ある夜、イタリアの会場で超心理学についての講演が行われていた。
物珍しさで集まった大勢の人々。
特別ゲストとして、テレパシストの『ヘルガ・ウルマン』なんて女性が招待されている。
だが、次の瞬間!
「キャアアーーー!」
ヘルガが、突然叫び声をあげて、口に含んでいた水を、《ジャー!》と吐き出した。(汚ねぇ~)
「怖い …… 怖いわ」
客席の中に、邪悪な殺人鬼の意志を察知したのである。
その殺人鬼の過去や考えが、湯水のようにヘルガの頭の中に入ってきて、ヘルガは恐ろしさのあまりパニックになったのだった。
講演が終わるとヘルガは急いでサッサと帰宅した。
その殺人鬼に後をつけられているとも知らずに ………(テレパシストなのに尾行には、全く気がつかないヘルガさん)
そんなヘルガの住むアパートの近くで、ピアニストの『マーク』(デヴィッド・ヘミングス)は、同じピアニストでアル中の『カルロ』と帰宅中だった。
「飲み過ぎだぞ、カルロ!」
マークの忠告を無視して、帰り際にも酒を煽り続けるカルロはベロンベロンで千鳥足。
「へへへ、大丈夫、大丈夫 …… 」
カルロは、ふらつきながらも、やっとこさ帰っていった。
「やれやれ …… 」呆れるマークが、自分もアパートに戻ろうとした瞬間、
「キャアアァーーーー!!」
暗い深夜の通りに、耳をつんざくような絶叫が響き渡る。
その声がどこから聞こえたのか …… 辺りをキョロキョロ見渡すマーク。
通りをはさんで建っている、もしや、あのアパートの2階なのか?
見上げれば窓ガラスに血だらけの女性の姿が映しだされている。
その背後からは、今、まさに、《斧》のようなものが、何者かによって降り下ろされたのだった!
絶叫と共に、窓ガラスが粉々に割れる音が響き渡り、遠く離れているマークの目にも赤い鮮血🩸が見えた。
マークはいつの間にか走り出していて、そのアパートの玄関を抜けると一目散に階段を駆け上がっていった。
2階には細長く続く狭い通路。
辺りを見渡しながら、慎重に歩を進ませるマーク。
そうして歩いていくと、奥の部屋には血まみれで倒れている、あの、先程のヘルガの遺体があったのだった。
しばらくして警察がやってくると、現場は大勢の人々で騒然としはじめた。
もちろん、第1発見者のマークも警察に質問攻めにあっている。
「駆けつけた時、遺体の彼女以外は見なかったんですか?犯人の姿も?!」
「ええ。でも ……… 何かがおかしかった。うまくは説明できないのですが ……… 」
そこへ、いきなり、『パシャッ!』のシャッター音。
「おい!誰の許可を得て入ってきたんだ!」
「いいじゃないの。ねえ、彼が第1発見者なんでしょ?教えてよ!教えてよー!」
特ダネのためならどこまでも。
キャリア志向で食らいついたら離れない、まるでスッポンのような根性のジャンヌに、マークは呆れるのだった。
そして次の日、新聞にはデカデカと写真つきでマークの記事が載せられている。
「何なんだ、これは!?」
そこへ現れたのは、あのジャンヌ。
「これで、次に犯人が狙うのはあなたよ!でも大丈夫! 二人でこの難事件を解決するのよ!」
(やれやれ、厄介な事になったものだ……。)
好奇心旺盛なジャンヌにあおられて、マークは事件に首をつっこんでいくのだが………
監督はダリオ・アルジェント。
日本では先に『サスペリア』という映画が公開され大ヒットした。
それ以前につくられた映画にもかかわらず、当時の馬鹿な映画宣伝部が、勝手に『サスペリア2』なんて邦題をつけて公開してしまった。(原題は、deep red)
内容も、オカルト映画『サスペリア』とは全く関係ないサスペンス謎解きスリラーなのにである。(あ~、不運な映画)
でも、謎やスリラー的な雰囲気はあっても、この映画、あんまり怖くない。
怖さよりも、所々で笑ってしまうのだ。
でも、これが《アルジェント印》の映画なのだから、しょうがないっていえばしょうがないんだけど。(笑)
何本も映画を撮っているのに、一向に上手くならないアルジェント。
怖がらせようと一生懸命に演出するのだが、なぜか?湧き出てくるB級感。
でも、こんなヘンテコな『アルジェント映画』にフアンは熱狂的になるんだけどね。(かくいうワタクシも大好きである)
だいたい、この犯人から変わっている。
わざわざ殺しをする時に、
レコードをかけたり(♪ラ~ラ~ラ~)、
気味の悪いオモチャの人形を、カタカタと走らせたりするのだから。(この労力だけでも大変なものだ)
そうやって、充分に相手をビビらせておいてから、「いざ、殺しましょう!」って。
どんだけ悠長やねん!(笑)って話だ。
マークとジャンナの会話も本筋から外れっぱなし。
「あなた女が怖いんでしょ?」
「はぁ?、ぼくは男だぞ。女が怖いわけないだろう!」
「じゃ、腕相撲しましょうよ」(なんで?)
腕相撲でアッサリ負けてしまうマーク。
「ズルしただろう?こんなので勝って嬉しいのか!もう1回だ!」
本当に、もう、どうでもいいエピソードである。(笑)
だが、こんなズレまくっている『サスペリア2』なのだけど、この映画には、それを補うほどの特別な仕掛けが施されているのだ。
それは映像でしか、なし得ない一発勝負の《映像トリック》。
こんな事をよく思いついたものだと、初めて観た時はビックリした。
それがアルジェントだけなのだと思うと、俄然、自分の評価は高くなってしまう。
映画が終わりました。
もう一度巻き戻して、ゆっくり観てみましょう。
ほ~ら、わかりましたか?
これだけでも充分、コロンブスの卵のような映画といえると思います。
観た方はネタバレ禁止。(必須)
星☆☆☆☆☆を挙げておきます。