1967年 アメリカ。
その大昔、ハリウッドのスター・システムなるモノが存在していた。
男は高身長の美男でなければならない。
女はスタイルの良い美女(ブロンドなら尚よろしい)でなければならない。
男も女も、とにかく見栄えが最優先。
そうでなければスターには到底なれなかったし、ましてや主役なんてもってのほか。(ゆえに面食いの私が、好きな俳優、女優は40年代、50年代に偏ってるのだが)
だが、そんなスター・システムも60年代から徐々に崩れていき、70年代には、ほぼ無くなってしまった。
そうした60年代終わりに、この『ダスティン・ホフマン』も出てくる。
最初この人を観た時、失礼な話、
「ゲゲッ!何てチンチクリンな男!」ってのが正直な感想だった。
身長167cm。しかも胴長、短足、おまけに撫で肩ときている。
低い身長でもバランスが取れてる俳優は、もちろんいる。
例えばトム・クルーズなんて、たった170cmだが、胴の長さ、足の長さ、全体のバランスは均等にとれている。
チンチクリンなんて誰も思わない。
この二人が共演した、『レインマン』で並んだパッケージを観た時、ことさら、ダスティン・ホフマンのチンチクリンさをあらためて痛感してしまった。
わずか3cmの身長差でも、なんでこんなに違うのか。
デカイ縦長の顔に、小さな目。
それに超デカイ、おもいっきり鷲鼻の鼻(鼻穴も縦)。
かたく結んだ薄い唇。尖ったアゴ。
もう、全体的に見てもアンバランスなのである。
自分の容姿がマズイ事に本人は気づいていただろうか?……もちろん自覚していたと思うのだが。
いくらハリウッドのスター・システムが崩れたからといって、こんな容姿の俳優が、おいそれと、簡単にスターになれるはずもない。
オーディションを受けても、受けても落とされる日々だったろう。
そうして、このタイプが、最後に行き着く考えは、やはり、「舞台から始めて、コツコツと演技の実力をつけること」なのである。
長い下積みを得て、舞台での実績をつけると、やっとチャンスは、向こうからやって来た。
映画『卒業(1967年)』に抜擢。映画は大ヒットした。(サイモン&ガーファンクルの『サウンド・オブ・サイレンス』は名曲中の名曲だし)
でも、大人になって、初めて、この映画を観た私は、やっぱり変な違和感しか感じなかった。
大学卒業を前にした『ベンジャミン』(ダスティン・ホフマン)は久しぶりに実家に帰省した。
そんなある日、パーティー会場で、父親の仕事のパートナー・ロビンソン氏の奥さま『ミセス・ロビンソン』(アン・バンクラフト)に誘惑されてしまう。(いわゆる不倫関係ね)
ズルズルと関係を続けるベンジャミン。
心配した両親は、幼なじみの『エレーン・ロビンソン(ロビンソン夫妻の娘)』(キャサリン・ロス)を紹介。(なんて身近なところで)
エレーンに段々惹かれていくベンジャミン。
でも、ミセス・ロビンソンは当然面白くない。
「エレーンと別れないなら、エレーンに私たちの関係をぶちまけてやる!」と息巻く。(娘に嫉妬して張り合う母親)
しょうがなくエレーンに全てを打ち明けたベンジャミン。
当然、エレーンの反応は「最低!出ていって!」だった。
エレーンは衝動的に別の男との結婚を決意する。
でも、エレーンへの気持ちをあきらめきれないベンジャミン。
エレーンも、また揺れる気持ちを抱えている。
そして迎えた結婚式の当日。
ベンジャミンがエレーンを連れ去りにやってきた。
「エレーン!エレーン!」
手に手をとって、教会から逃げ出す二人。
映画はこんな風に終わるのである………。
前述に書いた事を見てもお分かりのように、全然イケメンじゃないダスティン・ホフマン。
それを、母と娘が親子丼で、競って奪いあうなんて、なんかおかしくないですか?
キャサリン・ロスの身長は166cmでホフマンと1cmしかかわらない。
アン・バンクラフトなんて、女性ながらも173cmもあるのだ。
こんな女たちが、よりにもよって、何でこんな小さな男に夢中になるのか?(誰か教えて!)
……絵面からしても、「ん~ ……」全然納得いかなかった。
この映画って、名曲『サウンド・オブ・サイレンス』の雰囲気に、だいぶ助けられていると思うのだが、どうだろう?
でも、こんな自分の感想とは裏腹に、映画はヒットして、ダスティン・ホフマンはキャリアをスタートさせる。
やっぱり熱烈なフアンはいるんだろうなぁ~。
そうでなければ、こうして何年も生き残れるはずもないのだから。(私自身は、繰り返すが、あんまり好きじゃないけど)
それでも、私の好きな俳優たちと共演しているホフマン。
今後も避けてとおるわけにもいかず、たま~にホフマンの映画を取り上げないわけにはいかないはずだ。(その場合は、たぶん辛口になるだろうが)
『サウンド・オブ・サイレンス』の名曲に、星☆☆☆である。