1977年 アメリカ。
出所まで、後1ヵ月。
『ボビー・オグデン』(ピーター・フォンダ)は刑務所で、ギター片手に作曲と歌う事に没頭していた。
刑務所長もボビーの才能にホトホト感心していて、最近じゃ応援してくれている。(どんだけ優しくて和やかな刑務所なんだろ)
そんな刑務所に、スター歌手の『デュプレ』(ジェームズ・キャラハン)がバンド仲間を引き連れて慰問公演にやって来た。(本当に刑務所なんだよね?ここ?!)
「これはチャンスだ!」とばかりに、優しい所長はボビーを連れてくると、デュプレにお願いして、「是非、このボビーの歌を聴いて頂けませんか?」と自ら掛け合った。
「……まぁ、聴くぐらいなら…」
ブスッとしたデュプレがお愛想で言うと、ボビーを特設ステージの舞台上にあげる所長。
そして、ボビーの歌が始まった。
自ら作詞作曲したカントリー・ソングを朗々と歌い上げるボビー。
舞台上の他の演奏者やコーラスたちも、そんなボビーの歌に聞き惚れて感心している。
そして、あのデュプレさえも……
デュプレの目が妙な輝きをみせた。
しばらくすると、ラジオからは身に覚えのある曲が流れ出す。
「これは俺の作った曲じゃないか?!」
ボビーの歌がラジオから流れてきたのだ……だが、そのメロディーにあわせて歌っているのは、慰問に来ていた、あのデュプレ本人なのである!!
デュプレは、堂々とボビーの曲を《盗作》したのだ。
(許せん!!……)
そして、やっと出所したボビーは、すぐさま、その足でデュプレのいるスタジオに乗り込んでいった。
警察所長と懇意にしていて、曲も大ヒットしているデュプレは、バンド仲間に囲まれて、ヘラヘラと終始ご満悦。
テレビカメラまで来ていて、もっか取材中である。
そんな場所へ、突然、乗り込んでいったボビーは、開口一番デュプレの前に行くと怒鳴り散らした。
「あれは俺の作った曲だ!!」
ボビーを目の前にしても、悪党デュプレは、ひるむ様子すらない。
「何の事だか知らんなぁ~……あれは俺の曲だよな?なぁ、みんな?!」
デュプレの取り巻きたちは全てデュプレの味方なのだ。
「そうだ!そうだ!!」
多勢に無勢……ボビーの状況は極めて不利だ。
「さっさと、そのドアから出ていきな!!」
だが、ボビーは自分の大切なギターを壁にソッと置くと、スタジオ内で大暴れしはじめた。
録音スタジオのガラスには椅子が投げられて、木っ端微塵。
「何すんだ?!このヤロウー!!」
ボビーとデュプレは掴みあいになり、それを取り巻きたちが引き剥がそうとしている。
揉み合いになっていると、床下に誰かの銃が「ボトンッ!」と落ちた。
咄嗟に拾いあげたボビー、その銃は暴発すると弾丸が発射され、デュプレの右足を撃ち抜いた。
「ギャアアアーッ!!!」
デュプレの絶叫に、たまたま近くにいた警察たちも駆けつけてくる。
ボビーは自分のギターを手に取ると、人混みの中を、一目散に走って逃げた。
出所したばかりで、すぐさま逃亡者となってしまったボビー。
そんな不遇な立場のボビーだったが、そんなボビーを神様は見捨てなかった。
あの慰問に来ていたコーラスグループの一人、『ティナ』(スーザン・セント・ジェームズ)はデュプレの盗作を良しとせず、ボビーの生歌を売り込もうと、アチコチのラジオ局やレコード会社に根回ししはじめたのだ。
やがてボビー・オグデン本人のレコードが発売されると、たちまちにヒット・チャートで上昇しはじめ、逃亡中のボビーは巷では有名人、時の人になってしまう。
そんな逃亡中のボビーは、あろうことか、湖の側に建つティナのコテージに偶然、逃げ込んできたのだった。
運命はティナとボビーを引き合わせると、二人はたちまちに………。
久しぶりのピーター・フォンダである。
ピーター・フォンダが映画に出ると、画面からは、たちまち溢れでるB級感。
それでも、たま~に
「そろそろピーター・フォンダの映画が観たいなぁ~」
と思わせてしまうのは、やっぱり、そんなピーター・フォンダが、自分は好きなのかもしれない。
なんせ、どれもこれもお気楽に観れるしね。
疲労回復には、ピーター・フォンダの映画は、もってこいなのだ。(こういう需要っていうか、効果がある事を最近やっと知った次第である)
特に、この物語は現実じゃ絶対に有り得ないくらいの《夢物語》だ。
逃げ込んだティナのコテージで、ボビーが何を言い出すのかと思えば、いきなり《ナニ》の提案をしてくることに、ひたすら(ビックリ)驚く‼
「刑務所に6年間いて、女性に飢えてるんだ……君なら下手くそな俺でもリードしてくれるんじゃないかと……」(初対面の女性に、いきなりのこんな提案。普通なら、「ハァ?馬鹿じゃないの?!さっさと出ていって!!」になるに決まってる)
だが、ティナはそうならずに、こんな紛れ込んできたボビーに同情して、優しく受け入れてくれるのだ。(ありえない!)
こんな同情が、一変して愛情に変わると、二人は毎晩毎晩「好き!好き!」状態。
オマケに逃亡中にも関わらず、こんなボビーを売り出そうと、ティナは奮起しはじめる。
「絶対に今にヒットチャートで1位になるわよ!!」
レコード店に二人で出掛けていくと、ボビーのレコードが馬鹿売れしている。
「あの~ボビー・オグデンさんですよね?サインしてください!大フアンなんです」
たちまちにティーン・エイジャーの行列に取り囲まれて、ボビーはサイン攻め。
警察の包囲網をかいくぐりながら、二人は、こんな風にアチコチに出現しては話題をふりまきはじめる。
オマケに、曲の売り上げ金を寄付なんてするものだから、メディアは、すっかりボビー・オグデンの味方になってしまった。
警察はいつまでも逮捕出来ないボビーにイライラ。
病室では、脚を吊っているデュプレがボビーのニュースを観ながら、ひとり苦虫を潰したような顔をしている。
「あのヤロウ~、調子にノリやがってぇ~………」
多額の賞金をかけてボビーを追いつめようとするデュプレ。
さぁ、ボビーとティナ、二人の愛の逃亡はどうなるのか……?
ここまで、全ての夢が叶う夢物語みたいな話もお目にかかったことない。
刑務所から出所したばかりの犯罪者が、恋人と名声の両方を、いとも簡単に手に入れる話なんて…。(日本じゃ、どこに行っても白い目で見られるに決まってる)
しかも最後はハッピー・エンド。(盛大に結婚式まで挙げてしまう二人)
監督のリチャード・T・ヘイトンは、前年の『未来世界』でもピーター・フォンダとタッグを組んでいて、この映画でも連続の再タッグ。(気が合ったのか?)
それでも夢物語と割りきってみれば、これはこれで中々面白いし、楽しいかもね。(オカシイ~、ピーター・フォンダの映画で褒めたくなるなんて。だいぶ疲れているのかな? (笑) )
オススメしておく。(ピーター・フォンダの貴重な歌声も含めてね)
星☆☆☆☆。