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2021年4月10日土曜日

映画 「アウトローブルース」

1977年 アメリカ。




出所まで、後1ヵ月。


『ボビー・オグデン』(ピーター・フォンダ)は刑務所で、ギター片手に作曲と歌う事に没頭していた。


刑務所長もボビーの才能にホトホト感心していて、最近じゃ応援してくれている。(どんだけ優しくて和やかな刑務所なんだろ)



そんな刑務所に、スター歌手の『デュプレ』(ジェームズ・キャラハン)がバンド仲間を引き連れて慰問公演にやって来た。(本当に刑務所なんだよね?ここ?!)


「これはチャンスだ!」とばかりに、優しい所長はボビーを連れてくると、デュプレにお願いして、「是非、このボビーの歌を聴いて頂けませんか?」と自ら掛け合った。


「……まぁ、聴くぐらいなら…」


ブスッとしたデュプレがお愛想で言うと、ボビーを特設ステージの舞台上にあげる所長。



そして、ボビーの歌が始まった。

自ら作詞作曲したカントリー・ソングを朗々と歌い上げるボビー。


舞台上の他の演奏者やコーラスたちも、そんなボビーの歌に聞き惚れて感心している。


そして、あのデュプレさえも……


デュプレの目が妙な輝きをみせた。



しばらくすると、ラジオからは身に覚えのある曲が流れ出す。


「これは俺の作った曲じゃないか?!」


ボビーの歌がラジオから流れてきたのだ……だが、そのメロディーにあわせて歌っているのは、慰問に来ていた、あのデュプレ本人なのである!!


デュプレは、堂々とボビーの曲を《盗作》したのだ。


(許せん!!……)



そして、やっと出所したボビーは、すぐさま、その足でデュプレのいるスタジオに乗り込んでいった。


警察所長と懇意にしていて、曲も大ヒットしているデュプレは、バンド仲間に囲まれて、ヘラヘラと終始ご満悦。

テレビカメラまで来ていて、もっか取材中である。


そんな場所へ、突然、乗り込んでいったボビーは、開口一番デュプレの前に行くと怒鳴り散らした。


「あれは俺の作った曲だ!!」


ボビーを目の前にしても、悪党デュプレは、ひるむ様子すらない。

「何の事だか知らんなぁ~……あれは俺の曲だよな?なぁ、みんな?!」


デュプレの取り巻きたちは全てデュプレの味方なのだ。


「そうだ!そうだ!!」

多勢に無勢……ボビーの状況は極めて不利だ。


「さっさと、そのドアから出ていきな!!」


だが、ボビーは自分の大切なギターを壁にソッと置くと、スタジオ内で大暴れしはじめた。

録音スタジオのガラスには椅子が投げられて、木っ端微塵。


「何すんだ?!このヤロウー!!」


ボビーとデュプレは掴みあいになり、それを取り巻きたちが引き剥がそうとしている。


揉み合いになっていると、床下に誰かの銃が「ボトンッ!」と落ちた。


咄嗟に拾いあげたボビー、その銃は暴発すると弾丸が発射され、デュプレの右足を撃ち抜いた。


「ギャアアアーッ!!!」

デュプレの絶叫に、たまたま近くにいた警察たちも駆けつけてくる。


ボビーは自分のギターを手に取ると、人混みの中を、一目散に走って逃げた。



出所したばかりで、すぐさま逃亡者となってしまったボビー。


そんな不遇な立場のボビーだったが、そんなボビーを神様は見捨てなかった。



あの慰問に来ていたコーラスグループの一人、『ティナ』(スーザン・セント・ジェームズ)はデュプレの盗作を良しとせず、ボビーの生歌を売り込もうと、アチコチのラジオ局やレコード会社に根回ししはじめたのだ。


やがてボビー・オグデン本人のレコードが発売されると、たちまちにヒット・チャートで上昇しはじめ、逃亡中のボビーは巷では有名人、時の人になってしまう。



そんな逃亡中のボビーは、あろうことか、湖の側に建つティナのコテージに偶然、逃げ込んできたのだった。


運命はティナとボビーを引き合わせると、二人はたちまちに………。



久しぶりのピーター・フォンダである。


ピーター・フォンダが映画に出ると、画面からは、たちまち溢れでるB級感。


それでも、たま~に

「そろそろピーター・フォンダの映画が観たいなぁ~」

と思わせてしまうのは、やっぱり、そんなピーター・フォンダが、自分は好きなのかもしれない。


なんせ、どれもこれもお気楽に観れるしね。


疲労回復には、ピーター・フォンダの映画は、もってこいなのだ。(こういう需要っていうか、効果がある事を最近やっと知った次第である)


特に、この物語は現実じゃ絶対に有り得ないくらいの《夢物語》だ。



逃げ込んだティナのコテージで、ボビーが何を言い出すのかと思えば、いきなり《ナニ》の提案をしてくることに、ひたすら(ビックリ)驚く‼


「刑務所に6年間いて、女性に飢えてるんだ……君なら下手くそな俺でもリードしてくれるんじゃないかと……」(初対面の女性に、いきなりのこんな提案。普通なら、「ハァ?馬鹿じゃないの?!さっさと出ていって!!」になるに決まってる)


だが、ティナはそうならずに、こんな紛れ込んできたボビーに同情して、優しく受け入れてくれるのだ。(ありえない!)



こんな同情が、一変して愛情に変わると、二人は毎晩毎晩「好き!好き!」状態。



オマケに逃亡中にも関わらず、こんなボビーを売り出そうと、ティナは奮起しはじめる。


「絶対に今にヒットチャートで1位になるわよ!!」


レコード店に二人で出掛けていくと、ボビーのレコードが馬鹿売れしている。


「あの~ボビー・オグデンさんですよね?サインしてください!大フアンなんです」

たちまちにティーン・エイジャーの行列に取り囲まれて、ボビーはサイン攻め。


警察の包囲網をかいくぐりながら、二人は、こんな風にアチコチに出現しては話題をふりまきはじめる。



オマケに、曲の売り上げ金を寄付なんてするものだから、メディアは、すっかりボビー・オグデンの味方になってしまった。


警察はいつまでも逮捕出来ないボビーにイライラ。

病室では、脚を吊っているデュプレがボビーのニュースを観ながら、ひとり苦虫を潰したような顔をしている。


「あのヤロウ~、調子にノリやがってぇ~………」



多額の賞金をかけてボビーを追いつめようとするデュプレ。

さぁ、ボビーとティナ、二人の愛の逃亡はどうなるのか……?





ここまで、全ての夢が叶う夢物語みたいな話もお目にかかったことない。


刑務所から出所したばかりの犯罪者が、恋人と名声の両方を、いとも簡単に手に入れる話なんて…。(日本じゃ、どこに行っても白い目で見られるに決まってる)


しかも最後はハッピー・エンド。(盛大に結婚式まで挙げてしまう二人)



監督のリチャード・T・ヘイトンは、前年の『未来世界』でもピーター・フォンダとタッグを組んでいて、この映画でも連続の再タッグ。(気が合ったのか?)


それでも夢物語と割りきってみれば、これはこれで中々面白いし、楽しいかもね。(オカシイ~、ピーター・フォンダの映画で褒めたくなるなんて。だいぶ疲れているのかな? (笑) )



オススメしておく。(ピーター・フォンダの貴重な歌声も含めてね)

星☆☆☆☆。