1978年 香港。
ジャッキー・チェン初期の傑作『スネーキーモンキー 蛇拳』を久しぶりに観た。
もちろん、石丸博也の吹き替えでだ。
スッゴク面白かった!
面白かったけど、昔、子供の頃に観ていた時は、妙な思いで観ていたのを、同時に思い出してしまった。
テレビで放送されてた、この『スネーキーモンキー 蛇拳』。
ジャッキー・チェンの踊りのようなカンフー・アクションに感心しながらも、同時に、
「《香港》って、まだ、こんなに《貧しい》のか …… 」
と、子供心に思ったものだった。(失礼!)
この映画の公開年、1978年ともなれば日本は充分に近代化されていた。
道路はちゃんと舗装されていて、たくさんの車が走り、ビルやスーパー・マーケットも並んでいた。(地方でも)
もちろん各家庭には家電製品も揃っていた。
戦後の不便な生活はどこへやら …… 10歳より前の、自分の幼少の記憶をさかのぼってみても、そんな《貧しさ》の欠片なんて、微塵も思い出せない。
そんな日常が当たり前だった小学生には『スネーキーモンキー 蛇拳』の世界は、殊更、
貧乏くさく見えていたのだった。(重ね重ね超失礼!)
一応、ちょっとした村には、石畳で石造りの家々があっても、内部はかなりお粗末。
くすんだ壁に囲まれた部屋。
そこには、いかにも手作りの木製棚があり、あんまり綺麗じゃない皿やら瓶なんてのが無造作に飾られている。(花さえ生けてない、この殺風景さよ)
お茶ひとつ飲む器にしても(えっ?コレで?)ってな感じに見えてしまい、何となく不衛生っぽい。
道場で、孤児として居候するジャッキーに与えられた部屋なんか、更にお粗末の極みである。
壁もボロボロで、そこら中に木切れなんかが転がっている。
そんな場所にゴザを敷いて寝ているジャッキー。
まるで「廃墟か!」って感じだ。(病気になりそうだ)
そんな場所には猫も蛇も出入り自由である。(ヤダ!こんな部屋!(笑))
こんな寂れた村でも、まだ美女やらイケメンが出てくればマシなのだが、美女どころか女は、近所の オバサン がチョコっと顔を出すくらい。
道場いる男の門下生たちは、 皆が ブサイク ぞろいだ。(変なところにデカいホクロがあったり、鼻が横に広がっていたり、山羊髭をはやしていたり …… よくこんな連中を大勢揃えたよ)
着ている洋服も、皆がオシャレとは程遠い、簡素な格好をしている。
そうして、トドメはこの人!
蛇拳使いで、ジャッキーの師匠になるこの人を初めて見た時はビックリした。
ユエン・シャオティエンは、なるほど、年齢を感じさせないくらい、とても素晴らしい身体能力を見せてくれる。(早い!強い!身軽!)
ソレはソレで素晴らしいのだが、そんなのを置いといても、やっぱり第一印象は、正直言って《コレ》だった。
「きたな●しい〜爺さん」(重ね重ね本当に失礼!でも小学生からは、こういう風に見えたんですもん)
伸ばし放題の髪の毛や髭。
髪の毛は、まるで シダ箒(ほうき)か?!ってな具合だ(笑)。(床屋すら無いのか?ココには!)
穴が空いていて、足指がのぞくようなボロ靴。
妙に不潔そうな赤鼻。
《貧乏》、《ホームレス》etc …… ここにも書けないようなワードの数々が、頭の隅を駆けめぐる。
とにかく、道場で虐げられながら育ってきたジャッキーが、師匠となるユエンと出会い、厳しい修行を得て強くなっていく過程は、やっぱり今観ても胸が熱くなるし、痛快だ。
最大の敵ウォン・チェンリーとの(本気)対決も圧巻である。(歯まで折れたジャッキー)
映画は大ヒットして、ジャッキー・チェンの名前はこの1作で一躍メジャーに躍り出る。(監督はユエン・ウーピン。ユエン・シャオティエンさんの息子さんでございました)
でも、小学生の頃の私は、こんなに面白いにも関わらず、一方では冷めた感想を持っていたものだった。
「貧乏な村で、貧乏そうな人たちが集まって、一生懸命闘っている …… 」←なんてヤツ(笑)
でも、これも今なら、ちゃんと分かっている。
単に小学生だった自分の、大きな勘違いなのだという事を。
実際の《香港》が、こんな《ド田舎》であるはずがないじゃないですかー!(笑)
要は、この『スネーキーモンキー 蛇拳』が、都市部から離れているような、簡素な場所での撮影だったってことだけなのだ。
しかも、後から調べたら、大昔の清朝時代(1900年代の初頭くらい)という時代設定もあったらしいのだ。(てっきり公開年の1978年だと思って観てたわ)
《当時の香港》=《貧しい》のイメージも、今じゃ、少しは払拭(ふっしょく)できたかもしれない。(でも無理ないか …… 綺麗なモノが何も出てこなくて、この面子じゃ〜、ねぇ~?)
尚、ジャッキー映画は、今だに役名を覚えられない情けない私。
だって、なんの映画でも、ジャッキーはジャッキーなんですもん。(明るいジャッキー、愉快なジャッキー)
その点だけは、どうぞ御容赦を。
なんだか最後まで『蛇拳(じゃけん)』を『邪険(じゃけん)』に扱うようなレビューでございました(笑)
上手くオチがついたところで、この辺で。
お後がよろしいようで。
星☆☆☆☆。