2019年10月18日金曜日

映画 「SOS北極…赤いテント」

1969年 ソビエト(ロシア)・イタリア合作。



『ピーター・フィンチ』は不遇の俳優である。






いきなり現れたこの名前に「誰?それ?」と思う人もいるかもしれない。





多分、現代では、その名を知る人さえも多くはないはずだ。


かくいう自分も名前だけは、頭の片隅にあっても出演作品といえば、遠い大昔に、オードリー・ヘプバーン主演の『尼僧物語』で見かけたくらいの記憶しかない。



この映画を、今回観るまでは、とんと忘れていたくらいだ。


日本では、その存在さえも無視されている気がする。



あの名優ローレンス・オリヴィエに、その演技力の才能を見いだされるも、ずっと芽が出ずに、果てはローレンスの妻のヴィヴィアン・リーと(一時の気の迷いなのか?)火遊びで不倫関係。(あらら……)


そういえば、どことなく顔立ちは、若い頃のローレンス・オリヴィエに似てなくもない。


整ったイギリス人でハンサムな顔立ちをしている。(ゆえにヴィヴィアン・リーもよろめいたのか?)


英国アカデミー賞では、何度も主演男優賞をとっているのに、その作品は興行的には、成功したとはいえず主演した『失われた地平線』は大赤字、大惨敗。


それでも後年、1976年の『ネットワーク』での熱演が認められて、やっと、アメリカのアカデミー賞にノミネートされるも、呆気なく亡くなってしまう。



ピーター・フィンチの死後に、アカデミー賞主演男優賞を贈られたらしいが、………それでも、死後の受賞とは、このうえなくツイてない人生。





そんなピーター・フィンチが出ている『SOS北極…赤いテント』を観た。





幻の作品と呼ばれていて、近年DVD化されたのだが、DVDではタイトルが『SOS北極 レッド・テント』に変えられている。



オマケに、公開された当時は国際版の120分ぐらいのもので、音楽も、あのエンニオ・モリコーネ(『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽を手がけた)だったのだが、DVDは、ロシア版の150分で左右がちょんぎられている4:3のスタンダード・サイズ。


音楽までもロシア用に変えられている。(国際版も観てみたいものだが……)




で、DVDパッケージを見れば、


レ・レ・レ……??


主演がショーン・コネリーになっていますぞ!?


その下に、美人女優クラウディア・カルディナーレ。


そして、3番手にやっとピーター・フィンチの名前が挙がっている。



でも映画を観れば、主演はピーター・フィンチ演じるノビレ将軍なのは、明らかなのに………。(ショーン・コネリーなんて映画が始まって1時間くらいしないと出てこないのにねぇ~)



まぁ、しょうがないか………。



1969年といえば、ショーン・コネリーの絶頂期。


1967年の『007は2度死ぬ』と1971年の『007 ダイヤモンドは永遠に』に、ちょうど挟まれている、この映画も、名前もあまり知られていないピーター・フィンチよりは、メジャーなショーン・コネリーを前に打ち出した方が、観客も呼び込めるというものだ。



そんな興行会社の思惑が、ありありと分かるようなパッケージである。



で、前置きをグダグダ書いていたが、映画は実話を下敷きにしていて、それなりに良くできてる。(でも、DVDのユラユラ揺れるような映りには、イライラさせられるが。これどうにかならなかったのか?)







1926年、最初の飛行船による横断を成功させた『ノビレ』(ピーター・フィンチ)。


そして、次なる2号目『イタリア号』と名付けられた飛行船が、将軍となったノビレと16名の乗組員を乗せて、北極点を向けて出発する。


が、案の定、飛行船は遭難し、何人かの乗組員たちは亡くなり、生き残った数名が目印になる『赤いテント』を張って救助を待つ、っていうのが大体のあらすじ。(助けに船で救助に向かうのが、『アムンゼン』(ショーン・コネリー)なのだが、ミイラ取りがミイラになってしまい、あんまり活躍しない。だからショーン・コネリー目当ての人はガックリするかも)




映画の導入部が凝っていて、いきなり、その事件から40年後の世界。




無事に生還できたノビレが、年老いた姿で、自宅のベットに横たわっている。



「裁判……裁判」と、何やら、寝床に入っていても、ノビレの耳にだけ不安をかきたてるような声が、どこからか聴こえてきて、なかなか寝付けない。



仕方なくベットから這い起きて、バルコニーが見えるリビングにやって来ると、そこには昔、あの事件で亡くなった人物たちが、その当時の姿のままで突然現れた。(幽霊?)



そして、クラウディア・カルディナーレの姿も。(とっくに死んでるの?)



そんな幽霊に怯える事なく、ピーター・フィンチ扮するノビレは、着替えをするために奥の部屋にさっさと引っ込んでいった。



そうして、奥から戻ってくると……。



な、なんと!



ノビレ自身も、当時の姿のように若返り、軍服に身を包んで現れたのであった!(ビックリ!)


こうして、時は、一気にさかのぼって、1928年の世界になるのだが……、このあたりの導入部にスル~と入っていく様子に感心しきり。



こうして映画は、リビングで死者たちに囲まれた、ノビレの証言を元に、裁判でもするかのように、当時の状況をはさみながら、進んでいくのである。




面白かった!


でも、このカメラの揺れる画質の悪さとスタンダード・サイズは何とかならなかったものか。


話は傑作なのに、視聴するにはかなりの忍耐が必要かも。



シネスコ・サイズで画質の良いBlu-rayを期待しつつ、星☆☆☆☆である。

ピーター・フィンチは、なかなかの名優ですよ。