1978年 イタリア。
原題は『イングロリアス・バスターズ』。
2009年にタランティーノ監督が、同名の映画を公開しているが、着想だけを借りてきたもので、本編の内容とは全く別物、無関係である。
……… 時は1944年のフランス駐屯地。
激しい第二次世界対戦の真っ只中、戦争とは、別の問題で、手錠をかけられた男たちが、次々と、幌がかけられたトラックに連れて行かれようとしていた。
それらは、いずれも問題児たちばかり。
「おい、俺たちいったいどうなるんだ?!」
脱走兵だが、オドオドした気の弱そうな白人バールが、隣の黒人キャンフィールドに聞くと、「心配するな、俺にくっついてろ」と耳打ちした。
そんなキャンフィールド自身も、口のわるい上官を殺してしまい、軍法会議にかけられて、刑務所か、銃殺の運命。
そこへ、チャラチャラして、スキップでもするように手錠をはめられたトニーがやってくる。
遠くのほうから仲間たちの響く声。
「トニー!お前、今度は何やったんだ?!」
振り向きながら、笑顔でトニーが答えた。
「殺人よ、殺人!100%銃殺だね!」
そう言いながらも、トニーの足どりは軽く、水溜まりを蹴ると、それは、これから護送する上官の足にひっかかった。(上官イラッ!)
トラックに乗り込むと、トニーの隣には、コソ泥で手くせの悪い、タワシのような口髭をはやしたニックが隣に鎮座している。
「これで全員か?!」
「後、もう一人いるぞ!」
最後に、長身で金髪、そしてサングラスをした男が連れて来られた。
その男だけが、集められた、ならず者たちとは、違う雰囲気を醸し出している。
空軍のパイロット、『ロバート・イェーガー中尉』(ボー・スヴェンソン)である。
立派な経歴があるのに、この男、恋人に会うためだけに、勝手に軍の飛行機を乗り回した罪で、軍法会議にかけられるのだ。
「おや、おや、中尉。ようこそ御越しを。」
護送官の嫌味な言葉に、イェーガーは知らん顔をして、トラックに乗り込んだ。
ならず者たちを乗せたトラックと、何台かのジープは、本部を目指して、出発した。
しばらくは、足場のわるい、山のガタガタ道を進むトラックとジープ。
横付けにして走っているジープから、トラックに向けて、護送官の声が響いた。
「おい!俺の時計が無いぞ!誰が盗みやがった?!」
トラックの荷台で、シレ~として、その時計を取り出すコソ泥のニック。
隣のトニーもニヤニヤしながら、その時計を奪うと足下で、粉々に踏みつけた。
割れて粉々になった時計を、走るジープに放り込むトニー。
「あったぜ!ほらよ!!」
「お前ら、本部に着いたら覚えてろよ!!」護送官は、カンカンに怒りながら、ジープから拳を振り上げていた。
そんな時、トラックのタイヤが、パンクして、ストップしてしまう。
場所は見晴らしのいい、岩場の山道。
「お前とお前!トラックから降りて、タイヤを交換しろ!」
気の弱そうなバールは素直に降りたが、命じられた黒人キャンフィールドは知らん顔をして、
「俺は今、休憩中よ」と、のたまう。
だが、護送官に引きずりだされ、蹴りあげられると渋々、バールとタイヤ交換をしはじめた。
「さっさとするんだ!こんなところを、もし、ドイツの空軍に攻撃されたら………」
そこへ、本当にドイツの空軍の飛行機がやってきた。
次々とトラックやジープに向けて爆撃してくる。
ジープは炎上し、機関銃で応戦する護送官たちも、撃ち殺されたり、爆撃によって吹っ飛ばされていく。
辺り一面は、たちまち業煙に包まれた。
「この隙に逃げるんだ!」
イェーガー中尉の呼びかけに、トニーとニックも、「こりゃ、たまらん!」と、トラックを降りて、雑木林に逃げ込んだ。
それに、バールとキャンフィールドも続いて追いかけた。
遠くには、炎上して轟音をあげるトラックとジープが見えて、フランス兵たちの死体が散乱している。
こうして、5人の訳ありのならず者たちは、『脱走兵』となったのだった………。
戦争映画ゆえ、銃撃、爆撃も多い、この映画。
でも、それだけじゃないのが、この映画の魅力。
雰囲気が、全体的にカル~イくて、話の流れがトントン拍子に進んでいくのだ。
これが、日本映画なら、戦争の悲惨さや、平和の大切さなどを主題に、戦争の愚かさを訴える映画になると思うのだが、決して、そうならないのがイタリア映画(笑)。
逃亡中の5人は、ひとまず空き家を見つけだした。
そこで、缶詰めやら、何やらを調達してくる、コソ泥のニック(便利な男よ)。
気弱なバールは、それをおとなしく食べているが、
調子のいいトニーと黒人のキャンフィールドは、馬があうはずもなく口を開けば大喧嘩。
「いい加減にしな!」
イェーガー中尉が天井に向けて盗んできた機関銃をぶっぱなすと、やっと沈静化する。
そこから突然現れたドイツ人の脱走兵。
相手も驚いているが、5人も敵との遭遇にビックリしている。
「ドイツ語なんて分からん!何て言ってるんだ、ぶっ殺そうぜ!」
「待てっ!」
血の気の多いキャンフィールドを制して、イェーガーはドイツ人と流暢なドイツ語で会話しはじめた。(さすが博識な中尉、俄然、主人公として、リーダーシップを発揮する)
ドイツ人を道案内人にすると、安全なルートを探しながら進む5人たち。
それでも、戦争中ゆえ、行く手には、様々な危険や爆撃があるものの、たま~には良いこともある。
山の中の湖で、数十人の全裸の女性たちが、オッパイまるだしで、キャッ!キャッ!と水浴び中に出くわしたり。(なんて無防備な女たちよ)
「こりゃ、たまらんわい!」トニーやバール、ニックも、久しぶりの女の姿に興奮を抑えられない。
「お~い、俺たちも仲間に入れてくれぇ~!」
と湖に飛び込んだ。
そして、後から、
「俺も、俺も仲間に入れてくれよ!」と黒人のキャンフィールドが近づくと、全裸の女性たちの顔色が、突然、変わった。
全裸で機関銃をぶっぱなしはじめたのだ。(全裸の機関銃とは………まったく意味が分からないが、これはイタリア映画だしね。とりあえずはお色気シーンは必要不可欠なのだ)
5人の珍道中は、こんな調子で続いていくのだった……。
主演のボー・スヴェンソンは、この後も中堅俳優として、順調に活躍して現在78歳。
日本映画にも出演しているらしい。(『復活の日』や『ユキエ』など。)
193㎝の長身は、あのジョジョの空条承太郎に近い身長。(承太郎は195㎝)
この映画のスヴェンソンが、クールなリーダーで、見た目こそ違えど、何となく自分は、ジョジョの空条承太郎と重ねて、観ていました。
素っ裸の女性たちに興奮している四人を呆れ顔で見ながら、「やれやれだぜ……」と言うスヴェンソン演じるイェーガー中尉などは、承太郎を思い出させてしまう。(なんか、何を見ても、最近ジョジョと結びつけて考えてしまい、ジョジョから離れられないなぁ~(笑))
ストーリー自体は、陳腐なれど、なぜか、いつまでも印象に残るB級戦争映画なので、たま~に観たくなるのであ~る。
星☆☆☆