1979年 アメリカ。
サンフランシスコ湾に、ひっそり浮かぶアルカトラズ島。
四方を荒海に囲まれたこの島に『アルカトラズ刑務所』はあった。
そんな脱獄不可能なこの刑務所に、ある大雨の夜、船で収監されてきた人物がいる。
『フランク・モリス』(クリント・イーストウッド)。
連れてこられると刑務官の前で、素っ裸にさせられ、あらゆる検査を受けると(あ~恥ずかしい)、そのまま冷たい独房まで歩かされてゆく。
ここの刑務所は、完全孤立型の独房。
長い独房までの道のりには、何百人という囚人たちの房が1階、2階、3階とある。
素っ裸で歩いているフランクを、好奇の目で見ている者もいる。(刑務所といえば、その手合いも必ずいるので)
やっと独房にたどり着き、刑務官がフランクを押し込むと、重い鉄格子が《ガチャン!》と閉められた。
「ようこそ、アルカトラズヘ!」
次の日、大勢の犯罪者たちと食堂にやってきたフランク。
トレイには、とてもじゃないが食べらそうもない残飯みたいな食事がのせられている。
そんなモノでも我慢して食わねばココでは生きてゆけないのだ。
近くのテーブルにつくと、ポケットからネズミをとりだしてエサをあたえている中年なんてのもいた。
ネズミがペットなのだという。(ゲェー!)
朝食後、フランクは刑務所長の『ウォーデン』に呼び出された。
ウォーデン所長は、
「このアルカトラズで脱獄に成功した者はいない!」
と念押しする。
ファイルに書かれてあったIQの高いフランクに特別警戒したのだろう。
だがウォーデンは知らない。
フランクが立ち去る時に、目の前の机の上にあった《爪切り》がこっそり消えている事に。
そして、入浴時間。
フランクがシャワーを浴びていると、真横に太った男が近づいてきた。
禿げて太っている『ウルフ』は、真横の素っ裸のフランクを好色そうに見つめると、
「見つけたぜ!俺の《女》になってくれよ!」
と誘ってくる。(出たー!刑務所といえば、必ずいる、こんな奴)
「ハハハ!」と一笑するフランクだったが、次の瞬間には、《パンチ!》&《キック!》
とどめには、口に石鹸までつっこんでやるのだった。(フルチンでよ~やるよ。フランクも)
でも独房に戻ると、またもや退屈な時間をもて余すフランク。
そこへ図書係の黒人『イングリッシュ』が、雑誌を載せた台車を押しながらまわってきた。
「色々揃ってるぜ、新聞からナニの雑誌まで。なんせ読む時間は、ここじゃたっぷりあるんだから」
まぁ、本でも読めば退屈しのぎにはなるか ……
「そこのを、一冊借りようか」
やがて人種の壁を越えて、フランクはイングリッシュと打ち解けて話すようになってきた。
そうして、つかの間の自由時間。
皆が太陽を浴びようと、石階段に囲まれた広い校庭へとやってくる。
外の空気に触れる事ができる唯一の時間なのである。
「上を見なよ!」
イングリッシュが顎を振ると、フランクもそこを見た。
真上では何人もの看守たちが、真下にいる受刑者たちに銃を向けていて徹底した見張りを続けている。
そんな中でも、スポーツをする者もいれば、絵を描いている者もいたりもする。
ネズミを胸ポケットに入れていたあの中年もいた。
一見自由そうに見える時間……でも、ここにいる受刑者たちが、何を想い、何十年も過ごしているのか ……… それは誰にも分からない。
そんな数日が過ぎた頃、フランクを逆恨みしている、あの太ったウルフがナイフを片手に校庭でいきなり襲いかかってきたのだ。(そら、みた事か。ゲイの怨みは怖いぞぉ~)
辛うじて刑務官たちに取り押さえられるウルフだが、襲われたフランクも一緒に引っ張られていく。(どっちが悪いか、なんて刑務所では一切関係ないのだ)
連れて来られたのは、地獄と呼ばれている《D棟》。
D棟 …… そこは窓もない暗闇の狭い独房だ。
少ない食事をあたえられ、刑務官の嫌がらせで、放水を浴びせられるのが日課。
気が変になる者もいるという。(イングリッシュはD棟で堪えられず、自分で自分のアキレス腱を切ったらしい)
何日か何週間か …… 時間も分からないくらいの意識になりかけた頃、フランクはようやく元の独房へと返された。
さすがにヘロヘロ状態のフランクが休んでいると、隣から陽気に話しかけてくる声。
いつの間にか隣には、新入りの『バッツ』というおちゃらけた男が入居していた。
そして、久しぶりの食事の時間では前の刑務所で一緒だった『アングリン兄弟』にも再会する。(兄弟で仲良く犯罪者とは…)
脱獄に失敗して、アルカトラズ送りとなったのである。
(こんな場所からは、なんとしても脱出しなければ!)
その夜、フランクは所長から盗んだ爪切りを使って、独房のベット下の金網のはまった通気口の壁を削ってみた。
壁はもろくて、簡単に削れる。
長年の潮風にさらされた壁は強度を失っていたのだ。
次の日の食事の時間、アングリン兄弟とバッツのいるテーブルについたフランク。
下を見て食事をしながら、
「どうだ?俺の《脱獄計画》にのってみないか?」
と、持ちかけてくるのだった ……
監督ドン・シーゲルとイーストウッドが組んだ最後の映画である。
それまで二人は、『マンハッタン無宿』からはじまり、
『真昼の死闘』、
『白い肌の異常な夜』、
代表作『ダーティーハリー』とタッグを組んできた。
よっぽどウマがあったのだろう。
イーストウッドはドン・シーゲルを師匠と仰ぎ、映画の撮影方法も学んでいく。(いつか自分で映画を撮るんだと思いながら)
そして、晴れて、1971年『恐怖のメロディ』を初監督。
そのあと、
『アイガー・サンクション』、
『アウトロー』、
『ガントレット』と監督していき、少しずつ自信をつけてきた。
そして、この『アルカトラズからの脱出』は、ドン・シーゲル恩大からの『卒業』となったのだった。
そんな二人が最後に選んだのが《脱獄モノ》。
思いっきり男くさい男ばかりの犯罪映画だ。(全く女性出ないし)
後半は、脱獄するための準備をするわけだが、異様な緊張感が続く。
脱出するために必要な資財を監守の目を盗んで集めたりする場面。
スプーンと爪切りを上手く溶接して、それでコツコツと壁を削っていく作業などなど ……
新聞紙と紙粘土で形を整えて、それに色を塗り、毛を張り合わせてダミーの人形まで作り上げてしまう。(なるほどねぇ~、ありあわせのモノを使って。よく工夫してるよ)
レインコートなんかも、海を渡るための浮き輪にまで、作りあげちゃったりする。
IQの高さもなるほど、納得である。
そんなフランクのアイデアに、いちいち感心してしまった。(でも、「こんなにIQが高い男がナゼ?犯罪者になるのかねぇ~」なんて疑問もチラホラあるのだけど (笑) )
脱獄の準備の中、「バレやしないか? 」って緊張感はズ〜ッと続いてゆく。(これぞ脱獄モノの醍醐味!)
ドン・シーゲルとイーストウッド、この名コンビの最後の作品は、中々の良作に仕上がっていると思うので、超オススメである。
星☆☆☆☆です。