2018年11月25日日曜日

映画 「肉の蝋人形」

1953年 アメリカ。





1920年代の、雨降る夜のロンドン。


2階建の広い屋敷の工房で、『ジャロッド教授』(ヴィンセント・プライス)が、今日も、せっせと蝋人形を造っている。




それらは、いくつもの歴史上の有名な人物たちばかり。

クレオパトラ、リンカーン、ジャンヌダルク、そしてマリー・アントアネット……。



精巧にできたそれらは、まるで本物のように息をして、今に動きだしそうだ。





そこへ、不機嫌な顔で、出資者『バーク』がやってきた。


蝋人形館は、ガッポガッポ儲かると思って、せっかく出資したのに、逆に山ほど経費がかかってばかりで、全く黒字になりゃしない。



「こんな仕事とは、早く手を切りたい! マダムタッソーのように恐怖の館にして早く利益を上げろ!」と守銭奴のバークは、ジャロッドを追いたてた。


だが、歴史上の人物にこだわるジャロッドは首を縦にふらない。



と、そこへ、金持ちで美術評論家の『ウォーレス』がやって来た。


突然の来訪者にバツが悪いのか、バークは、そそくさと2階に上がっていった。


評論家ウォーレスは、ジャロッドの蝋人形を感心して見て回っている。ジャロッドも得意気だ。



「とても素晴らしい作品ばかりだ!! あなたはきっと成功するでしょう! 仕事で3ヶ月ばかりエジプトに行きますが、帰ってきたら、きっとお力になりますよ。」


ウォーレスは、そう約束すると、ジャロッドと、かたい握手をして帰っていった。


ウォーレスが帰ると、バークが2階から、すぐさま降りてきて、ジャロッドはウォーレスの申し出を伝えた。


「なぁにぃ~3ヶ月後だって?! そんなに待てるか!  俺は今すぐ金が欲しいんだ!!」


守銭奴のバークは、そう言うと、何をトチ狂ったのか?マッチを擦って蝋人形に《火を付けだした》。



「何をするんだ!?」


「ヘヘッ!ここには、蝋人形がたくさんある。よく燃えるぜ。火事になれば、てっとり早く保険金2万5千ドル下りるのさ」(ゲゲッ、最低!)


「やめろ!やめてくれ!!」


ジャロッドの制止も聞かず、次々、火をつけてまわるバーク。


二人は殴りあいになり、ジャロッドは気を失ってしまう。その隙に、バークはあちこちにアルコールを振りかけて逃げだした。



たちまち業火に包まれていく館。


蝋人形の顔は、無惨に溶けていく。


火に包まれた中で、意識をとりもどしたジャロッドは、唖然とし、火傷を負いながらも脱出した。


その瞬間、館は大爆発した。






それから数ヵ月後………



はれて保険金が下りたバーク。(まぁ、昔なんで保険調査員もたいして疑わず調査しない)

嬉しそうな顔のバークは、恋人『キャシー』とカフェでをデートを楽しんでいた。



旅行の約束なんぞして。(いい気なものだ)


ウキウキ気分で、自宅のアパートの2階のオフィスに帰るバーク。


だが、オフィスのソファの影には隠れた男の姿が……。


ユックリと立ち上がったその姿は、異様で、黒いマントとハットを被り、顔は無惨に焼けただれている。



男は素早くバークの後ろにまわりこんだかとおもうと、ロープを首にまわし、思いっきり引っ張りあげた。


あっという間に絶命するバーク。


そして、紐を手すりに結びつけると1階に突き落とした。


吊るされた死体が目の前にズドン!と落ちてきて、階下で掃除をしていた掃除婦が叫びだした。

「キャー!!キャー!!」





「あの人は、首を吊って死んだわ、でも今夜は新しい恋人とデートよ」

あるアパートの一室で、バークの恋人だったキャシーが別に悲しむそぶりもなく、ヌケヌケと言っている。(なんて女だ)




同じアパートの住人で、友達の『スー』(フィリス・カーク)は、キャシーのコルセットを締めてやっている。(そんなにギュウギュウ締めて大丈夫か?ってくらい、ウェストは40くらいになっていないか)


現在、無職で、家賃もためている貧乏なスーに、キャシーは50セントを渡した。


「ちゃんと食事してね。今度の恋人もお金持ちだから家賃もなんとかなるわよ」
、と言って出ていった。(アラ、優しいとこもある。ゴメンなさい)





そして、夜。


アパートに帰ってきたスーの顔は、ドンヨリ。(また面接落ちたのか)



そんなスーが、2階の自分の部屋にあがろうとすると家主が出てきて、

「今晩、ここで眠りたければ、さっさと家賃を払ってちょうだい!!、キャシーにでも、なんでも借りてでもいいから!!」

、と催促してきた。(渡る世間は鬼ばかりだ)




夜半、寝ているキャシーの部屋に、気が進まない訪問をするスー。


ベットに横たわっているキャシーに声をかける。

でも、おかしい………。息をしていない!!


「死んでいるわ!!」


そこへ壁の影から、あの焼けただれた顔の怪人が現れた。


「キャー!!キャー!!」

叫び声をあげるスー。



スーは叫ぶと、一目散に窓から飛び出し、屋根をつたって道路にストーン!と飛び降りた。(エッ?!まるで怪盗キャッツアイのような身軽さのスー!)



怪人も、ビックリして、慌てて後を追いかけようとする。


霧の深い夜の町を必死に逃げるスーは、いつしか恋人で彫刻家の『スコット』の家にたどり着いた。(無職なのに恋人いるのか(笑))


「助けてぇ~!!」

家には、スコットの母親とスコットがいて、なんとかスーは無事保護された。





その後、スーが脱け出したアパートには、警察がやってきて、テンヤワンヤの大騒ぎだ。




殺されたキャシーの遺体は、モルグの死体安置所に運ばれていった。

いくつものベッドが並ぶ暗い死体安置所。



死体には白い布がかけられて暗い静寂が漂う。



そこから、ムックリとひとつの死体が起き上がった。あの例の焼けただれた顔の怪人だ。

怪人はキャシーの死体を布で巻くと、それを担ぎ上げ、安置所から盗んでいった。





次の日、スコットと母親がスーに付き添い警察にやってきた。

警察はスーの証言を疑うが、安置所から、キャシーやバークの死体が盗まれている事を、はじめて知るのだった。





そのころ美術評論家のウォーレスが、帰国して戻ってきた。


ウォーレスはある屋敷を訪問する。

そこには、弟子の『イゴール』(売れる前のチャールズ・ブロンソン)に付き添われた、あの『ジャロッド教授』がいた。




車椅子に乗って両手を火傷しているが、昔の顔のままのジャロッドの姿である。(あの焼けただれた顔の怪人はジャロッドじゃないの?)



もう一人の弟子レオンを従えて、地下に、グツグツ煮立った大釜を設置して、蝋を石膏に流す本格的な装置を作り上げていた。(どこにそんな資本金を隠し持っていたのかねぇ……)



ウォーレスは、以前とは違うジャロッドに違和感を感じながらも、協力を約束した。




だが、作り出された蝋人形は、以前とはまるで違う、恐怖と残酷なものばかり。


そして、そこには、首を吊って死んだバークの蝋人形も飾ってあったのだった。





しばらくして、ジャロッドの《蝋人形の館》が、華々しくオープンした。


本物そっくりの残酷な犯罪現場を再現した蝋人形館は、たちまち大評判になり、連日、大盛況。


ギロチンシーンなど、あまりのリアルさに失神する者もいるくらいだ。




そこへ、あのスーも、恋人スコットに連れられてやってきた。


彫刻家のスコットは、ウォーレスとも知り合いだったのである。




スーは、そこに展示されているジャンヌダルクの蝋人形に目を奪われる。


(まさか……)恐る恐る近づいていくスー。


磔にされ、焼かれながら、十字架を掲げるジャンヌダルクの顔………


「これはキャシー……キャシーにそっくりだわ。」

知らず知らずに、涙を流すスーだった。








肉の蝋人形は、1933年にも映画化され、これは2度目の映画化。


その後も、何度も映画化されているが、すべて登場人物や設定を、その都度変えてつくられているので、タイトルは同じようなモノがあっても、まるで別物としてお考えください。




私が好きなのは、この1953年版。




今の時代で観ると、怖さよりも次から次へのヘンテコリンな展開に、思わず「ププッ……」と笑ってしまいますが。(でも、そんなのが、また良いのですよ)


主演のヴィンセント・プライスは、190cmを越える身長でハンサムなんだけど、好んでオカルトチックな映画ばかりに出演していたらしい。



おかげで、クリストファー・リーやピーター・カッシング(吸血鬼ドラキュラなど………)と並び称されて、『三大怪奇スター』と言われていたほどである。



この映画も、おどろおどろしい雰囲気満載で、火傷をした顔の怪人の姿で、ヒロインのスーを襲い続ける。(でも、まるで恐くないんだけどね(笑))




クライマックス、ヒロインのスーが怪人に捉えられて、煮立った釜の蝋を流されて蝋人形にされそうになる特殊装置は、今観ても、「それなりに、お金がかかっているなぁ~!」と、少し感心。



ただ、蝋を流される寸前のスーが全裸なんだけど、肩から上だけしか見られないのは、ちと残念なのだけど(でも当時としては、これがギリギリのセクシー・ショットなんだろうなぁ~……)



話は反れましたが星☆☆☆☆。



昔は、これに、「ギャアアー!ギャアアー!」騒いでいたんだろうなぁ~

そんな観客なんかを想像してみると、なんか微笑ましい気がします(笑)。