1987年 西ドイツ。
♪ア~ ア~ ア~ アイム、コォ~リング、ユゥ~♪
ジュベッタ・スティールの声が、モハーヴェ砂漠に、響きわたる。
この映画、お話自体は、何て事ないのだ。
ドイツ人の太った女性ヤスミンが、砂漠の真ん中で、旦那と喧嘩して、たまたま立ち寄った、モーテル兼、ガソリン・スタンド兼、カフェの『バグダッド・カフェ』に居着いてしまうお話。
そんなカフェには、グータラな旦那を怒鳴りつけて、子供を抱えながら孤軍奮闘している黒人女性『ブレンダ』(CCH・パウンダー)がいる。(髪の毛、バッサバサ)
毎日、イライラしているブレンダ。
そんなブレンダにとって、変な客ヤスミンは、格好の標的となった。
勝手にカフェを掃除してしまったり、子供たちと打ち解けてしまったり、ヤスミンのやる事、する事が、いちいちブレンダの癇にさわるのだから。
そして、ついに、勝手に孫をあやしている姿に癇癪が爆発する!
「自分の子供と遊びな!!」と。
怒鳴りつけるブレンダに、ヤスミンは「子供はいないの……」とションボリ。
そうして、しばらくして戻ってくるブレンダ。
「ごめん……言いすぎたよ、アタマがどうかしてたんだ……」(あら、素直)
少しずつ打ち解け始めたブレンダとヤスミン。
寂れていた『バグダッド・カフェ』は、ヤスミンの力で活気を取り戻していくのでした。
てのが、このお話の流れである。
本当に何て事ない話なのだ。
この映画の監督は、誰だったっけ……。
そう、そう、パーシー・アドロンって人だったが、この映画以降は全くパッとしなくて、いつの間にか消えていった感じである。
でも、この映画はヒットした。
口コミで、徐々に火がついて、評判になっていった。
何が良かったかって、それは、もちろん曲の力である。
うら寂しい砂漠に響きわたる、この主題歌『calling you』。
劇中で何度もかかるたびに、なんともいえない気持ちにさせられる不思議なメロディー。
ヤスミンが一人歩く砂漠、夕陽の沈みかけた砂漠に、この曲が流れはじめると、まるで心の中の孤独感をえぐられるような……そんな気持ちにさせられるのだ。
本当に不思議な曲である。
まるで、催眠術にかけられているような錯覚さえ思わせる。
この、ジュベッタ・スティールの『calling you』が入っているアルバムを、なぜか買い求めた自分。
まさに、魔法(マジック)にかけられたように。
♪ア~ ア~ ア~ アイム、コォ~リングユゥ~♪
聴いてほしいし、観てほしい。
星☆☆☆☆
※《 後記 》なんて事だ!!
この映画には、あの名優『ジャック・パランス』が出ているではないか!
「シェーン」や「攻撃」などで名をはせた名優中の名優である。
全く気がつかなかった。
あの若い時の強面の顔が、歳をとって、こんなに柔和になっているんですもん。
これが重なるはずもない。
往年の『ジャック・パランス』フアンは、絶対に観る価値ありである。
たいした話だなんてとんでもない!(汗)
これだから映画は恐ろしい。ヒーッ!失礼しました~。