1970年 イタリア、フランス、ソビエト連邦合作。
青く、晴れ晴れした空の下、大地に広がり、美しく咲き誇るひまわりの大群が、ユラユラと風に揺れている。
まるで絵画のように、1枚絵に切り取りたくなるくらい、絶景な風景だ。
だが、そのひまわりの下に眠るのは……。
終戦後、役場で騒いでいる女が一人いる。
「夫は生きています!私には分かるんです!探してください!!」と。
『ジョヴァンナ』(ソフィア・ローレン)は、必死の形相で役場の職員に訴えかける。
だが、なすすべもなく帰途につくジョヴァンナ。
辛い日々の中、ジョヴァンナは、夫『アントニオ』(マルチェロ・マストロヤンニ)との少ない思い出に身をはせる。
「結婚しましょうよ、私たち!」
そう、最初に口説いたのはジョヴァンナからだった。
結婚すれば、少なくとも12日間は兵役を逃れられる。
愛するアントニオと、少しでも長くいたいジョヴァンナは、二人、新居に住んで、じゃれあい、日々を楽しんだのだった。
だが、そんな日々も終わりを迎える頃、二人は考えだした。
(イヤだ!このまま別れ別れになるなんて………何とかして戦争に行かなくていい方法はないものか……)と。
「キャー!助けてぇー!!」
街中で叫ぶジョヴァンナ、暴れまくるアントニオ。
叫びを聞きつけて、人々が集まってくる。
「夫が急に気が変になって暴れだしたのよ!!」
ジョヴァンナの訴えに、アントニオは取り押さえられて、軍の病院に連れて行かれた。
やがて、ジョヴァンナも調書の為に病院に行くと、ある個室に連れて来られて、「ここで待っていてください」と言われる。
しばらくして、そこに連れて来られるアントニオ。
二人きりになると、先程の醜態とはうって変わって、二人は抱き合った。
「これで上手くいくはずだ」
そう、アントニオは精神異常を装って、兵役を逃れようと企んだのだ。
だが………そんな企みはアッサリ見破られてしまう。
壁には穴が空いていて、その一部始終は見られていたのだ。
「アントニオ、君は嘘をついた。懲役が嫌なら、君にはロシア戦線へ行ってもらう」
あわれ、アントニオは極寒のロシアへ。
泣く泣く送り出すジョヴァンナ。
列車は半泣きのアントニオを乗せて、無情にも走り去っていったのだった。
そして、あれから数年……。
戦争が終わり、ロシアの戦地から人々が引き揚げてくる。
ジョヴァンナは、必死にアントニオの手がかりを求めて、訪ね歩いた。
一人の帰還兵がアントニオと一緒だったと言う。
空から降ってくる爆撃、広大な雪原をフラフラになりながら、どこへ向かって歩いているのか分からない…………長い距離と時間。
一人が倒れ、また一人が行き倒れていく。
その中にアントニオもいたと言う。
「ひどい人ね!手を貸そうともせずに置き去りにするなんて!!」
ジョヴァンナの剣幕に、男は黙りこんだ。
他人の事などは二の次……そんな余裕などあるものか!
「きっと助からない」帰還兵の言葉にジョヴァンナは首を振る。
「いいえ!彼は絶対に生きている!私が彼を見つけ出すわ!!」
戦争が終わり、スターリンが死んで、ソビエトも環境が変わったはずだ。
ジョヴァンナは、アントニオの母に「必ず彼を探しだしてみせる!」と約束すると、単身、ソビエトにやって来た。
知り合いさえいない、この広い国………でも、愛するアントニオは必ず生きていると信じて…………。
名作と言われている、この『ひまわり』を初めて観た。
でも、この『ひまわり』、あまりにも有名すぎて、あちこちから情報を目にしていたし、内容は充分に知っていた。
《 戦争が引き裂いた、愛し合う男女の数奇な運命 》……簡単に説明すれば、こんなお話だし、「今さらなぁ~」ってな具合で、この歳まで観ずじまい。
名作の冠と、あまりにも世に知れ渡ったメディアの情報で、何だか自分の中では敷居を高くしてしまっていて、長年遠ざけていたのだった。
でも、最近、イタリア映画にどっぷりハマってしまった私。
意をけっして観はじめたのだが………もう、自分が単純なのか、涙腺崩壊(もうボロボロ)。
泣ける~!😭
可哀想な『ジョヴァンナ』(ソフィア・ローレン)に心底同情してしまい、『アントニオ』(マルチェロ・マストロヤンニ)の運命に歯ぎしりしてしまった。
なるほど、本当に、こりゃ名作だわ。
ジョヴァンナの想いが通じたのか……アントニオは生きていた。
だが、皮肉にもソビエトで結婚して、子供まで授かっていたのだ。
「彼を見つけた時は、死ぬ寸前でした。助かってからもずっと記憶を失っていて………」
アントニオの現妻『マーシャ』(リュドミラ・サベーリワ)は、目の前にいるジョヴァンナに動揺しながらも語りだす。(もう、どちらも涙をこらえているので、何とも言えないくらいの場面)
(いっそ、この女が、性悪な女だったらよかったのに……)なんて、思っているジョヴァンナの心の声が聞こえてきそうである。
でも、目の前にいるのは、気立てが良くて、心底アントニオを愛しているマーシャ。
マーシャに案内されて、アントニオにやっと会えたジョヴァンナ。
でも、ジョヴァンナは目の前にしたアントニオに何も言えず、唇を噛みしめ、たまたま来た列車に飛び乗った。
座席に座り込んだと同時に泣き崩れるジョヴァンナ。
声をあげて泣き叫ぶジョヴァンナ。
あ~、なんて可哀想なのか😭。(この場面を観て泣かない人間は人間じゃねぇ~)
ソフィア・ローレン、本当に感心した。
名優だわ、この人!
劇中、ジョヴァンナがアントニオを訪ね歩く場面に、このタイトルの広大な『ひまわり畑』が出てくる。
そこは、戦争中、残酷にもイタリア人やロシア人たち、子供や老人までを、大きな穴を掘って埋めた場所。
どうりで、風に揺れている《ひまわり》は、首を振ったり、頭を垂れたりしていて、まるで生き物のようにも見えてしまう。
何かを訴えかけるようにも見える。(ある意味、綺麗な場面なんだけどゾッ!とする)
男女のメロドラマなんだけど、これも立派な反戦映画。
今日という日には、私は、この1本を挙げておきたいと思うのである。
星☆☆☆☆☆。