイレット・ペーパーまで。潜水艦に必要なもの全てを、だまって盗んでくる。
果ては、本部の上官室の壁までをくり貫いてまで……。
呆れるシャーマンだったが、何とか、かんとか潜水艦が動くところまで修理はできた。
「よし!出航だ!」シャーマンの呼びかけに、エンジンルームでは、スイッチを入れたが、ブスッ!ブスッ!の音と共にエンスト気味。
そこへ、
「待ってください!」
とホールデンが、今度は、変な格好の男たちを伴って連れてきた。
「この島の祈祷師たちです。これでこの潜水艦に憑いている悪霊を祓ってもらいます」
ば、バカバカしい!……
シャーマン艦長の思いなどよそに、勝手に祈祷師たちは、《シータイガー号》を槍でつつきながら、「……ナンタラ、カンタラ……」と呪文を唱え始めた。
(こんなので潜水艦が動くなら、誰も苦労しないさ……)
「艦長!エンジンがかかりました!」
な、何ぃ~?!(笑)
かくして、潜水艦《シー・タイガー号》は、まだ完全とはいえずとも、何とか港をはなれ、出航したのであった……。
この時期、絶好調のケーリー・グラント主演の潜水艦コメディー。
名前こそ、知っていたこの映画を初めて観た。
チョー面白かった。
『お熱いのがお好き』のトニー・カーティスもチョーおかしくて笑わせてくれる。
トニー・カーティスにとって、ケーリー・グラントは、伝説であり憧れの人。
オファーがあった時、「ぜひ、ぜひ、出演させてほしい!」だったとか……。
このトニー・カーティス演じるホールデンが、物資だけでなく、色々なものを調達してくる。
「彼女たち、島に置き去りにされたんです、どうかお願いします。艦長!」
「う、うむ……」『シャーマン』(ケーリー・グラント)も仕方なく乗船許可をだす。
でも、狭い潜水艦の中はたちまちパニック。
機管室で、洗濯物を干す女たちやら、勝手にあちこちほっつき歩く女たち。
そして、そんな女性たちに、たちまち色気づいた男どもは、介抱してほしいと、次々仮病をつかって医務室へ。
「俺、具合がわるくなった」
「俺も!」
「俺も!」
「いいかげんにしろよ、お前ら!!」シャーマンの血圧は上がりっぱなし。
そんなドタバタの時、事件はおきた。
「艦長、見てください!あの島に敵の戦闘機の姿が!」
「何だって?」さっそく潜望鏡でのぞくシャーマン。
そこへ、ミス・クランドルが近づいてきて、
「艦長、お薬持ってきましたわ」なんて呑気に言うもんだから、気が立っているシャーマンも、
「あっちへ行ってろ!」と容赦ない。
怒鳴り声に驚いたミス・クランドルは、後ろのレバーを、うっかり引いてしまう。
………それは、なんと!魚雷発射のレバー!!(ゲゲッ( ゚ロ゚)!!)
魚雷は水中を猛スピードで進んで、島のトラックに命中、そして大爆発した!!
敵は気づいて、直ちに潜水艦に向けて砲撃してくる。
逃げろや、逃げろー!(ハァ~コイツら何やっとんねん(笑))
はてさて、今度は別の島で、物資調達をするホールデン。
通りがかった農家で、豚を勝手に盗んだホールデン。(みんなのご馳走になると思って)
潜水艦に無事帰りついたホールデンだったが、島の農家は、車のタイヤ後を、ずっと追ってきて、軍の者も連れて乗り込んできた。
「ここに、私の豚がいるはずなんだ!」農家が現地の言葉でわめき散らす。
知らぬ顔を決め込むホールデンだったが、シャーマンがトイレのドアを開けると、豚が「ブー!ブー!」と挨拶する。
………そっとドアを閉めるシャーマン。
そして、
「あ~、豚はここにはいないが、代わりのものを差し上げよう。どんどん持っていってくれ!」
と、ホールデンの部屋の、隠し持ってるゴルフバックやら、テニスラケット、洋服、靴、香水やら、純金やらをホイホイ、農家に渡す。(豚の体重は90㎏あって、その分だけ)
農家は大喜び。
「あぁ、それは………えぇ?それも?………あぁ、それもですか?……」(トホホ顔のホールデン(トニー・カーティス))
「何か文句があるかね?」ジロリと睨むシャーマンだったが、楽しそうである。
農家は喜んで帰って行ったとさ、チャンチャン!(笑)。
終始こんな感じでトントン話が進んでいく『ペティコート作戦』である。
終始こんな感じでトントン話が進んでいく『ペティコート作戦』である。
もう、オカシイったらありゃしない。
これ、大傑作じゃないですか!
この後も、戦争映画なのに、クスクス笑いが絶えない。(「戦争映画なのに、こんなに不謹慎に笑っていいのだろうか?」と逆に後ろめたくなってしまった)
それにしても、何て贅沢なコメディーを撮ったのだろう。
冒頭の《シー・タイガー》が、本物の戦闘機に攻撃されて爆発するところとか、
本当に魚雷が発射されるところとか、どれだけ巨額な制作費がかかっているのか。
それに、この潜水艦《シー・タイガー号》にしても、莫大な費用を考えるとそら恐ろしくなってくる。(CGなどない時代ですぞ)
そして、これをコメディーでやるのだから……もう信じられない。
これは文句なしに、
星☆☆☆☆☆。
※こりゃ、日本、戦争に負けるわ。
笑いのセンスといい、当時のアメリカの凄さや格の違いを見せつけられた映画である。