1986年 アメリカ(NHKでは1990年)。
『生きていた男』を観る前から、ずっと、頭に浮かんでいたのが、この『消えた花嫁』。
アメリカではテレビ映画扱いなんだけど、このblogでは取りあえずドラマ扱いとしておく。(アメリカのテレビ映画って日本では二時間ドラマみたいなモノだから)
でも、この『消えた花嫁』を覚えている人も、今じゃ、どれくらいいることやら……。
なんせ、1990年、大晦日近くにNHKでたった1回だけ放送されたっきり。
あの頃、ビデオ普及の時代に、特にそれを観たかったわけでもないのに、その時間に、たまたまタイマー録画をしていた自分は超ラッキーだった。(多分、年末の長時間バラエティー番組に飽き飽きしていたのだろう)
そう、《ラッキー》だったのだ!
この『消えた花嫁』、前回挙げた『生きていた男』の、何段も上をいくような衝撃!
《どんでん返しモノ》の大傑作なのである。
アルプスのスキー・リゾートに新婚旅行でやってきた夫婦は、ある夜喧嘩になり、妻のクリスが飛び出していった。
夫の『ハリー』(マイク・ファレル)は、そんな事情を説明して地元の警察に届けを出す。
「いなくなってたった一晩でしょ? ただの夫婦喧嘩ならすぐに戻ってきますよ」
『ルドマイヤー警部』(エリオット・グールド)は、あまり深刻そうでもなく、カル~イ様子。
「真剣に捜索してください!妻の身に何かあったかもしれないんだ!」
ハリーはルドマイヤー警部の応対にイライラしながらも、懸命に訴えた。
翌朝、ハリーのロッジにルドマイヤー警部が、早速やってきた。
「奥さんが見つかりました」
ルドマイヤー警部の後ろからは神父の『マクリン』(フレッド・グワイン)と女性(マーゴット・ギター)が続く。
「もし奥さんを愛しているなら寛大な心で許しておやりなさい」
マクリン神父は諭(さと)すように、目の前のハリーに語りかけた。
女性はハリーを見ると、「許してちょうだい!ハリー、私が悪かったわ」と目に涙までためている。
だが、肝心のハリーは……
「誰なんだ?君は?!」の一言。
「何を言ってるの?ハリー、妻のクリスよ!」
「知らない!!こんな女、今まで会ったこともない!!」
「ひどい、ひどいわハリー!」神父に支えられて泣き崩れる女性。
ルドマイヤー警部も加勢して、「彼女が奥さんのクリスさんでしょ?!」と言うものの、ハリーは後方に下がって首をふるばかり。
「違う!こんな女は妻なんかじゃない!!」
果して、彼女は本物のクリスなのか……。
こんな導入部ではじまる『消えた花嫁』である。
どうです?面白そうでしょ?(それにしても画像を探してもないですわ)
主人公ハリーにしたら、目の前に突然現れた見知らぬ女が、妻だと名乗りでて、猜疑心で、何がなにやら、訳の分からない状態。
(誰なんだ?こんな芝居じみた事をして……いったい何が目的なんだ?……)ってな具合なのだ。
しかも、ルドマイヤー警部も神父も、完全に、この『見知らぬ女』(マーゴット・ギター)を信用していて味方になっているのだから、手に負えない。
孤立無援のハリーなのである。
こんな疑念だらけの中でドラマは進んでいき、やがてラスト、驚愕の《どんでん返し》がやってくる。
この《どんでん返し》を上手く表現するのなら、まるで万華鏡のような《どんでん返し》。
それまでの登場人物たちのイメージ、全てが反転するような、そんな見事な《どんでん返し》なのである。(もう、誉めちぎり!)
このドラマを当時、制作したのが『刑事コロンボ』や『ジェシカおばさんの事件簿』などを作っていたのと同じチーム。(なるほど!ミステリドラマの「なんたるか」を熟知しているチームである)
原作は、フランスの《ヒッチコック》と言われていた劇作家、ロベール・トマが書き下ろした『罠』という舞台劇である。
この『罠』も、日本では好評みたいで、何度も繰り返し、舞台上演されているらしい。
で、こんな有名な原作、この『消えた花嫁』以前にも、とっくに映画にもなってるいるかなぁ~と調べてみると、邦題で『罠』(1949)って映画を見つけた。
監督はロバート・ワイズ。(サウンド・オブ・ミュージックの監督さん)
内容はというと、「ボクシングがナンタラ、かんたら……」
全然、ロベール・トマの『罠』とは関係なさそうである。(くれぐれもタイトルが同じだからといって、お間違えのないように)
やっぱり、この『消えた花嫁』が、いまのところ舞台劇の原作に一番近いかも。
その後、かろうじてビデオが発売されたらしいが、やっぱり日本では、いまだにDVD化もBlu-ray化もされておりません。(またもや)
NHKの吹き替えでは、主人公ハリーの声をあてたのが、名声優富山敬さんだったと思う。
吹き替え付きで、DVD化されないかなぁ~。
『M★A★S★H』のエリオット・グールドや『スーパーマン』のマーゴット・ギターも出てるのに。
いつか、この傑作が発売されたら、是非、《どんでん返し》の妙技に酔って頂きたい。
微力ながら、ここに挙げておこうと思う。(メーカー様、よろしく!)
星☆☆☆☆☆。