2020年8月9日日曜日

映画 「ナイブズ・アウト / 名探偵と刃の館の秘密」

2019年 アメリカ。







この映画とは、全く関係のない話を少し。



こんなのは自分だけかもしれないが、私、『ケネス・プラナー』が大キライである。



ケネス・ブラナーといえば、シェークスピア役者として世に出てきて、「ローレンス・オリヴィエの再来」とまで言われた人。(誰がこんな事を言いだしたのか?)

シェークスピア劇の映画も何本か監督してる。(観る気もないけど)



私がキライになったのは、この人がジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の『探偵スルース(1972)』をリメイクしてから。

期待して観たら、とんでもなく陳腐な出来でした。



そうして、トドメはクリスティーの『オリエント急行殺人事件』のリメイク。


しかも、不格好な口髭で主演のポワロまで、嬉々として演じてしまった。

列車の屋根にまで飛び上がるポワロ。(死んだクリスティーが、激怒して墓場から蘇りそうなくらいの出来)



原作のフアンたちを激怒させ、映画も散々だったはずなのに、懲りないブラナーは、またもや『ナイル殺人事件』のリメイクにまで手をつけてしまった。



不出来な、オリジナル破壊のリメイクやアメコミ(『マイティー・ソー』)、アニメの実写化(『シンデレラ』)しか出来ないブラナー。



オリジナル脚本とオリジナルの役で、勝負しようともしないブラナーに、「本当にこの人、監督としても才能があるの?」と疑ってしまう。



今後も、こんな調子で作品を作り続けるのだろうか?

まぁ、観たい人は観ればいい。でも私は、完全に無視するけどね。





こんなブラナーにムカムカしているところへ、この映画『ナイブズ・アウト』の存在を、最近知ったのだった。




監督は、順調にキャリアを築いてきた新進気鋭の『ライアン・ジョンソン』。



ライアン・ジョンソンも、子供の頃からクリスティーの小説が好きで、「こんなミステリー映画を、いつか撮りたい!」と思っていた人だ。



でも、安易に、クリスティーの小説の映画化なんてのには手を出さない。


自分で《オリジナルの脚本》を書いて、自分で《創作した探偵》を作り出す。



あくまでもクリスティー風の群像劇のミステリー映画であり、徹底的にオリジナリティーにこだわったライアン・ジョンソン。



こんな情報を知ると、「ムムッ、最近にしては気骨のある奴。こいつは期待できるかも………」と俄然、観る前から評価は、クグーン!と上がってまう。



で、今回観てみてのだが………



中々、上手く出来てるじゃございませんか。




著名なミステリー作家『ハーラン・スロンビー』(クリストファー・プラマー)が邸宅で85歳の誕生パーティーをおこなった。


一族の者たちは、なにかしらスロンビーの恩恵を承けているので、無下にもできず集まってくる。



そして、翌朝、家政婦がハーランの死体を発見した。


喉をかき切っての自殺。



警察も単純な自殺として、公式ばかりの家族への尋問をして終わりにするはずだったのだが………。



そこへ名探偵『ブノワ・ブラン』(ダニエル・クレイグ)が現れた。


「私に匿名の依頼があったのだ。それにこの事件は、単純な事件じゃないはずだ」ブランはそう言い切る。



調べてみると、次々表れてくる一族の秘密。

皆がハーランを恨みに思っていたのだ。



そんな中で、ブノワ・ブランは一人の女性に目をつける。


『マルタ』(アナ・デ・アルマス)と名乗る、この若い女性はハーランの信頼も厚く、献身的に世話してきた看護師だ。


「私は……何も知りません」

マルタはそう言うだけだが、ブランの勘が、この女性の何かに惹き付けられた。


(何か……隠している………)



案の定、マルタは秘密を隠していた。

自分ひとりでは、押し潰されてしまいそうな大きな秘密を………。




大金持ちに群がるハイエナのような一族たち。


昔ながらの定石のミステリーの形をとりながらも、看護師マルタの視点を借りながら物語が進んでいくところに、この映画の工夫がある。



それにしても、ジェイミー・リー・カーティスやれ、ドン・ジョンソンなんて人たちを久し振りに見ると、それだけで嬉しくなってしまった。(歳をとったなぁ~、当たり前なんだけど)



最後の謎解きは、あまりにも駆け足すぎて、もう少しだけ尺が欲しかったが、クライマックスまでのどこにも不自然さがないような着地はお見事。



あと、この手のミステリー映画としては、ユーモアも、もうちょっとだけ欲しかったかな。



ダニエル・クレイグの名探偵ブノワ・ブランの個性も、まだまだこれからって感じがする。(続編も作られるそうです。ダニエル・クレイグ、この人何気に演技派です)




でも、私はこの映画を断然評価する。



オリジナリティーにこだわり、オリジナルの探偵を創作しようとした監督『ライアン・ジョンソン』の挑戦は、近年では、「アッパレ!」な所業。



こんな脚本が書ける人は、今のアメリカ映画界では貴重だろう。



プロデューサーたちも、オリジナリル脚本には、どんどん出資して育てていってほしいと、切に願います。(まぁ、スター・ウォーズの監督では散々に酷評されたライアン・ジョンソンなので、私としては、こっちのシリーズで頑張ってほしい限りである)


星☆☆☆☆。

次回の名探偵ブノワ・ブランの活躍に期待したい。