2005年 フランス。
監督はコリーヌ・セロー。
フランス映画界が世界に誇れる、有名女性監督さんである。
母親の遺言状により遺産相続のため、フランスのル・ピュイからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmの巡礼の旅に参加する事になった3兄弟。
長男『ピエール』は、神経質で薬が常に手放せない会社経営者。(妻はアルコール依存症)
長女『クララ』は口が悪い学校の教師。
次男『クロード』は福祉の世話になる働いた事もない呑んだくれのプータロー。(こいつが一番ダメダメ)
こんな3人は、口を開けば、お互いを罵りあう喧嘩が、即、はじまってしまう。
その3人と同行するのが、気楽な山歩きと思って参加した女子高生『エルザ』と『カミーユ』。
カミーユの事が好きなアラブ系の少年『サイード』は、友人『ラムジー』を誘って、こっそりと、この旅に参加した。(すっかりメッカに行くと思って騙されているラムジー君。気立てはいいけど、まるで字が読めない失読症の少年である)
一人で参加した、頭にスカーフを巻いている女性『マチルド』さん。(つい最近ガンを克服したばかり。よって毛髪がない)
そんな、面々をまとめるのが、アラブ系の案内ガイド『ギイ』である。(ダンディーなオジサマ)
この9人が一緒に旅をするのだが、道はつねに険しい。
「この~!ズルしないで、ちゃんと歩きなさいよ!!」
坂道を歩くのに、携帯で部下の車を呼びつけてズルしようとする兄ピエールに、途端に激怒するクララ。
「うるさい!黙れ!デブ女!!」
「何を~!💢」
大の大人が、人目もはばからず殴りあいの大喧嘩。(バチン!バチン!)
「やめなさいぃー!!」
こんな風に度々喧嘩をしては、ガイドのギイが怒鳴って止める始末。
それに怪訝な顔をする者もいる中、三男のクロードは我関せず。(呑んだくれでグータラですから。)
たまに口を開けば、こんなセリフ。
「あ~、この辺りにbarはないのかな? 後、ちょっとお金を貸してもらえるかな?!」(返す気もない癖に……本当にこんなのが、一番タチが悪い (笑) )
始終こんな感じなのだから、道行きは前途多難である。(も~、ガイド役も大変だ)
それでも、激しい心臓破りの坂道や山道を、ひたすら歩き、歩き、歩き続ける……
牛の群に逢い、川のせせらぎを聞きながら、緑あふれる木々を過ぎて、ひたすら歩く……
時には激しい雨に降られながらも、ひたすら歩く、歩く、歩く……
そして、次第に、旅のはじめにリュックにギュウギュウにつめこんだ荷物などを捨てていく。(「手鏡やら、ドライヤーなんて、余計な荷物だったわ!」女子高生の必需品さえも、ためらいなく捨て去るエルザとカミーユたち)
まるで、それは、それぞれの《見栄》や《虚飾》をおろすようでもある。
教師のクララは失読症のラムジーに道すがら、字を教えはじめたりする。
ピエールさえも薬を手放し(精神安定剤?)、三兄弟は団結しはじめて、次第に他の者たちの気持ちまで……
ただ山歩きをする事が、人の気持ちを軽くして、健全に変えてゆくのである。
それは、時折、笑いを交えながら、決して説教くさくもなく、ただ淡々と………
それは、時折、笑いを交えながら、決して説教くさくもなく、ただ淡々と………
さぁ、皆が一致団結しはじめた。
ゴールのサンティアゴまで、後、もう一息………
この映画は、一瞬で自分を魅了した。
キャストから、ロケーションの山々、音楽……何もかもが、自分の感性にピッタリ合った。
こんなんですから、もう、文句なんかつけられるものですか。
この映画の全てを私は愛しております。
だから、何度でも観てしまう。(たぶん50回以上は観てます)
その度に、なんだか癒されてしまう。(日々のストレスや疲れを感じた時なんか、全てを綺麗に洗い流してくれるような感覚におそわれるのだ)
それは、まるで毒出し効果、ヒーリング効果ともいえるかもしれない。
映画を観て、こんな風な気持ちにさせられたのは、後にも先にも、この映画が初めて。
これは、そんな不思議な、とっておきの映画なのです。
もっとコリーヌ・セローの映画が観たい気がするが、それ以降輸入されてこないのは、なぜ?なんだろう…
もうすこし評価されてもいい監督なんですけどね。
派手派手しいハリウッド映画もいいけど、フランス映画の魅力を再確認するなら、この映画はうってつけ。
超オススメしておく。
星☆☆☆☆☆。